第52回 摩周湖

日本一の透明度~摩周湖の環境科学~

2017年5月15日
環境・地質研究本部 環境科学研究センター 環境保全部情報・水環境グループ 主査(水環境)五十嵐 聖貴

こんなお話をしました

 【1. 摩周湖の概要】

阿寒国立公園の特別保護地区に位置する摩周湖は、周囲を急峻なカルデラ壁に囲まれており、流入出河川がありません。集水域内は人工物のない環境が維持されており、許可なく立ち入ることもできません。展望台から見える紺碧色の湖水は『摩周ブルー』と呼ばれ、年間約50万人が訪れる観光地となっています。

【2. 透明度とは】

船の上から白い円盤を沈めていき、それが見えなくなる深さを“透明度”といいます。現在の摩周湖の透明度は平均で23m程度あり、国内の湖沼と比較すると日本で一番透明度の高い湖です。摩周湖の透明度が高い理由は、他の湖に比べて湖水中の土砂粒子やプランクトンの量が少ないためです。

【3. 透明度の推移】

摩周湖で初めて透明度が測定されたのは1917年のことでした。1931年には当時の世界最高の透明度41.6mを記録しています。1930年代から1960年代まで、透明度の記録は10年に1回程度しか残っていません。1970年代になって透明度の測定頻度が増加しましたが過去の40m台に匹敵する透明度は得られなくなっていました。

 【4. 地球環境モニタリング】

1980年代から摩周湖の特性を利用した地球環境モニタリングが開始されました。摩周湖の集水域には人為的な汚濁源がないため、摩周湖で汚染物質が検出された場合、それは大気中を広域移動してきた物質が雨とともに摩周湖に落ちたことが理由となります。1994年には摩周湖は国際的な水質監視地点に登録されました。

【5. 透明度の実態解明】

2005年に当時の過去最低となる透明度が記録されたことを契機に、私たちは摩周湖の透明度の実態解明に向けた研究を開始しました。私たちは冬期を含む高頻度調査を実施し、20m台の透明度が維持されていることを確認しました。 また、湖水中の光量を自動記録する機器を湖内に設置し、通年での透明度の推移を推定しました。その結果、摩周湖では5月と12月の循環期に透明度が良くて、8〜9月には悪くなり、その季節変動の幅は10m以上あることがわかりました。 さらに、湖水中の光の吸収と散乱を定量化し、摩周湖の透明度を規定する要因として植物プランクトンが主要な割合を占めることを明らかにしました。 長期的な透明度低下の原因については過去の水質情報が乏しいため明確にはなっていませんが、浮遊する微小粒子の蓄積、植物プランクトン量の増加、植物プランクトンの種類の変化に関係がありそうだと考えています。

 【6. 最近の状況】

1. 摩周湖では結氷しない年が増えてきました。結氷しないことによって、透明度にも何らかの影響がある可能性がありますが、今のところ明確にはなっていません。

2. 近年、摩周湖の水位が上昇を続けています。水位上昇と高波で湖岸が侵食されることによって透明度が低下したと考えられる事例がありました。

3. 昨年の台風の影響で摩周湖の水位が更に上昇しました。透明度は過去最低となりましたが、透明度の低下は一時的なもので、長期化はしないと考えています。

講演資料(PDF)


案内チラシ(PDF)

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