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林業試験場

1977年有珠山噴火による降灰が森林に及ぼした影響その2

1977年有珠山噴火による降灰が森林に及ぼした影響(2)

-樹木の肥大成長と幹の形態-

林業試験場 寺澤和彦・梅木 清・八坂通泰

2000年3月31日、有珠山が23年ぶりに噴火しました。ここでは、前回の噴火時に当試験場で行った調査研究の概要を紹介します。
(北海道林業試験場研究報告 第37号、2000年3月、11ページから25ページ掲載記事)

要旨

1977年有珠山噴火にともなう降灰によって被害を受けたトドマツおよびカラマツの人工林5カ所と広葉樹二次林1カ所において、噴火前から噴火後21年目までの樹木の肥大成長経過を年輪解析によって明らかにするとともに、降灰の影響とみられる幹の異常形態を調査した。
噴火当年の幹の肥大成長は、トドマツとカラマツではそれより前の期間の成長と比べて差がみとめられなかったが、広葉樹二次林のミズナラ、オニグルミ、キハダではそれより前5年間の成長に比べて22~29%低下した。噴火翌年の1978年における肥大成長は、カラマツと広葉樹3種で著しく低下した。この年の年輪幅は、カラマツでは1977年以前の4~5年間の平均年輪幅の26~38%、広葉樹3種では22~48%であった。カラマツの肥大成長は噴火後3年間にわたって低いままで推移した後、1981年以降に回復する傾向を示した。広葉樹3種の回復過程には樹種による違いがみられ、ミズナラでは噴火3年後まで、オニグルミでは噴火8年後まで、キハダでは噴火2年後まで低い成長で推移した。トドマツでは、噴火翌年およびそれ以降の期間についても肥大成長の低下はみとめられなかった。
東関内A調査地のトドマツとカラマツおよび泉調査地におけるミズナラでは、噴火から数年以上経過してから、噴火以前に比べて肥大成長が良好になる時期がみとめられた。年輪幅指数で0.10~0.75の良好な成長を示す時期は8~14年間にわたり、噴火から15年以上経った1990年代の前半まで継続した。
火山噴出物の降下の影響とみられる幹の異常形態は、噴火当時に9年生であった月浦調査地のカラマツで最も顕著にみられ、全体の90%の個体では幹が約4mの高さで2~5本に分岐して多幹となっていた。噴火当時29年生であった大平調査地のカラマツでは、小さな胸高直径階に属する個体において梢端部に複梢がみられ、これらの個体ではそれ以上の高さでの樹高成長が著しく阻害されているのが観察された。噴火時に20年生および12年生であった東関内Aおよび東関内Bのトドマツ林では、噴火から22年を経過した現在、噴出物の降下による幹被害の痕跡はきわめて軽微であった。


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