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林業試験場

トドマツノキクイムシ

トドマツノキクイムシ

写真1 被害木樹皮に開いた脱出孔。豊頃、トドマツ。2004/6/16。

写真2 穿孔跡。豊頃、トドマツ。2005/5/19。

被害の特徴
樹 種 モミ属(トドマツ・モミ)など。
部 位 衰弱木や新鮮な倒木の幹や枝の樹皮下。
時 期 通年。
状 態 木が枯れる。 幹や枝の樹皮に穴が開く。穴は円形、直径約2mm。 穴から粉状の木くずややにがでる。
樹皮下に甲虫・幼虫・蛹がいる。また、幅2mm長さ最大30mmのトンネル(母孔)が水平方向に延び、母孔の左右から先端に向かい太くなるトンネル(幼虫孔)が多数ある。幼虫孔は木くずが詰まる。
幼虫 体長最大3.5mm。白色、頭部は黄褐色。脚がない。
成 虫 体長約3mm。長楕円形、黒色で光沢が少ない。

和名  トドマツノキクイムシ(文献1994など)
別名 トドマツキクイ(文献1943)

学名 命名者  Polygraphus proximus Blandford
(文献1943、1994など)

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、キクイムシ科Scolytidae


形態  幼虫・成虫・孔道は上述のとおり(文献1994)。

寄主  トドマツ・モミ・チョウセンハリモミ(文献1943、1994)、トウシラベ・エゾマツ・アカマツ・チョウセンカラマツ(文献1943)、オオシラビソ(アオモリトドマツ)・チョウセンゴヨウ・シキミ(文献1994)。

生態  たいてい年2世代;成虫越冬(文献1943)。越冬成虫は5月下旬に出現し、次世代の成虫は7月下旬から8月上旬に出現;第2世代の成虫は羽化後、樹皮下を食べ、羽化した木で越冬するが、一部は9月下旬から10月中旬に外に出て、トドマツの幹や枝の樹皮に浅く穿入して越冬する(文献1994)。越冬成虫は早い時は3月下旬から飛翔する(文献1943)。
 幹・枝選ばす寄生し、樹皮下を辺材部に沿って穿孔する;交尾室から左右に2匹の雌が坑道を掘るのが普通である(文献1943)。

分布  北海道・本州・四国・九州、サハリン、シベリア、朝鮮半島(文献1994)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害  道内ではトドマツ以外の被害は記録がないようである。二次的な害虫で、衰弱木や新鮮な倒木に寄生し、枯死を早める(文献1943、1954、1959、1994、2008)。おもに中・大径木を加害する;風害・伐採跡地などでの被害が大きい(文献1959、1972、1994)。被害木は樹脂流出跡が見られることが多い(文献1972)。

防除  繁殖源となる風害木・被圧木など衰弱木は早期に伐倒し、剥皮するか林外に搬出する;風倒被害や伐採で林が疎開すると、残存木は水分欠乏などが原因で一時的に衰弱をきたすので、伐採時には残存木を孤立化しないなどの配慮をする(文献1994)。
 


文 献
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない)
[1954] 井上元則, 1954. 北海道の原生林におけるキクイムシの寄生と針葉樹の辺材水分との関係. 林業試験場研究報告, 69: 167-180.
[1959] 井上元則, 1959. とどまつ, 昆虫篇. 70pp. 北方林業会, 札幌.
[1972] 山口博昭・小泉力, 1972. <講座>森林害虫の被害診断とその対策(13). IV害虫の手引き(10). 北方林業, 24: 288-291.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (生態、被害、カラー写真)
[1994] 小泉力, 1994. トドマツノキクイムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 178-179. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除)
[2008] 原 秀穂・三好秀樹・徳田佐和子, 2008. 久保トドマツ人工林間伐試験地における台風被害後の林分衰退とトドマツノキクイムシの発生状況. 北海道林業試験場研究報告, 45: 21-27.

2011/3/31