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林業試験場

スジコガネ・オオスジコガネ

スジコガネ・オオスジコガネ

写真1 スジコガネ老齢幼虫、体長30mm。

写真2 スジコガネ老齢幼虫の腹部先端の腹面。

写真3 スジコガネ成虫、体長18mm、美唄市、2001/8/1。

写真4 トドマツ5年生、健全苗木(左)とコガネムシ幼虫による被害苗木(右)。

被害の特徴
樹 種 針葉樹・広葉樹、草本。
部 位 葉(成虫による被害)、根(幼虫による被害)。
時 期 7月~8月(成虫加害時期)、通年(幼虫加害時期、冬季を除く)。
状 態 葉が食べられる。食害部位に成虫がいる(写真3)。
苗木が枯れる。土中に幼虫がいる(写真1)。細根が少なくなり、根にかじられた跡がある(写真4)。
成 虫 スジコガネは体長14~19mm。体は丸みがあり、緑色に輝く;上翅は緑色、紫色、銅赤色、赤褐色など色彩は変異が大きく、縦筋は光沢があるが、縦筋間はくすんでいる。
オオスジコガネは体長15~20mm。スジコガネに似るが、上翅は縦筋間も光沢がある。
コガネムシ科成虫の触角はくの字状。
幼 虫 コガネムシ科の幼虫はC字型、全体一様に色が淡い;触角はくの字状に近い、大アゴは強大、胸脚はくの字状。
スジコガネは体長最大約30mm。乳白色、頭部は黄褐色(写真1)。 、頭部頭楯が広く無毛で、左右両端にのみ毛がある; 腹部先端腹面には内方に向く長い刺毛が、各列14~20本ある(写真3); 肛門裂は横線状。
オオスジコガネでは、頭部頭楯が広く無毛で、左右両端にのみ毛がある; 腹部先端腹面には内方に向く長い刺毛が、各列25本前後ある。

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、コガネムシ科Scarabaeidae


和名  スジコガネ

学名 命名者   Mimela testaceipes Motshulsky

形態  幼虫については上記のとおり(文献1943、1964)。卵は乳白色、長径2mm、短径1.5mm(文献1943)。

寄主  カラマツ、アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキ、サワラ、草本、ワラビなど;幼虫は土壌中の腐植も食べる(文献1943)。

生態  成虫は年1回発生。北海道では卵から成虫になるまで3年かかる(文献1937)。成虫の出現期は7~8月、最盛期は7月下旬;黄昏から夜間に活動し、照明に飛来する;驚くと落下する性質がある;雌成虫は交尾後、地中に潜入して産卵する;卵期は3週間程度;幼虫は土壌中の腐植質を食べて成長する;秋に土中深く潜入して越冬する;翌春、地表近くに移動し、腐植質や植物の根を食べて成長し、再び幼虫で越冬する;翌春に根を食害した後、地下3~5cmのところに部屋(土窩)を作り、蛹になる;蛹は約2週間で羽化する(文献1943)。

分布  北海道・本州・四国・九州、サハリン、シベリア東部、アムール、朝鮮半島、中国(文献1943)。


和名  オオスジコガネ

学名 命名者   Mimela costata Hope

形態  幼虫については上記のとおり(文献1964)。

寄主  モミ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキ;幼虫は土壌中の腐植も食べる(文献1943)。

生態  スジコガネとほぼ同様。

分布  北海道・本州・四国・九州(文献1943)


森林被害観察地域(2種を含む) (樹木害虫発生統計資料に基づく)


被害  スジコガネでは、成虫によりスギ、ヒノキなど常緑針葉樹では激しく食害されると枯死することがある;カラマツは全葉を食害されることがあり、枯死することはまれだが、生長が阻害される;幼虫による被害は林木ではそれほど激しくないが、農作物では甚大な被害が発生している;被害は有機質に富む深い砂質土壌や火山灰地に多い(文献1943)。
 オオスジコガネでは苗圃あるいは植栽地の7~12年生くらいのスギの若木で被害が多く、針葉や新梢の樹皮を食害し、枯死させる;カラマツも針葉を食害されることがあるが、これで枯死することはない;幼虫は細根や根の樹皮部を食害し、小さな苗木は枯死する(文献1943)。
 成虫は樹冠の上の方に集まって加害する習性があり、トドマツやマツ類では梢頭部だけ枯死する場合がある;林分としてみると周辺部の日の当らない部分での被害が目立つ;林が鬱閉するまでは3年ごとに成虫の出現がみられる(文献1985)。
 道内ではトドマツ、アカエゾマツ、カラマツ、マツ属(アカマツ・ヨーロッパアカマツ・キタゴヨウ・ストローブマツ・バンクスマツ)の林で被害が記録されている(樹木害虫発生統計資料を参照)。また、苗畑での被害も多い。


文献
[1937] 桑山覺, 1937. コガネムシ類概説. 北海道農事試験場彙報, 61, 病虫害雑誌, 26. (文献1943から引用)
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除の概要;なお、上記引用箇所の出典は確認していない)
[1964] 後閑暢夫, 1964. 森林害虫としてのコガネムシ類. 森林防疫ニュース, 13: 46-51.(幼虫の形態、分類)
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (生態、被害、カラー写真)
[1994] 倉永善太郎, 1994. スジコガネ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 375-376. 養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)

2011/6/29