北海道の樹木の獣害
概 要
北海道に生息する哺乳類のなかでは,エゾヤチネズミとエゾシカの被害が多い.また,ユキウサギによる激しい被害が局所的に起きているので,ここではユキウサギもとり上げる.なお,エゾリスやエゾモモンガは生息数が少なく,実害としてはほとんど問題がないので,割愛する.
加害痕をもとに加害種を判定することができる.
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あてはまる被害を選んでください.
(1) 枝葉の被害
枝や頭梢部が切断される.被害は1~5年生の若い植栽木に多い. |
(2) 樹幹の被害
剥皮による被害が起こる.若い木が折られる. |
(3) 根部の被害
剥皮されるか,根が露出する.
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(1) 枝葉被害 枝や頭梢部が切断される.被害は1~5年生の若い植栽木に多い.

エゾヤチネズミ 切り口に切歯痕が見られる.

ユキウサギ カッタ-で切ったように平滑な切り口を残して切断される.

エゾシカ 枝の切り口は引きちぎったように木の繊維が残る.
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(2) 樹幹被害 剥皮による被害が起こる.若い木が折られる.


エゾヤチネズミ
被害位置は地際部分から最大積雪深までであり,ふつうは20~30cmの高さまでであることが多い.
木質部と樹皮には,多方向からいり乱れた細かい切歯痕(幅2mm以下)が残る(写真左).
ふつう,かじり落とされた外樹皮の細片が被害木の周りに落ちている(写真右).

ユキウサギ
食痕はシカに似るが,上顎と下顎の切歯でかみ切るように剥皮するため,木質部にのみでえぐったようなかじり跡がつく.
また小球を押しつぶしたような径1cmほどの糞が被害木の周りに落ちていることが多い.
ウサギは冬に食害するため,被害が起こるのは積雪面からウサギが体を伸ばした高さ80cmの位置までである.


エゾシカ
条状に斜めに平行して2~4本の切歯痕(幅3~6mmほど)が見られる(写真左).
シカには上顎の切歯がないため,剥皮された樹皮繊維が樹幹に残る.>
角こすりによって剥皮する場合,木質部はなめらかで,樹皮部に木の繊維が残ることが多い(写真右).
シカによる樹幹被害では地上高30~180cmまでの幹の中間部位がよく傷つけられる.細い木は折られてかじられることもある.また体毛が木質部や樹皮に付着していることが多い.
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(3) 根部被害 剥皮されるか,根が露出する.


エゾヤチネズミ
根をかじられ,土の穴に棒をさしたような格好で立っていることが多い.ナラ類の1年生造林地で特異的に発生する.
エゾシカ 土を掘りおこして根を露出させ,かじることがある.
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北海道立林業試験場・緑化樹センター
作成 : 北海道の樹木の獣害 doubutu/gaiju.htm
「文章」中田佳亮,北海道立林業試験場,2001/12/10.