第27回 からだにやさしい製品

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-あったらいいな。からだにやさしい製品の科学-

2012年7月18日
産業技術研究本部 工業試験場吉成 哲(よしなり さとし)

こんなお話をしました

  DSC_0316.JPGのサムネール画像  皆さんが生活するなかで、こんなものがあったらいいなと思うことはありませんか。両手で留めていたボタンを片手でも簡単に留め外し出来るようになったら夢のようだね! そんなささいな声から、ユニバーサル衣料に最適なマグネット式留め具「Gボタン・Gホック」の開発が始まりました。このように、全ての人が、年齢や障がいの有無等を意識することなく、いつでも快適な生活を送ることができるデザインをユニバーサルデザインといいます。このランチタイムセミナーでは、3つの事例について開発経緯や人間工学的アプローチを紹介します。

ロナルド・メイスが提唱したユニバーサルデザイン7原則のひとつに、「身体への負担がかかりづらいこと」があげられています。体の不自由な方や指先の力が弱くなった高齢者にとって更衣は大変な作業です。自分の好きな服を自分で着られることは、自立した生活を送るためには欠かせませんが、留め具の扱いにくさが課題となっていました。そこで、スナップボタンやファスナーなど各種留め具の比較検討を行い、ユーザー評価試験などを経て、マグネット式留め具を開発しました。衣服のデザインを損なわないワイシャツボタンのような外観、負担にならない軽さ、指先の力が弱い方でも強い磁力で服を留められ、はずす時は横方向にスライドすることでファスナー感覚で一気にはずせる、通常の樹脂ボタンやファスナーよりも速く留められる等の特徴を持つ「Gボタン」、横に引っ張っても外れないズボン向け留め具「Gホック」として製品化されています。

次に、住宅の設備として自立した食生活を支える上で重要なキッチンの開発事例です。まずユーザー調査を行い、鍋等の重いものの移動が負担、調理時間が長いと負担、調理台の高さが合わない等の問題点が抽出されました。立ち仕事の負担軽減のため、椅子に座って調理することへの要望も増えてきています。これらを踏まえ、高齢者や車椅子利用者を含む多様なユーザーに対応した「ユニバーサルキッチン」として、高さ調整機能を持つV字型ワークトップを採用しました。ワークトップ高さと負担の関係など人間工学手法による検証を行ったところ、わずか数㎝の違いでも調理姿勢や身体負担に大きな影響があることが分かりました。キッチン導入の際には、ご自身に適合しているかの確認が重要です。

続いて、除雪作業の負担を軽減する除雪具の開発事例です。雪かきは冬の日常生活を送る上で欠かせない重労働ですが、見方を変えると運動不足解消になっているかもしれません。実際に除雪中の運動強度を測定したところ、雪かきはテニスのダブルスや水泳と同等となりました。体力のある若い人は良いですが、高齢者は無理しすぎないよう注意が必要です。また、雪かきは前かがみになって雪をすくい上げますが、持ち上げる際の支点になるのは腰椎です。雪の重さは数Kgでも、スコップの柄が長いため腰椎にはその数倍の力がかかります。加えて上半身の重さも支えるわけですから、腰部にはとても大きな負荷がかかります。また、力むことは筋肉の長さを変えずに力を入れる運動となり、血圧や心拍数を上昇させます。無理のないペースで適切な休憩を取ることが重要です。除雪作業は、雪を持つ方向が左右どちらかに偏っていることから、片側の背筋等がより早く疲労しますので、スコップを持つ方向を時折変えることも効果的です。

体に負担の少ない作業を心がける以外に、道具の工夫で負担自体を減らすことはできないでしょうか。そこで、なるべく体の近くで雪をすくうことと、体の傾きを少なくすることの両立を目ざして下部をS字状に曲げた柄を持つスコップを開発しました。雪を持ち上げる際の動作を人間工学的指標により解析し、腰部負担の軽減を確認できました。この除雪具は「UDスコップ」として製品化されています。

からだにやさしい製品の科学として事例を紹介いたしましたが、体に負担のかからない姿勢などを意識され安全な生活を送られることを願うとともに、ユニバーサルデザインの概念が広く認知され、誰もが使いやすいものが当たり前になることが望まれます。

さらに詳しく知りたい方は・・・

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