No.7 1989.12.15

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

北海道の大豆

品質良好な平成元年産子実  わが国の大豆の需要量は、年間約500万トンになります。その内約15%が食品用に、残りの大部分は製油用に向けられています。国内の大豆生産量は、この数年約23万トンから28万トンへと増加し、主に食品用に用いられています。北海道の年間生産量は、近年3~5万トンで推移し、都府県における水田転換畑での作付面積が増加していることから、国産大豆に占める割合が少しずつ低下しているのが現状です。
 北海道の大豆作は、厳しい気象条件下にあるため供給量が不安定で、年次や品種によって品質に差の生ずることが課題とされています。しかし、道産大豆は豆腐、味噌、納豆などの食品用として品質が優れ、実需者から高い評価を得て、全国的に広く流通しています。
 また北海道では、作付規模が大きく機械化が進み、平均単収も都府県を上回っており低コスト生産の可能性を持っています。この有利性を生かして、安定した収量と優れた品質を得るために新品種の育成と栽培技術の開発が、これからの課題となっています。

(十勝農業試験場)

研究の展望

高品質白目大豆の早期選抜

1.育成がいそがれる高品質白目大豆

 道産大豆にはいくつかの種類があり、ここで取上げる白目(臍色が黄)大豆のほかに褐目(臍色が褐~暗褐)で中粒のいわゆる秋田大豆(名柄)、光黒大豆(光沢のある黒大豆)や大袖振大豆(あお大豆)等があげられます。
 これらのうち、「キタムスメ」、「北見白」等の秋田大豆は、比較的安定多収なことから、作付けの過半を占めているのが現状です。しかし、秋田大豆は赤味噌用として固有の用途を持っていますが、その需要は最近の白味噌嗜好を反映して著しく限られています。また豆腐としての利用も収率(歩どまり)が低い等の問題を生じています。
 一方白目大豆は、外観品質が良好なうえ子実中の粗蛋白含量が概して高いので、味噌煮豆、豆腐等多くの用途で高い品質評価を得ています。
 そこで、過作にある秋田大豆から品質評価が高く需要のある白目大豆への作付転換を図ってきたところです。ところが、昭和62、63年に道東および道北地域で白目大豆に品質低下の問題を生じ、白目大豆への転換を進めるうえの大きな障害となってしまいました。これらの地域に適応する早熟で品質低下のない白目大豆の育成がいそがれているところです。

2.昭和62、63年の品質低下の主因

 白目大豆の品質低下の主因は年次間で異なり、昭和62年は上川地方の「キタコマチ」(白目中粒)や十勝地方の「トヨスズ」「トヨヨムスメ」(白目大粒)で着色粒を多発したことであり、昭和63年は上川地方の「キタコマチ」や十勝地方の「トヨスズ」で裂皮粒を多発したことです。
 着色粒は開花期間中の低温障害により臍および臍周辺の種皮に褐色の着色を生ずるものです。裂皮粒は低温によって着莢障害をうけた後、好天となり、子実が著しく肥大したため種皮の一部が線状や点状に裂開するものです。いずれも多発すると外観品質を著しく損じてしまいます。
 白目大豆では、これら障害粒の発生に品種間差異が大きいので、抵抗性育種の可能なことが明らかとなってきました。また、障害粒発生に低温条件が関与しているので、低温抵抗性の重要なことも判ってきました。

3.早期育成のための対応

 十勝農試では、上記の障害粒発生のない高品質白目大豆の育成のために、これまで育成してきたシスト線虫抵抗性の白目品種に着色粒発生に抵抗性をもつ中国東北部等からの導入品種を組合せ、その中から高品質、多収系統の選抜を行っています。
 また、上川、北見両農試の協力を得てより早い世代から品質についての評価を行い、選抜を進めていこうとしています。この課題の協力、分担関係は次のとおりです。

十勝農試・着色粒発生に抵抗性の母本の探索と活用
・低温処理による着色粒発生程度の検定
・冷涼な選抜圃における低温抵抗性の検定
上川農試・摘莢処理による裂皮粒発生程度の検定
・白目育成系統の適応性検定
北見農試・白目育成系統の適応性検定

 なお、十勝農試では昭和63年に比較的早熟で白目中粒の新品種「トヨコマチ」を育成しました。同品種は、臍周辺の着色程度と裂皮粒の発生程度が共に少ないので、今後の普及が期持されています。

(十勝農業試験場)


研究の成果

新しい牧草サイレージ品質判定基準

 牧草サイレージは、牧草をサイロなどに詰込んで発酵させ、腐敗菌などの有害微生物の増殖を抑え、長時間保存できるようにした家畜の飼科であり、すでに、4000年も前に古代エジプトで作られていたほど古くからの保存飼料です。
 この牧草サイレージは、北海道の厳しい冬季間の重要な飼料として広く利用されておりますが、その飼料価値は、原料草や調製条件によって著しく変動するものです。そのため、その飼料価値を簡易に評価するための判定法が、これまで国内外において色々検討され、発表されてきました。
 特に、北海道では、昭和39年に農林省北海道農業試験場の研究者が長年にわたって研究した成績をもとに品質判定基準を作成し、この判定基準がこれまで道内各地で広く利用されてきました。しかし、この判定基準は水分が65%以上の牧草サイレージしか判定することができず、また、作成後すでに20数年も経過していることから、今回、これを全面的に改め、水分が65%未満のいわゆる低水分牧草サイレージの品質をも判定できるような新しい基準が作成されました。
 この新しい品質判定基準は、サイレージの栄養価や発酵品質など家畜の増体や乳生産に直接関係する諸要因を中心とし、サイレージ原料草を生産する草地の管理や利用並びに調製に関係する事項を考慮して作成されています。
 また、この判定基準は、高・中水分用と低水分用の2種類あり、1つの表にまとめて示してあります。いずれも原料草及び発酵品質について、それぞれ判定項目を設け、重要度に応じて配点を行い、その合計得点で品質を判定することにしております。
 また、調製や貯蔵条件が悪く、不快臭の著しいものや、べたべたし発熱・発かびの著しいもの、黒く焦げたものなど飼料と認め難いほど品質の低下したサイレージは評価の対象から除外しております。
 なお、この品質判定基準は、平成元年1月の北海道農業試験会議において普及奨励技術として採択され、積極的に普及させて行くことになりました。今後、この品質判定基準が畜産現場において十分活用され、牧草サイレージの品質向上ひいては畜産経営の安定化に大いに役立つものと期待されています。

(文責 中央農業試験場畜産部)

研究室Now

小豆、菜豆の良質安定品種を目指して

十勝農業試験場 豆類第二科

カムイダイナゴンとエリモショウズ  私達の研究室は小豆と菜豆の品種改良を担当しています。これらの豆類は輸入制限品目として残っていますが、将来ともこれが維持されるかどうか難しい問題です。
 小豆はコンパイン収穫が困難なため、アメリカ、カナダなどでの栽培は定着しておらず、輸入の95%以上が中国からです。菜豆は世界中で栽培されていますが、輸入の約70%がアメリカからです。
 輸入ものは国産ものに比べて品質が劣り、国産を代表する北海道産は好評です。しかし、北海道はしばしば冷害をうけるため、生産量の変動が大きく、実需者から安定供給が強く望まれています。私たちは、海外からの輸入ものとの競争に勝つため、さらに良質で、耐冷性の強い品種の育成に努力しています。
 また、生産の不安定性を助長している小豆の落葉病、茎疫病、莱豆の炭そ病、かさ枯病などに対する抵抗性品種の育成を進めています。これらの耐病性品種が育成されると防除薬剤の節減、品質の向上なども期待されます。
 品種改良に重要なのは遺伝資源ですが、小豆は昭和59年から63年にわたり、国内各地から約1,200点の品種を集めました。兼業化、過疎化が進む府県の農業の中で、えいえいと受け継がれてきた在来種が途絶えようとしている状況にあり、誠に貴重なものを集めることが出来ました。
 莱豆も中・南米から約700点を集めました。現在、それらの品種の特性を調査中であり一部は品種改良に使っています。
 今年、北海道にはかってなかった、極大粒の小豆「カムイダイナゴン」が奨励品種になりましたが、これは、能登地方と韓国と中国東北部の大粒因子を集積して育成したものです。

(河西郡芽室町)


ハーグレス

根釧農業試験場

ハイテク試験牛舎  根釧地方は、火山性土と寒冷寡照な気象など厳しい環境条件にあります。これらに適応した牧草及び乳牛の導入と広大な土地条件を背景に、大規模な草地型酪農が営まれ、一大酪農地帯として発展しています。
 根釧農業試験場は当地帯のほぽ中央に位置し、地域及び全道対応の酪農技術、地域特性に立脚した土壌肥科、飼料作物、酪農経営などの研究のほか、冷涼な立地環境をいかした馬鈴しょの育種を含め、広範な試験研究を展開しています。
 現在、農業の国際化に対応して農畜産物のコスト低減、生産性と品質の向上を図る技術開発が緊急課題となっています。これらの課題解決へ向け、最新のハイテク試験牛舎精密圃場、これに加えて各地に配置した現地試験を結合させ、乳牛の資質及び高栄養牧草の調製と給与技術の改善、乳質の向上と生産病(繁殖障害など)の予防、合理的草地維持管理、酪農施設・機械の利用及び経営管理、環境特性を反映した牧草・飼料作物の選定と栽培技術の確立など、広範かつ総合的な技術開発に全力で取組んでいます。

(標津郡中標津町)





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