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林業試験場

写真1 幼虫の坑道。2001/4/11。

写真2 老齢幼虫。2000/10。

写真3 成虫。苫小牧、2009/6/9。

樹種針葉樹・広葉樹の湿り気味の樹皮付き丸太や伐根。
部位辺材部。
時期1年中(幼虫加害時期)
状態丸太や伐根に円形の穴が開き、粗い木屑が出る。直径は5~10mm。 材内に断面が円形の坑道があり、幼虫がいる。
幼虫体長最大約30mm。単独性。 乳白色、頭部は黄褐色。無脚。 腹部末端近くの背面に3対の細長く尖った突起がある。
被害の特徴

和名  オオゾウムシ 
(別名クリノオオゾウムシ)

学名 命名者・年  Sipalinus gigas Fabricius, 1775

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、オサゾウムシ科Rhynchophoridae


 

形態  成虫は体長15~25mmと大きい(文献1943)。幼虫は上述のとおり(文献1943)。

寄主  モミ、トドマツ、エゾマツ、アカマツ、スギ、ヒノキ、サワラ、ナラ、カシ、クリ、ニレ(文献1943)。

生態  年1回発生;越冬した成虫は、早いものは4~5月頃に現れ、主に衰弱木、伐倒木、伐根に産卵する(文献1943)。樹皮のない製材でも湿潤な状態であれば産卵する(文献2008a、2008b)。孵化した幼虫は材部に食い入り、辺材部に曲がりくねった坑道を掘る;坑道の入り口から木くずを排出する;幼虫のまま越冬し、翌年5~6月頃から材の表面近くで、木くずに囲まれた部屋の中で蛹になり、次いで羽化・脱出する;新成虫は越冬し、翌春に再び出現する(文献1943)。以上のように産卵から2年目に成虫になり、材内にいる期間は春の卵のときから翌年の夏までのほぼ1年間におよぶ。成虫はニレやブナ科の樹液に集まる(文献1943)、ビールにも集まる(文献1990)。

分布  北海道・本州・四国・九州・沖縄、朝鮮半島、中国(文献1943)。台湾、東南アジア。

 

被害  皮付き丸太を積んでおくと、内側にあるものが著しい被害を受けることがある(文献1943)。乾燥した材は被害がない(文献1943)。樹皮のない製材でも湿潤な状態であれば被害を受ける(文献2008a、2008b)。

防除  駆除方法として、被害木を3週間以上水中に浸漬する方法があるが(文献1943)、実行可能な場所は限られる。乾燥した場所への産卵を避ける傾向があることから、被害を回避するには材を乾燥が促進されるような環境で保管するか、人工乾燥する(文献2008b)。 ビールに誘引されることが報告されているが(文献1990)、駆除効果は試験されていない。なお、製品に被害材が混じらないよう検査を行うことも重要である。


 

文献 
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない) 
[1953] 井上元則, 1953. 林業害虫防除論, 中巻. 293 pp. 地球出版, 東京. 
[1990] 野平照雄・小川知, 1990. ベイトトラップに集ったゾウムシ類-松林での場合-. 第38回日本林学会中部支部論文集: 165-166. (ビールの誘引効果) 
[2008a] 岡田充弘・中村克典, 2008. オオゾウムシSipalinus gigas (Fabricius)のアカマツ製材面への加害. 日本森林学会誌, 90: 306-308. 
[2008b] 岡田充弘・中村克典, 2008. 「オオゾウムシ,74年目の真実」-オオゾウムシSipalinus gigas (Fabricius)のアカマツ製材面への加害-. 森林防疫, 58: 46-52. (上記論文の概要、被害回避方法)

2009/4/2