産業技術環境研究本部へ

エネルギー・環境・地質研究所

気候変動の影響予測と適応策の特集ページ

気候変動で北海道はどうなる?

北海道では、地形や海流、季節風などの影響により、地域ごとに異なる気候特性がみられます。気候変動は北海道各地域の気候をどのように変化させ、どのような影響を与えるのでしょうか? 北海道の産業や経済活動、生活との関連が深い除雪の必要性の変化および道路路面の変化について、気候モデルによる予測データに基づいて影響評価を行った結果をご紹介します。

● どうなる?

気候変動による道民の暮らしへの影響

北海道では、地形や海流、季節風などの影響により、地域ごとに異なる気候特性がみられます。気候変動は北海道各地域の気候をどのように変化させ、どのような影響を与えるのでしょうか? 北海道の産業や経済活動、生活との関連が深い除雪の必要性の変化および道路路面の変化について、気候モデルによる予測データに基づいて影響評価を行った結果をご紹介します。

※ 除雪日数については、道総研と日本気象協会北海道支社との共同成果です。
※ 予測に使用したデータの詳細については、このページの末尾の説明をご覧ください。

除雪はどうなる?

道路除雪・生活除雪の必要性の変化

除雪日数

道内では降雪10cmを道路除雪の目安をとしている自治体多いことから、日降雪量10cmの日数を指標として評価を行いました。

予測結果
  • 全ての年の除雪日数[a]は、全道的に減少する。ただし地域差があり、内陸部では減りにくい
  • 10年に1度の多雪年の除雪日数[b]の減り具合は鈍い。特に、内陸部ではあまり減少しない。
産業・経済活動、生活への影響
  • 平均的な雪の減少により、除雪作業員や熟練者が減少し、技術が失われることが考えられます。
  • 大雪は平均的な雪に比べ減らないため、大雪が降ると除雪が集中し、十分に対応できずに交通障害等が長期化することが考えられます。
  • (人口減少・少子高齢化などの社会変化に加えて)気候変動が除雪の問題を深刻化させる可能性があります。特に内陸部では、大雪の減少が少ない地域が多く、この傾向が顕著と考えられます。

除雪日数の変化による影響

a.全ての年の除雪日数の変化

除雪日数の変化による影響

b.10年に1度レベルの大雪年どうしで比べた除雪日数の変化

多雪年における除雪日数の変化による影響

除雪はどうなる?

道路除雪・生活除雪の必要性の変化

道路路面はどうなる?

舗装道路の穴(ポットホール)の発生やつるつる路面に注意が必要な日数の変化

凍結融解日数(ゼロクロッシング日数)

ゼロクロッシング日数は、1日の内に最低気温が氷点下かつ最高気温が0℃を上回る日数のことをいい、ポットホールと呼ばれる道路のくぼみのできやすさとの関連が知られています。また、このような日に雪が積もっていると、雪解けと凍結が繰り返され、つるつる路面ができやすくなります。

予測結果
  • 多くの地域でゼロクロッシング日数が増加する。
  • ゼロクロッシング日数は今までは初冬と冬の終わりにみられたが、気候変動が進行すると、多くの地域で真冬(12-2月)の出現が増加すると予測された。
産業・経済活動、生活への影響
  • 真冬(12-2月)のすべりやすい路面に伴う転倒・スリップ事故の増加や、ポットホールの増加に伴うタイヤのパンク・車の破損の増加が考えられます。

多雪年における除雪日数の変化による影響

凍結融解日数の変化(12-2月平均)

多雪年における除雪日数の変化による影響

さまざまな連鎖的な影響

雪の変化や気温の上昇による影響は、他にも様々な分野に及ぶと考えられます。市街地で想定される影響の連鎖の一例を図に示します。このような連鎖する影響を地域で想定することが、具体的な適応策の検討につながります。

多雪年における除雪日数の変化による影響

引用:環境研究総合推進費 終了研究成果報告書 積雪寒冷地における気候変動の影響評価と適応策に関する研究(2-2009)

予測に使用したデータ

気候シミュレーション

気象庁気象研究所が開発した気候モデルを利用し、文部科学省気候変動リスク情報創生プログラム及び統合的気候モデル高度化研究プログラムにおいて計算されたデータを元に作成し気象庁が提供する「地球温暖化予測情報第9巻データセット」を利用しました。このデータセットは、文部科学省の補助事業により開発・運用されているデータ統合解析システム (DIAS)の下で収集・提供されたものです。

気候シナリオ

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)で用いられたシナリオのうち、2℃上昇シナリオと4℃上昇シナリオを基に将来予測を行いました。

  • 2℃上昇シナリオ(RCP2.6):パリ協定の2℃目標が達成された世界であり得る気候の状態に相当する。
  • 4℃上昇シナリオ(RCP8.5):追加的な緩和策を取らなかった世界であり得る気候の状態に相当する。
  • 2℃目標:「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」という2015年COP21パリ協定で設定された世界共通の努力目標

用語について

ポットホール

凍結と融解の繰り返しにより生じたアスファルト舗装路の損傷。タイヤのパンクや車の損傷の原因となります。

ポットホール

 

本ページは、環境省・独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費2-2009「積雪寒冷地における気候変動の影響評価と適応に関する研究」の研究成果の一部を紹介しています。
制作:地方独立行政法人北海道立総合研究機構 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所(雪の推進費プロジェクトチーム)

 

  • お問合せ :地方独立行政法人北海道立総合研究機構
  • 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所
  • 研究推進室 研究調整グループ
  • TEL 011-747-3525 Email eeg@hro.or.jp