法人本部

第26回 住宅の歴史

北海道の住宅の歴史と発展

2012年6月20日
建築研究本部 北方建築総合研究所 長谷川 雅浩(はせがわ まさひろ)

こんなお話をしました

  北海道の住まいは開拓、発展の歴史とともに大きく変わってきました。北海道を開拓した屯田兵の家屋や、他の移住者の住宅は、「夏を旨とすべし」として造られてきた日本の住まいを元にしており、北海道の厳しい冬の寒さをしのぐのには役不足だったといえます。その状態が長く続きましたが、昭和28年に「北海道防寒住宅建設等促進法」が制定され、住宅が独自に発展する大きな転機を迎えました。

この法律では、防寒住宅の建設により北海道開発に寄与すること、火災の防止に努めることを目的に試験研究、普及事業が進められることになりました。私の所属する北方建築総合研究所の前身、北海道立寒地建築研究所はこのことを背景に設立されました。これにより道内に広く大量に存在する火山礫を利用したコンクリートブロックを主要構造に使ったブロック住宅が開発されたのです。以前の住宅に比べ気密性が高く暖かい、また防火性にすぐれた住宅として公営住宅や北海道住宅供給公社の建設により昭和30年代から50年代にかけて大量に供給されてきました。北海道住宅供給公社が中心になって建設したブロック造の三角屋根住宅は構造、外観だけでなく平面計画でもこれまでにないプランを提供しました。居間中心型プランと呼ばれる間取りです。台所・食堂に連続する広い居間を住宅の中心に配置したプランは、イスとテーブルでの生活を可能にし、生活様式が床座からイス座へと変わっていきました。その後、木造住宅でも暖かい住宅にするために断熱材(ロックウール、グラスウール)を使用し始め、長尺鉄板を屋根に使用した複雑な屋根形状の住宅が増えて行きました。このようにして北海道独自の形態、性能を持った住宅の発展が始まりました。

 

次の大きな転機は昭和53年に起こったオイルショックです。住宅の暖房熱源が石炭から石油にすっかり変わっていた時期でしたが、灯油代が20円/ℓから40円/ℓに高騰し、大量に燃料を消費して暖かさを確保することができなくなりました。そのためより少ない燃料で暖かい住宅を目指し断熱性能の高い省エネルギー住宅の開発、普及が進んだのです。さらに耐久性の向上、気密化や計画換気が取り入れられるなど性能の向上は著しいものがありました。

 

平成に入ってからは暮らし方にも目を向けた基準を定めた「北方型住宅」を産学官が協力して推進するようになりました。平成17年からは北方型住宅では性能基準に加え建設の過程なども一緒に記録する住宅履歴を保存する仕組みもでき、次世代に残せる資産となる住宅づくりを進めています。このような制度は国内では北海道が先進的に取り組んでいるもので、他の都府県に誇れるものとなっています。

 

質問にお答えします

 

質問

回答

会場からの質問

結露と断熱の関連(木造住宅、ブロック造、コンクリート造の別)について教えて欲しい。

結露は壁や床などの表面温度が室温よりも低いことによって起こります.断熱することによって壁や床などの表面温度が室温に近くなり結露は起こしにくくなります。これはどのような構造でも同じで、適切に断熱することによって結露は多くの場合は防ぐことができます。

内断熱、外断熱、内・外断熱など断熱方法の有効性について教えて欲しい。

断熱性能を確保するのはどの断熱方法でも有効であり可能です。建物の断熱性能は断熱材の厚さなど断熱の仕様によります。

断熱、遮熱と建築基準法との関係について教えて欲しい。

建築基準法には断熱の基準はありませんが、実際に家を建てる場合は日本住宅性能表示基準・省エネルギー対策等級4程度を目標とした方が良いでしょう。

高気密と高断熱のメリット、デメリットは?

高断熱、高気密のメリットは少ないエネルギーで室内の温度を保てるようになることです。また、同時に結露の防止にも役立ちます。デメリットは特にありません。

評価のつかないほどの中古住宅(木造モルタル)を購入し、原型をとどめないくらいリフォームをしています。住宅履歴の保存が気になっているが、資料がない。決まった工務店はある。こうした家屋の場合、作成してもらえるか。

また、この場合の耐震化の方法を教えて欲しい。

住宅の履歴はこれまでの記録の積み重ねですから、保存していない場合にはありません。現状の性能や状況を調べて資料を作成しておくということはできます。この場合、建築士、北海道住宅検査人(北海道建築技術協会にお問い合わせください)にお願いすると良いでしょう。

耐震化の方法は建物の構造や耐震性能によって変わってきます。建築士に依頼して耐震診断を行うことをお勧めします。

さらに詳しく知りたい方は・・・

  動画道総研公式チャンネル

  案内チラシ