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林業試験場

ヤナギシリジロゾウムシ

ヤナギシリジロゾウムシ

写真1 被害木、外観。1968/9/20。

写真2 被害木、写真1の樹皮をはがしたところ。

被害の特徴
樹 種 ポプラ、ヤナギ。
部 位 低木・幼木の幹・枝。
時 期 春~夏(加害時期)。
状 態 直径5mmほどの穴が開き、木くずが出る。樹皮を剥がすと幼虫がいる。
材内の幼虫のトンネルの断面は円形、直径4~6㎜。
幼 虫 体長最大約15mm。体は白から黄色。頭部は茶色。脚はない。

和名  ヤナギシリジロゾウムシ

学名 命名者   Cryptorhynchus lapathi Linnaeus

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、ゾウムシ科Curculionidae


形態  幼虫は上記のとおり(文献1985・1994)。成虫・卵については文献1994に記述されている。

寄主  ポプラやヤナギ類の生立木に寄生する(文献1985・1994)。

生態  おおよそ年1世代であるが、発生経過が不規則で、越冬態も卵から成虫まであり決まっていない(文献1985)。山形県では成虫か卵で越冬する(文献1994)。
 成虫で越冬したものは5月下旬~6月頃に出現;雌は口吻で木に穴をあけ、樹皮下に産卵する;産卵は直径1~8cmの幹枝に行われる;1個ずつ産卵するのが普通である;幼虫は始め樹皮下を食べ、生長すると材に穿孔する;産卵部位から木くずを排出する;孔道の断面は円く、直径4~6mm、長さ6~15cm;7月頃に糸状の材片で俵形の部屋を作って蛹になる;羽化した成虫は樹皮に円い穴をあけて外に出る;成虫はポプラ・ヤナギの樹液を吸って成熟、葉を食べることもある;一部は9月に産卵する;10月に地被物や土中で越冬する(文献1985・1994)。

分布  北海道・本州・九州、全北区(ユーラシア・北米)。

被害  2~3年生の幼樹や枝に多く寄生する(文献1985)。被害により幼齢木は折れることが多く、太い木では枝や梢頭部の被害が大きい;ポプラ栽培上、本種も含め穿孔虫は最も恐ろしい害虫である(文献1994)。植栽木では防除は困難である(文献1994)。
 北海道では、1970年代以降、胆振地方でエゾノカワヤナギの挿し木苗木の被害記録があるにすぎない(文献1988および樹木害虫発生統計資料を参照)。ポプラ・ヤナギの造林がほとんど行われていないためと考えられる。


文献
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (生態、被害、カラー写真)
[1988] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1988. 昭和62年度・北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 40: 218-224.
[1994] 遠田暢男, 1994. ヤナギシリジロゾウムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 231-232. 養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)

2011/7/6