森林研究本部へ

林業試験場

マツキボシゾウムシ

マツキボシゾウムシ
被害の特徴
樹 種 マツ属(アカマツ、クロマツ、ストローブマツなど)。
部 位 幹・枝の樹皮下(内樹皮や辺材表面)。
時 期 一年中、主に春から夏(幼虫発生時期)。
状 態 木が枯れる。しばしば樹皮にヤニの流出がみられる。
樹皮下の辺材表面付近に坑道があり、幼虫や蛹がいる。坑道は徐々に太くなり、細かな木くずが詰まる。時に一カ所から複数の孔道が放射状に延びる。
蛹は細長い木屑に囲まれた卵形の部屋(蛹室)の中にいる。蛹室は長さ2cm程度。
加害後には樹皮に直径3~4mm程度の円形の穴が多数みられる。
幼 虫 体長最大約15mm。白色、頭部は褐色。脚はなく、体はやや丸まる。
備 考 トドマツやエゾマツにはよく似たトドキボシゾウムシが発生する。

和名  マツキボシゾウムシ(文献1994a・b)
別名 マツキボシゾウ(文献1943)、マツナガゾウムシ(文献1943)

学名 命名者   Pissodes nitidus Roelofs
(文献1943、1994a、b)

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、ゾウムシ科Curculionidae


形態  幼虫は上述のとおり(文献1943)。近似種との幼虫・成虫の区別点は文献1994aに記述がある。

寄主  マツ属のアカマツ・クロマツ・ストローブマツ・リギダマツ(文献1943)、ヨーロッパアカマツ(文献1994b)。ヒマラヤスギ(文献1994b)。幼虫は幹枝の樹皮下を食べる。

生態  成虫は4~5月頃から発生し、雌成虫は9月頃まで産卵を継続する;雌は樹皮に口で穴をあけ、この中に1~数個の卵を産む(文献1943)。卵は枝や樹幹上部の粗皮の薄い部分に産まれる(文献1994b)。孵化した幼虫は樹皮下の材部に沿って坑道を掘る;一カ所に多くの卵がうみつけられた場合は、複数の幼虫孔が放射状に延びる;成熟した幼虫は細長い木屑で繭状の部屋を作り、中で蛹になる;羽化すると蛹室の上部に円形の穴をあけて野外に脱出する;春に生まれた卵は3~4ヶ月で成虫となる;成虫は倒木・落枝の下や地被物の中で越冬する;産卵時期が遅い場合は、幼虫または蛹で越冬する;雌成虫は2~3年生存するものがある(文献1943)。新成虫は年内には交尾・産卵を行わず、日中は幼木や梢頭部に静止し、夜間活動して、これらの部分で樹液を吸収する(文献1994b)。

分布  北海道・本州・四国・九州、朝鮮半島(文献1943、1994b)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害  被害は老木だけでなく、苗畑や若い林で発生する(文献1943)。普通は生丸太や枯れた直後の木などに発生し、健全木にはほとんど寄生しない;極度の乾燥や葉食性害虫の食害などにより衰弱した木を加害し枯らすことがある(文献1994b)。苗畑の幼苗が被害を受けた例もある(文献1985)。

防除  樹勢を正常に保つことが最良の防除法である;他の害虫の防除、極度の乾燥防止などが樹勢を保つ上で重要である;新しく移植した庭園木などは根が活着するまで泥巻きや殺虫剤散布などの処置で産卵を防止する(文献1994b)。
 発生源となる枯死木・被圧木・過熟木・傷病木や被害木は速やかに処分する(文献1943、1994b)。

文 献
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない)
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (生態、被害、カラー写真)
[1994a] 森本桂, 1994. 日本産キボシゾウムシ属の検索表. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 159-160. 養賢堂, 東京. (形態、宿主)
[1994b] 森本桂, 1994. マツキボシゾウムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 160-161. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除)

2011/7/6