第21話 凍る湖と凍らない湖

凍る湖と凍らない湖(H26.12)

道総研環境科学研究センター五十嵐 聖貴

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北海道には面積が1ヘクタール以上の湖沼が100以上あり、そのほとんどが冬期に結氷します。結氷した湖沼は、氷下漁、ワカサギ釣り、観光イベントなどに利用されているほか、屈斜路湖の御神渡り(おみわたり)のように観光資源になっているところもあります。

一方、北海道には凍らない湖(不凍湖)もあります。海水の強く入る汽水湖(きすいこ)と温泉性の沼を除き、北海道で不凍湖として知られているのは支笏湖と洞爺湖のふたつです。これらのうち、北に位置する支笏湖が日本最北の不凍湖です。これらの湖が凍らない理由はその深さと容積にあります。

1年の大半の期間、湖の中は湖面と湖底で水温が異なります。夏は暖められた軽い水が湖面にあり、冷たく重い水が湖底にあります。秋になると湖面の水温が下がり始め、対流と風による混合によって徐々に深くまで冷たい水が沈降していきます。冷却による混合が湖底まで到達すると、湖全体が同じ水温(北海道の場合は4℃)となり、それから湖面付近の水温が0℃に向かって下がっていきます。外気温がいくら厳しい氷点下に冷え込んでも、湖全体が冷えないと湖面の結氷が始まらないため、深く容積の大きい湖ほど結氷に長い時間がかかるわけです。

支笏湖と洞爺湖以外の湖でも凍らないことがあります。摩周(ましゅう)湖と倶多楽(くったら)湖が、結氷するかしないかの境界線に近く、凍る年でも1月下旬から2月下旬になってようやく凍り始めます。2014年3月、倶多楽湖は凍りましたが摩周湖は凍りませんでした。経年的な状況を見ると、近年は凍らない年が目立つようになってきた印象があります。将来、北海道の不凍湖は4つで、摩周湖が日本最北の不凍湖となる日が来るかもしれません。

結氷すると湖はフタで覆われた状態になります。結氷しない場合は、風による混合によってより深いところまで水温が4℃未満に低下し、また、より深くまで太陽光が届くことになります。このような違いは湖内の生物の生育にも影響を与えることが予想されます。湖によって特性は異なるでしょうが、凍ったほうが湖の生物生産量(漁獲量やプランクトン量)が多くなるという報告がいくつかあります。摩周湖と倶多楽湖は凍るか凍らないかの違いが毎年よくわかりますが、他の湖では過去に比べて氷が薄くなったり、結氷期間が短くなったりなどの事例もあり、これを含めると北海道全域の湖沼で少しずつ生態系に変化が起きている可能性があるかもしれません。

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