法人本部

道総研セミナー
森と肉の新しい関係
1.木から作る牛のエサの研究/2.きのこによる鹿肉軟化の研究

  道総研が日々取り組んでいる研究の中から、今回は「森と肉」テーマに、林業分野と畜産分野で協力して行っている研究をご紹介し、約80名の方々にご参加いただきました。

  • 日時 平成29年6月17日(土) 15:30~16:30
  • 場所 紀伊國屋書店札幌本店 1階 インナーガーデン(札幌市中央区北5条西5-7 sapporo55)
  • 主催 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
  • 協力 雪印種苗(株)、(株)エースクリーン、(株)郊楽苑
講師が話している写真

こんなお話をしました

道総研 林産試験場 利用部 微生物グループ 研究主任 檜山 亮

講師が話している写真2

1. 木から作る牛のエサの研究

○森林産業と畜産業の二つのニーズ

  北海道には国土面積の約15%にあたる約554万haの森林があり、その資源の蓄積は平成に入ってから着々と増加しており、適切な有効利用が求められています。一方、黒毛和牛の肥育段階では、デンプンやタンパク質に富んだ濃厚飼料が多く与えられていますが、これと共に胃の調子を整える繊維質(粗飼料)を与えることが重要で、その価格の安定化や国産化・地域産化等が求められています。

○蒸煮処理による木質飼料製造とその給餌試験向

  木材を200℃前後の高温高圧の水蒸気で加熱(蒸煮)すると、木材の一部成分(ヘミセルロース)の半分位が分解・可溶化し、オリゴ糖や酢酸等になり、牛が大変好む匂いと味になります。また、木材の主要成分であるセルロースが、牛が分解できる状態となります。牛が十分好む条件について調べ、牛に毎日0.5~1kgの木質蒸煮物を粗飼料として7か月間給餌する試験を行ったところ、体重増加量が多くなることや糞の状態が良くなること等がわかってきました。

○今後の研究

  企業と連携してシラカンバやヤナギを飼料化する研究を重点研究により行っており、実用化と普及拡大を図っていきます。原料の供給安定性が高く、森林産業への貢献度も高い道産針葉樹(カラマツ・トドマツ)の飼料化についても検討しています。

2. きのこによる鹿肉軟化の研究

○きのこ産業と鹿肉消費の二つのニーズ

  きのこは菌床栽培が主流となって年間を通じて安定的に生産されていますが、夏季に需要が減少して価格が低下する問題があります。そこで、夏季にも需要が減少しない利用方法の開発等が求められています。一方、エゾシカは農林業被害が深刻で年間10万頭以上捕獲されているものの食肉になるのは2割以下と推計され、その消費拡大のため食味向上技術が求められています。

○きのこと鹿肉

  近年、鹿肉の処理技術が普及し、臭みの少ない肉の流通が多くなり、食味はかなり改善されていますが、硬さが大きな問題として残されています。この解決策として注目したのが、一部のきのこに豊富に含まれることが知られているタンパク質分解酵素です。タンパク質分解酵素を含んだきのこのエキスに鹿肉を漬け込むことで、肉に含まれるタンパク質が分解され、軟らかくすることができます。道産の主要なきのこで鹿肉軟化試験を行ったところ、マイタケが最も軟化効果や食味に優れていました。マイタケのタンパク質分解酵素について、耐熱性や耐塩性等の酵素特性を調べて企業のメニュー開発に貢献しました。

3. おわりに

  林産試験場の業務は木材ときのこに関する研究ですが、「肉」をはじめとする様々な分野と連携を取って新たな挑戦をし、北海道の産業・暮らし・環境に貢献していきます。


講演資料

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案内チラシ

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