第41回 樹木の香り・はちみつ

香る♪味わう♪五感で楽しむ森の恵み! ~樹木の香りと森のはちみつ~

 2014年5月16日
森林研究本部 林業試験場  脇田  陽一
   真坂  一彦

こんなお話をしました

樹木の香り(脇田  陽一)

  「現在、空前の香り商品ブームと言われており、中でも、草原や森林等の自然の香りが好まれる傾向にあります。これらの商品は、香りを“森林”や“Forest”などとひとくくりにしているものが多いですが、樹種ごとでその香りは全く違います。
  現在、樹種ごとに芳香成分を抽出 して何か役立つようなものができないかと、北海道の自生種を中心に香りに特徴のある約20種類について調査研究を進めています。
  その中で一番研究が進んでいるのがヤチヤナギで、その抽出成分にはリラックス効果、抗酸化性や美白効果があるということを明らかにするとともに、(株) レクシアと化粧品を共同開発しました。
  また、清々しい香りを活かしたチーズを共働学舎新得農場と共同開発しました。
  なお、この「ヤチヤナギチーズ(熟成タイプ)」は、「第20 回北海道加工食品コクール」で最高賞の北海道知事賞を、「優良ふるさと食品中央コンクール」では食品産業センター会長賞を受賞しました。その他の樹種の芳香成分についても、芳香剤や入浴剤、チーズやシフォンケーキ等のお菓子、焼酎等に活用されています。
  これから、いろいろな森林、樹木を見る際には、香りにも注目していただければ幸いです。

森のはちみつ(真坂  一彦)

  ハチミツは、1 万年以上前から天然甘味料として利用されてきました。日本でも大和時代に新羅から養蜂家を招いたという記述もあり、古くから利用されています。
  ミツバチはハチミツを生産するだけではありません。たとえば、北海道では、メロン、スイカ、イチゴ、タマネギ、甘露、そば、カボチャ、なし等の多くの作物の花粉交配の手助けもしています。
  しかし、ずっと作物の花粉交配を続けていると、群れが疲弊・衰退するため、ある時期に花粉交配を切り上げて、「建勢」 という群れを立て直す作業が必要となります。そのときに必要なのが、野生蜜源であり、北海道では、ニセアカシア、シナノキ、キハダ、トチノキ、アザミ、クローバー、ソバが主要な蜜源になります。このうち、ニセアカシア、シナノキ、キハダ、トチノキという樹木がハチミツ生産量の約7割を占めます。
  つまり、森林がミツバチを介して私たちの食を支えているといえます。森林づくりというと、木材生産が目標になることが多いですが、皆さんが森林づくりに関心があって、何か植樹される際には、蜜源樹種を選んでいただいても良いかと思います。   

質問にお答えします 

質問

回答

1

消臭剤にも香り成分が使われているという話がありましたが、「消臭機能」を有する成分があるのでしょうか。あるとすると、どのような成分なのでしょうか。

最近、さまざまな会社から販売されている消臭剤の中には、いろいろな香りを含む商品が数多く見受けられるため、そのことについて紹介させていただきました。しかし、各会社が開発している商品であるため、「消臭機能を有する香り成分」といったものがあるのかどうかは把握していません。

2

芳香剤について、安眠・安息は良く聞くが、興奮、覚醒、脳活性等の作用を持つものもあるのでしょうか。

香りに関して、「安眠に効く」、「安息に効く」等、「・・・に効く」と様々なことが言われておりますが、そのほとんどは経験談に基づくもので、科学的にしっかりと証明されたものはほとんどないのが現状です。ローズマリー等は興奮、覚醒等の作用があると言われています。

3

香りやハチミツにつながる樹木と植林の関係はどうなっていますか。

香りに関する植林については、公園等で「香りの庭」や「香りの小径」と称して、ハーブ等の草本植物を中心に植栽されている例は数多くありますが、樹木に関してはまだまだ少ないのが現状です。また、蜜源となる樹木(ニセアカシア、シナノキ、キハダ、トチノキ等)の植林事例はきわめて少なく、道内では治山で植栽されたニセアカシアを除くと、植栽事例は数例程度です。

4

はちみつを作っている工場は、どこにありますか。
また、どこの場所でハチミツを採っていますか。

採蜜したハチミツを瓶詰などの作業は、養蜂家さんの自宅付属の作業所などで行われています。ハチミツを採っている場所(蜂場)は道内に約1000ヵ所あり、具体的な場所を紹介することは個人情報のためできません。ただし、ニセアカシアが多い地域では道路沿いからでも蜂場をみることができます。

5

ミツバチは家畜のひとつと聞きます。道の施策なども併せて紹介してみてはいかがでしょうか。

今回は、森林がミツバチを介して私たちの食につながるというお話をさせて頂きました。ミツバチの話題は奥が深く、「家畜」であることもほとんど知られていません。道や国の取り組みについても面白い歴史があるため、機会があれば紹介したいと考えています。

6

蜜源の拡大は協会の仕事なのかもしれませんが、
研究基盤の拡大につながるので、道総研も積極的に取り組んでほしい。

「森-ミツバチ-食のつながり」の研究はまだ緒に就いたばかりです。これからも研究成果を積み、研究基盤をしっかりと築きたいと考えています。

7

建勢について、作物だけだとなぜ弱体化するのか。
その理由、原因を説明してほしい。

経験論的に言われていることで、科学的に立証されたわけではありませんが、実際に作物の花粉交配に従事した蜂群は衰退することが多いと言います。その原因として主に次の二点が仮説として考えられています。
①単一の作物の花粉・蜜ばかりを集めるので栄養の偏りが生じる。
②作物は人間のために品種改良されており、ミツバチの成長のために品種改良されたわけではない。そのため、花粉や花蜜の質が低下した。

8

樹木の生育環境や若さ・古さ等の違いが、ミツの味や質、量などに影響しますか。

閉鎖されたハウス内での花粉交配でない限り、野外での採蜜ではかならず若干の他種花蜜も混在します。同じ養蜂家でも採蜜場所・採蜜年が変わると風味が微妙に変わるのは、他種花蜜の混入の程度が変わるためかもしれません(〇〇蜜のように販売されているものは、他種花蜜の混入の程度が風味を損なわない許容範囲内とみなされるものです)。また、樹齢自体が味に影響するとは考え難いですが、量はやはり樹齢に大きな影響を受けます。採蜜量が多くなるのは壮齢の樹木です。

9

農業用のセイヨウマルハナバチが自然繁殖して増えることが問題となっていますが、ミツバチに同様の問題が生じる可能性はありますか。

ミツバチの天敵にスズメバチ類がありますが、ニホンミツバチの場合はスズメバチに群がって蜂球をつくり、中のスズメバチを熱殺する対抗策を進化させました。しかし、セイヨウミツバチの場合、日本に導入されてからまだ日が浅いため、スズメバチに襲われても対抗手段を持っていません。そのため、日本ではスズメバチがいることで野生化が難しいと考えられています。ただし、スズメバチがいない小笠原諸島ではセイヨウミツバチが帰化してしまいましたが、その一方でアノールオオトカゲという外来種が在来のハチ類を駆逐してしまいました。そのため、セイヨウミツバチが在来のハチ類に替わって花粉交配をしています。

10

ハチ箱が熊に狙われることはありますか。

毎年数十件のクマ被害が発生しており、平成25年には81ヵ所90群が被害を受けました。養蜂家は蜂箱を置く場所の周囲に電気牧柵を設置するなどして対策を講じています。

11

道内でオオスズメバチによる養蜂被害の例はありますか。

スズメバチ類による被害があることは聞いていますが、具体的な数字として統計資料には記載がないため、毎年何件発生しているのかは不明です。養蜂家はまめに蜂場を見回り、またスズメバチ捕獲器具を設置するなどして対策を講じています。

12

芳香成分を取り出す際、煮出す方法を紹介していただきましたが、アロマオイルを抽出する水蒸気蒸留法との違いと、煮出す方法の利点を教えてください。

我々が行っている煮沸(蒸煮)蒸留に対して、水蒸気蒸留は、130℃程度の高温の水蒸気を一気に大量に流すことにより、オイル等の香り成分を抽出する方法であるため、オイルの抽出には向いていますが、我々が必要としているハイドロゾル(蒸留水)を安定して抽出するためには、90℃程度で抽出する煮沸(蒸煮)蒸留を行う方が適していると言えます。

13

ドイツでハチミツを買うときのアドバイスとして「HMF含有量」の少ないものを、と言われました。日本ではどうなっていますか。

HMF含有量とは、ハチミツの処理過程が適切であるかどうかの評価基準です。たとえば結晶化して固まったハチミツを融かすのに熱処理を加えるとHMF含有量が増加すると言われています。ですから、熱処理を加えたかどうかさえ表記していれば、HMF含有量が多くとも質的には問題ありません。演者個人の経験では、HMF含有量を定量的に分析して表記しているハチミツ商品は見たことがありません。なお、熱帯で採蜜されたハチミツは、人為的に熱処理を加えなくてもHMF含有量が高くなることがあるそうです。


さらに詳しく知りたい方は・・・


    表[森の香り]-01.jpg 表[森の香り]-02.jpg 


ページのトップへ