気候変動で北海道はどうする?
気候変動への対応には、緩和と適応があります。将来気候がどうなるかは、今後の温室効果ガスの削減、すなわち「緩和策」によって決まります。
一方、既に現れている影響や緩和策を講じても避けられない影響に対しては、「適応策」の充実も必要です。「緩和策」は世界共通で対応する必要があるのに対し、「適応策」は各地域の気候変化の特性や、その影響に対応できるような地域特性を備えているかによって異なり、地域ごとに考える必要があります。本研究では、これまで検討が進んでいない、積雪寒冷地である北海道の冬の「適応策」に着目しました。
適応と緩和
冬の変化に備える
今後の気候変動により、雪は北海道の多くの地域で減りますが、大雪はあまり減らず、重く湿った雪は増え、雪が融解・凍結を繰り返すことによる路面被害の増加も予測されます。一方、人口減少、少子高齢化、インフラの老朽化などの社会変化により、除雪や道路整備を取り巻く環境はさらに厳しくなると想定されます。こうした気候変動の影響と社会変化の両方に対応した適応策を考える必要があります。
個人で着手できる適応策の例
- a 大雪にそなえ、外出できなくても困らないよう防災用の水や食べ物を常備
- b つるつる路面で滑らないよう、靴や歩き方に気をつける
周囲や地域で協力して取り組む適応策の例
- c 重い雪や大雪にそなえ、周囲で除雪の手伝いが必要な人を把握し、協力して除雪
- d 除雪ボランティアなどを活用した地域の除雪の担い手の確保
皆の声を集め、行政施策や事業者の研究開発で進める適応策の例
行政施策
- e 長期的な雪の減少と大雪にそなえ、除雪計画の見直し、災害時の体制作りや機関の連携を進める
- f 除雪に不安があっても地域で暮らせる選択肢として冬季集住の環境を整備
商品やサービスの開発
- g 重い雪の除雪を楽に行える雪かき器具の開発
- h つるつる路面による事故防止に効果的な自動運転技術の導入
これらa~hの適応策について、実現のために必要なコストや労力と期待される効果の関係を、大まかなイメージとして図に示しました(実際には個別の事例によって異なります)。地域で予測される変化と、必要なコストや労力を考慮して、適応策を選択することが考えられます。
ワークショップによる適応策の検討
これまで紹介したような適応策を地域に導入するには、地域の事情や社会変化を踏まえた慎重な検討が必要となります。しかし、限られた立場の者だけでこれらを十分に検討することは困難です。様々な立場の参加者が多角的な視点を踏まえて一緒に考える場として、共同研究者である大場先生の研究チームが考案したワークショップが有効と考えました。
北海道の適応策を考えるためのワークショップの形を大場先生らと一緒に検討を重ね、2022年秋には、道内の一地域で自治体関係者などを集め、適応策を考えるワークショップを開催しました。
※ 北海道内でワークショップ開催に関心がある道・市町村・国などの行政機関への技術支援が可能です(お問合せ窓口:研究調整グループ eeg@hro.or.jp)。
ワークショップの流れ
- 地域の気候変動影響に関する科学的知見を共有(講義など)
- 地域で生じうる気候変動影響、社会変化などのアイデアを出し合う
- 適応策のアイデアを出し合う
本ページは、環境省・独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費2-2009「積雪寒冷地における気候変動の影響評価と適応に関する研究」の研究成果の一部を紹介しています。
制作:地方独立行政法人北海道立総合研究機構 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所(雪の推進費プロジェクトチーム)
- お問合せ :地方独立行政法人北海道立総合研究機構
- 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所
- 研究推進室 研究調整グループ
- TEL 011-747-3525 Email eeg@hro.or.jp