法人本部

北海道の作物栽培のスタンダードを目指して!「クリーン農業」の技術開発

農業研究本部 十勝農業試験場 渡邊 祐志(わたなべ ゆうじ)

 

講師が話している写真 

「クリーン農業」を知っていますか? このセミナーでは、クリーン農業の概要とクリーン農業を支えるための技術開発について紹介します。
クリーン農業は、平成3年度に、北海道が全国に先駆けて提唱した環境保全型農業のことで、環境との調和に配慮しつつ、安全・安心で品質の高いクリーンな農産物の安定生産を進める農業です。その取り組みでは、まず始めに化学肥料・化学合成農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤)の適正使用を促進するとともに、それら使用量の慣行比3割減を目指したクリーン農業の技術開発に着手しました。その後、YES!clean表示制度の制定やクリーン農業技術のマニュアル化を進め、平成16年度からは有機農業の技術開発もスタートしました。近年は、化学肥料・化学合成農薬のさらなる(5割以上)削減技術開発に加え、クリーン農業技術の道内全域への普及、北海道スタンダード化を目指しています。
クリーン農業の基本技術は、①たい肥等の有機物の施用による土づくりの推進、②化学肥料使用量の低減、③化学合成農薬使用量の低減、④生態系の維持・向上や養分流亡に伴う地下水汚染の防止などによる自然環境の保全です。クリーン農業が拡がると、農業生産と環境保全の両立・共存が可能になります。
道立農試(平成22年度からは道総研農業試験場)は、これまでに300件以上のクリーン農業を推進するための技術開発を行ってきました。その中には、①病気や害虫に強いなどの新品種の開発、②有機物の利用法や緑肥の導入など土づくりを進める技術、③肥料の効率的施用法や土壌中の養分量に応じての減肥対応などの化学肥料低減技術、があります。なお、北海道が目指すクリーン農業技術は、化学肥料のみならず有機物にも施用量の上限を設定していますので、養分供給の面からは有機農業よりも難しい場合もあります。また、④天敵などの生物農薬の利用や病気・害虫の発生状況を指標とした殺虫・殺菌剤の施用技術、機械除草などの化学合成農薬低減技術、⑤農作物の品質向上技術、⑥家畜ふん尿の適正利用などの環境負荷抑制技術、などを開発し、さらには、⑦総合的な経済性の評価、も行っています。
クリーン農業に取り組む生産者は着実に増えてきていますが、クリーン農業が北海道農業のスタンダードになるにはまだまだ課題の多いところです。農業試験場はこれからも積極的にクリーン農業に取り組んでいきます。消費者の皆様には、北海道農業への応援をこれまで以上によろしくお願いします。