No.6 1989.7.28

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

北国の家畜:めん羊

主流品種のサフォークと交雑利用向きのポールドーセット  北海道のめん羊飼育は、昭和に入ってようやく定着し、それも20年代になってから飛躍的に伸びました。1戸当たり飼育頭数はわずか約2頭でしたが、全道いたるところで飼育され、衣科(羊毛)の自給に貢献していました。
 けれども、貿易の自由化や化学繊維の出現などにより存在価値を失い、昭和40年代には壊滅寸前まで追い込まれました。関係者は、必死にめん羊の存続を図りました。 毛で駄目なら肉にしよう。毛肉兼用種で駄目なら肉用種にしよう。その結果、それまでの主流品種コリデールに変わって、肉の王様ラム(生後4か月から1歳までの子羊肉)の生産に適したサフォークが飼育されるようになりました。
 水田利用再編など農業情勢が変化するなかで、新しい品種によりめん羊は復活し、最近10年の飼育頭数は順調に増加しています。ステーキや刺身でも食べられる地場産ラムの美味しさと新鮮さが広く認められるようになり、各地で特産品としての地位を築きつつあります。
 同時に、さらに美味しいラムを生産し、毛も毛皮も活用しようとする気運が高まっています。それに伴って、サフォーク以外の品種に興味を持つ飼育者が増えています。ニ一ズの多様化に対応できる新しいめん羊飼育が軌道に乗ると、北国の生活はもっと豊になるでしょう。

(滝川畜産試験場)

研究の展望

北国の多目的家畜~めん羊~

1.めん羊の救世主サフォークの改良

 肉用種のサフォークが本格的に導入されてから約20年たちます。現在では北海道の気候風土に適応して道内各地で飼育され、めん羊の救世主としての役割を果しています。その間、母羊の体重は60kg台から80kg台へ、1腹当りの平均子羊数は、1.3頭から1.8頭へと大形化・多産化の方向で改良されてきました。
 滝川畜試では、この春の1腹当りの子羊数は1.9頭に達し、5年ぶりに記録を更新しました。今年度は、9年ぶりにニュージランドから原原種の雄を輸入します。これからは産肉能力検定法を検討しながら、肉用種の主な商品であるラムの高品質化、均質化に重点を置いて改良を進めます。

2.交雑利用による少数品種の活用

 サフォークの孤軍奮闘により地場産ラムの評価が高まり、めん羊は復活しました。しかし最近では、サウスダウン、チェビオット、ポールドーセット、ロマノフなどに注目する飼育者が増えています。特色のある面白いめん羊飼育が求めはじめられているのです。
 雑種強勢を狙って、それらと主流品種であるサフォ一クとの交雑利用についても取り組んでおり、小数品種の活用も図ります。

3.飼料給与基準作成による飼育技術の改善

 めん羊全盛時代のコリデールに比べて現在のサフォークは、母羊の体重で約2倍、1腹当りの子羊数で1.5倍です。しかもラムで出荷するために、子羊を速く大きく育てなければなりません。しかも1戸当りの飼育頭数となると約10倍に達します。
 これらの点でコリデール時代のめん羊飼育と大きく違っています。過不足のない飼料給与によってはじめてめん羊の能力が十分に発揮されます。低コスト生産のためにはほ場副産物も有効に利用しなければなりません。
 畑作、水田、酪農の各地帯の飼料基礎に合った飼料給与基準が必要です。北海道で飼料給与基準が作成された段階で、日本飼料標準の設定について検討される予定です。 肥育、出荷に伴う技肉評価についても基準が必要であり、肥育試験の全頭について技肉の理化学分析と食味テストを実施しています。群全体の衛生管理を徹底しなけれぱなりません。今年度からコリネバクテリウム感染症の防除に関する試験が始まりました。

4.繁殖サイクルのコントロール

 めん羊は通常、秋から冬にかけてだけ繁殖して1年1産です。非繁殖季節に人為的に発情・排卵を誘起して受胎させれるならぱ、高級ラムの周年出荷が可能となり、1年2産ないし2年3産も可能となります。いわゆる季節外繁殖の実用化にも取り組んでいます。
 また、通常より1年早く繁殖を開始する当歳繁殖によっても、母羊1頭当りの生涯の子羊生産頭数は増加します。これらの特殊な繁殖技術は、飼育技術が伴わなけれぱ無駄になります。総合技術として集約的なラム生産方式の確立を図ります。

(滝川畜産試験場)


研究の成果

消費者ニーズを考慮したほうれんそう
およびトマトの内部品質指標

 いままで野菜の品質は、おもにその外観の善し悪しが問題とされてきました。しかし最近の消費者ニ一ズは、栄養価、安全性、食味など野菜の内部品質にも向けられ、それに対する関心が高まっています。
 内部品質の良否は、成分組成と含量に関係することから、その評価は主として食品学や栄養学の分野でとり上げられ、農業技術の分野ではほとんどなされなかった経緯があります。
 このような状況を改善するため、女子栄養大学および藤女子短期大学と共同研究を組んで、夏どりほうれんそうとトマトの内部品質問題を検討してきました。その結果から技術体系として完成した「基準値」にはまだ致りませんが、当面の目標として下の表に示すような「内部品質指標値」を策定しました。
 夏どりほうれんそうについてみると、栄養価ではビタミンC含量が、安全性では硝酸含量が、また食味では糖含量が内部品質をあらわす重要な成分と考えられました。しかし糖は含まれる絶対量が少なく、食味検査の結果との間に明らかな関連性が見られなかったので、指標値に入れませんでした。
 硝酸は食品の安全性に係わる成分なので、低い含量であることが必要です。特にこの硝酸含量は、窒素施肥の影響を強く受けるため、生産現場ではやく合理的な窒索施肥技術のできることが望まれています。
 指標値は、栽培条件による変動と、FAO/WHOの食品添加物のデータなどを参考にしました。ビタミンC含量には、夏場は他の季節より低含量であるなど、季節間で大きな変動が認められました。この変動を栽培技術で小さくすることはかなり困難であるため、指標値は食品成分表(四訂)の値(65mg)より低い値にとどめました。
 トマトの指標値策定に当たっては、食味を重視し、その関連成分として還元糖含量、屈折計示度、滴定酸度が重要であるものと考えました。また、食味検査の結果では、消費者がおいしいと評価するのは甘いトマトであることが分かり、このことから指標値は屈折計示度と糖酸此の二つにしました。
 現在、道南農業試験場では策定した指標値に適合するほうれんそうを安定して生産できる合理的な土壌管理法の検討を続けています。

(道南農業試験場)

研究室Now

おいしい道産米を求めて

中央農業試験場稲作部栽培第一科

ご飯のテクスチャー分析  現在、北海道の稲作にとって良食味米、一等米の生産が重要な課題となっています。
おいしい北海道産米を消費者にとどけるには、まず良食味品種を育成すること、つぎにはその能力を十分発揮できる肥培管理技術を確立すること、さらに米の鮮度を低下させない乾燥、貯蔵、流通技術の改良が必要となります。
 当科ではこれらの問題を解決するため、昭和49年から米の食味に関係する成分、性質の解明とその簡易で迅速な分析方法を検討してきました。食味に関する特性として、アミロース含有率、蛋白含有率、熱糊化性、米飯の物理性等があります。
 昭和55年から開始された「優良米の早期開発」で、食味特性の検定を経過して育成された品種はうるち9品種、もち2品種となり、北海道産米の食味向上が図られました。 このように、理化学特性の分析は良食味品種の選抜に大きく寄与してきました。しかし、食味は最終的には人の主観を集めた平均値として表現されます。このため、ひとつひとつの理化学特性値で食味を総合的に評価することは非常に困難です。
 そこで、アミロースと蛋白の含有率から計算されるAPS(AmyloseProteinScore)と呼ぶ食味を示す指標を考案しました。このAPSは北海道米が全国産米のどこに位置するのか、道内の品種別、産地別の味がどのようになっているかを知るために役立ちます。
 また、泥炭地水田では食味特性の劣る米が多いと言われていますが、客土により過剰な窒素吸収を抑え、食味特性が向上することがわかりました。目下客土の材質、客土量客土効果の継続年数等について総合的に検討中です。

(岩見沢市上幌向町)


ハーグレス

北見農業試験場

薬草:ダイオウ  北見農業試験場は、「ふるさと銀河線」訓子府駅から北西へ約4kmの高台にあります。
正門から続く美しい白樺並木を過ぎると、目の前に青々とした芝生の前庭と、四季折々の素晴らしい景色が広がります。
 当場は全道を対象とした小麦と二条大麦、全道並びに東北北部に適応するチモシーとスムーズブロムグラスを育成しています。このほか網走地方の稲作、畑作、野菜作などの安定生産と品質向上のため、各作物の育種や栽培、土壌肥科、病害虫等の幅広い分野の研究を行っています。
 野菜作についてみると、北見の名を全国に広めた「タマネギ」の他に、最近は広く海外から材科を導入し「ニンジン」の育種にも着手しており、その成果が大いに期待されています。
 また網走管内は、古くから特用作物の栽培が盛んなところです。かつての「北見ハッカ」ほどではありませんが、今でも「センキュウ」や「トウキ」等の薬草の栽培が続いています。当場でも薬草見本園に30種類ほどを試作展示し、さらに「ダイオウ」などの栽培試験も実施し、網走管内から薬草栽培の灯が消えないように努めています。

(常呂郡訓子府町)





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