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林業試験場

シンリョクナガタマムシ

シンリョクナガタマムシ

写真1 被害枝。置戸町、シラカンバ。1989/9。

写真2 被害枝。置戸町、シラカンバ。1989/9。

写真3 被害枝の縦断面。

写真4 幼虫、体長10mm。1988/7。

写真5 成虫、体長5mm。1989。

被害の特徴
樹 種 シラカンバ。
部 位 枝、細い幹。
時 期 通年(被害がみられる時期)。
状 態 幹がコブ状に膨らんだり、樹皮が螺旋状に盛り上がる。
樹皮下に木くずの詰まった潜り痕がある。白い幼虫がみられる。
幼 虫 体長最大約10mm。尾端に2本の黒いトゲがある(写真2)。

和名  シンリョクナガタマムシ(文献2013、2018)
別名 シラカバナガタマムシ(文献1988、1991、1992)。

学名 命名者・年  Agrilus viridis (Linnaeus, 1758)

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、タマムシ科Buprestidae


寄主  ヤナギ属、カバノキ属、ニレ属、コナラ属(文献2013)など。
 被害は国内では北海道のシラカンバ幼齢林で記録されているだけである。ヨーロッパではヨーロッパブナの害虫として知られている(文献1974)。

生態  成虫は6~9月に出現(文献2013)。シラカンバの幼木の幹では直径2~3cm付近を穿孔することが多い。幼虫は形成層やその近くの内樹皮や辺材を食べながら、幹を螺旋状に穿孔する。穿孔部位はこぶ状に膨らんだり、螺旋状に盛り上がる(文献1991)。

分布  北海道、本州北東部;韓国、中国北部、ロシア、ヨーロッパ(文献2013)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  まれながらシラカンバの造林直後に多発することがあり、穿孔部位から上の部分がしばしば枯れる;被害木の本数率はときに60~80%に達する;ただし、上部が枯死しても、その次の年に地際からの萌芽がみられる;被害による枯死率は調査されていない(文献1991)。
 防除方法は確立されていない。今後の調査を待たなければならないが、萌芽率がとても高ければ防除は不要と考えられる。


文献
[1974] Schonherr, F. J. (1974) Buprestidae, Prachtkafer. In Schwenke, W. (ed.) Die Forstschadlinge Europas, II, pp. 31?55. Verlag Paul Parley, Hamburg and Berlin.
[1988] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1988. 昭和62年度・北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 40: 218-224. (被害記録)
[1991] 原秀穂・北側善一, 1991. シラカバナガタマムシの被害と生態. 光珠内季報,85: 1-3.
[1992] 福山研二・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1992. 平成3年度に北海道に発生した森林昆虫. 北方林業, 44: 271-274. (被害記録)
[2013] 大桃定洋・福富広和, 2013. 日本産タマムシ大図鑑. 206pp. むし社, 東京.
[2018] 原秀穂, 2018. シラカンバを加害するAgrilus sp.通称シラカバナガタマムシの学名と和名. 北海道林業試験場研究報告, (55): 21-22.

2018/08/15