法人本部

第19回 道産魚醤油の魅力

食卓革命! 道産魚醤油の魅力

2011年9月29日(木)
産業技術研究本部 食品加工研究センター 吉川 修司(よしかわ しゅうじ)

こんなお話をしました

   魚醤油は魚介類に塩を加えて発酵させるうま味が豊富な調味料で、アジア地域で盛んに作られています。しかし、従来の製法では魚臭さが強く、1年以上の長い熟成期間がかかり、麹を使って発酵を促すと色が濃くなるなどの課題がありました。一方、消費する側(主に業務用)では、醤油より色が薄く、うま味が豊富な魚醤油を求めており、現実の品質との間に大きな差がありました。よって、道産魚醤油の販路拡大には、特有のうま味は維持・強化しつつ、品質上の課題点(香り、うま味、色等)を改良した、新たな製造技術の開発が重要となると考えました。そこで、食品加工研究センター(以下、食加研)は発酵技術を駆使しながら試行錯誤を重ね、魚醤油の製造に耐塩性微生物スターター(スターターは種菌のこと;酵母2種類および乳酸菌1種類)を導入して、要求品質を全て満たす発酵魚醤油の製造技術を開発して特許を取得しました。

発酵魚醤油を評価するため、輸入魚醤油(ナンプラ)及び醤油と比較しました。発酵魚醤油にはナンプラにはないエタノールが含まれ、うま味の指標となる遊離アミノ酸量がナンプラの1.7倍あり、醤油に比べて多種のアミノ酸が含まれていました。また、麹を加えると色が濃くなるという課題を、酵母の作用で着色の原因となる還元糖を減らすことで、うま味を損なわずに解決しました。発酵魚醤油の香りには、醤油の特徴的な香りで酵母が作り出すことが知られている2-フェニルエタノール(バラの香り)、HEMF(カラメル香)および4-エチルグアヤコール(燻製香)が含まれており、官能評価でも魚臭さも改善されただけでなく、醤油のような芳香もプラスされた事を確認しました。さらに、加えた酵母が不快臭の原因となる野生酵母の生育を抑制することを証明しました。この技術はヤナギダコやウニを原料とした魚醤油づくりで実用化され、これらの魚醤油を使用した加工品も市販されています。

魚醤油はその名から大豆を原料とした醤油と混同されがちですが、両者は風味が全く異なる調味料で、隠し味に向いています。従来の魚醤油は加熱する調理向きですが、道産魚醤油はほとんどが加熱、非加熱両方の調理に向くのが特徴です。

道内では魚醤油の製造に取り組んでいる企業は40社を超え、魚醤油を利用した加工品も50品目を超えるまでになっています。今年度は、「北の魚醤油発信プロジェクト」というPR活動を展開中ですので、ぜひ道産魚醤油を使ってみてください。

質問にお答えします

質問 回答
会場からの質問

「ちょっとだけ入れる」となると、開封後、どの位で使い切るとよいのでしょうか?

食品全般についてですが、開封後は品質保証がないのでご留意ください。魚醤油は醤油と同様に食塩分が多い食品であり、腐るというよりも、空気による酸化で香りが悪くなることによる風味の劣化が主なので、もし香りが悪くなってきたと感じたら使用をやめることをおすすめします。

製作3ヶ月ということですが、もっと短時間ではできないのでしょうか?

製法によります。酵素を使った方法だと1ヶ月程度でできます。麹や微生物でつくる場合、うま味や香りなどを考えると2ヶ月程度でもありますが、醸造食品は熟成工程があった方が味がまろやかになります。新酒がフレッシュ感があるものの味が粗いのに対し、秋口までお酒を熟成させると味がまろやかになります。この味の変化は成分間の複雑な反応によるとされ未だ十分な解明はされていません。

さらに詳しく知りたい方は・・・

  動画道総研公式チャンネル

  案内チラシ

  

 

ご協力いただきました

ドトールコーヒーショップ北海道庁店