No.9 1990.8.15

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

切花の輸送はクールコンテナで

トルコギキョウ  カーネーション、トルコギキョウ、アルストロメリア、スターチス、シュッコンカスミソウなど多くの花は、冷涼地で栽培すると花色があざやかで花持ちもよく暖地のものとは比べものにならないほど質のよいものができます。
 実際東京や大阪などの大消費地では、7~9月の道産切花の銘柄品は驚くほどの人気があります。このため、道外の巨大なマーケット向けの作付け・出荷が急増しています。
 しかし、切花の道外出荷は容易ではありません。北海道は栽培面では府県よりも有利ですが、流通面では逆に不利な条件にあるからです。流通経費が大きいこと、輸送期間中に品質が低下しやすいこと、この二つの難関を突破することが切花移出拡大のカギです。
 長距離・長時間輸送したものを遠隔地の市場で競売にかけ、府県産との競争にうちかって利益を上げるためには、花持ち性のいっそうの向上をはかる栽培技術と、輸送コストを最小限にしつつ品質・鮮度の低下を極力抑える低コスト・保鮮輸送技術とを両輪とする総合的な花き生産技術の開発・普及がますます重要になってきています。

(中央農業試験場園芸部)

研究の展望

切花の低コスト保鮮輪送技術

1.道外への移出拡大と問題点

 わが国の切花市場は、現在約4千数百億円規模ですが、近い将来には1兆円市場に成長するといわれるほど広大です。このため多くの農家が切花用花きの作付けに意欲的になっています。出荷量がとくに伸びているのは、カーネーション、シュッコンカスミソウ、スターチス、トルコギキョウ、ストックなどで、これらは道外への大量移出を前提に生産されています。
 道外に移出するということは、長距離・長時間輸送した切花を競売にかけて販売することです。市場で買参人に評価され高価格で取引してもらうためには、着荷状態をよくしなければなりません。
 現在の輪送手段の主流は常温航空輸送ですが、鮮度保持と輸送コストの節減が大きな課題です。こうした現実に対応するため、当場では航空輸送による保鮮と、トラックや鉄道コンテナによる低コスト・低温流通の試験にとりくんでいます。

2.切花の保鮮輸送技術の組み立て

 切花の鮮度保持には、品目・品種ごとにつぎのことが問題になります。
(1)栽培・品種:まず長距離・長時間輸送に耐えられる素質をもった切花を生産するための栽培技術の確立が必要です。また的確な保鮮対策が講じられるように、花持ち特性を明らかにしなければなりません。
(2)収穫(採花)時期:花持ちや保鮮剤の効果は「切り前」(採花時の花の開き具合)によって左右されます。花持ちがよく、しかも競売時に適当な開花状態になる「切り前」を品目・品種ごとに明らかにする必要があります。
(3)保鮮(延命、保存)剤:保鮮剤は、チオ硫酸銀、糖類、植物ホルモン類、殺菌剤などを有効成分とする薬剤で、正しく使用すれば切花の花持ち延長に劇的な効果があります。薬剤の種類、処理濃度、時間、温度、切り前が問題になります。
(4)包装・容器:包装・容器は、1)物理的損傷を防止し、取扱を容易にする、2)品温上昇を抑制する、3)しおれを抑制する機能をもっていなけれぱなりません。そのため、材質、構造、形状の選択が重要です。
(5)予冷:移出野菜の予冷はいまや常識になりましたが、切花の予冷はようやく緒についたばかりです。適当な予冷方式を選び、最適予冷条件(温度、湿度、風量、圧力、終温、時間)を決定することが課題です。
(6)輸送条件:高温期の出荷においては、発送から着荷・競売までの温度・湿度管理の適正化が最大の課題です。温度別花持ち期間の確認、最適温度・湿度条件の確定が急がれています。野菜とちがって低温に対する感応が微妙ですので、特に混載時の下限温度や荷降ろし時の品温管理が問題になります。
 シュッコンカスミソウとスプレーカーネーションでは、上記の(3)~(6)について一応の試験を終え、現在スターチス類、トルコギキョウ、アルストロメリアなどについて試験中です。
 空知支庁管内では、この夏から冷凍車による切花の共同出荷が開始され、本格的な低温輸送が実用化しつつあります。航空機による超遠隔地への保鮮輸送、クールコンテナや冷凍車による巨大消費地への低コスト・低温輸送が全道に普及していくものと思われます。

(中央農業試験場園芸部)


研究の成果

小麦条斑病~その生態と防除~

 耳を澄ますと、病める作物の救いをもとめる声が聞こえてきます。どの作物も土壌病害に苦しめられているのです。
 小麦では条斑病がその代表です。セファロスポリウム・グラミニウム(Cephalosporiumgramineum)というカビ一糸条菌一が病原体です。このカビは土の中に潜んでいて、小麦の根から感染・侵入します。侵入した菌は植物体の導管内に住みつき、養分を収奪します。葉に現れる典型的な病状である条斑(縞模様=ストライプ)は、小麦と病原菌との争いの外から見た姿なのです。
 この病気にかかると収量が大幅に低下するほか、品質も悪くなります。10月頃の麦畑を注意深く観察すると、条斑病に罹った小麦の刈株や茎(麦稈)の上に、卵の黄身のようなかたまりを見つけることができます。といっても大きさは1mmぐらい。スポロドキア(分生子座)といい条斑病菌の胞子のかたまりです。これぞまさに「諸悪の根源」たる伝染病です。
 胞子の数は膨大なもので、これが雨などで土中に分散します。病気のでる畑では1gの土に500個から50万個の胞子がいて、小麦の根への侵入を狙っています。種子にも菌が入り込んだり、付着したりします。これを種子伝染といいます。新作地に病気を拡大する原因となるので要注意。病原菌は小麦畑近辺のイネ科雑草にも感染します。これが保菌植物です。
 伝染源は種子・土壌・保菌植物の三つです。さて防除法はどうでしょうか。伝染源をなくしたり病原菌の密度を減らすことが大切です。その第1は、健全種子を使うこと。条斑病の拡大防止には種子消毒がぜひ必要です。第2は、病気にかかった麦稈(スポロドキア)退治。病株の焼却、抜き取りに加えて転換畑では、小麦収穫後の湛水処理も有効です。
 最後にこの菌は小麦に寄りかかって生きていることに注目してください。小麦がないとたちまた元気を失うのです。とすると一。そうなのです。連作を避け輪作すると病原菌はみるみる減ってしまい、その結果発病も少なくなります。一作はさむだけでも効果が顕著です。土壌病害こそは、連作障害の主要な原因だということを、小麦条斑病ほど鮮明に教えてくれたものはありません。
 道立農試病虫関係者が6年をかけて明らかにした成果です。詳しい試験研究の内容について資料を御希望の方は、中央農試病理科宛に資料請求をして下さい。

(中央農業試験場病虫部)

研究室Now

北見農業試験場牧草科

チモシーの個体選抜圃場  当科では、チモシーとスムーズブロムグラスの育種を行っており、北海道及び東北地方に適した多収で耐病性に優れた品種の育成を目標としています。北海道では、チモシーは67万haの草地の約70%に栽培されている重要な飼料作物です。特に、土壌凍結地帯では、越冬性に優れた特性から、採草と放牧に広く利用されています。
 チモシーでは、良質粗飼料生産に寄与するために、熟期別品種、栄養価値を左右する斑点病耐病性と高消化率系統を育成しています。その結果、出穂始が6月中旬の極早生「クンプウ」、6月下旬の早生「センポク、ノサップ」と7月上旬の晩生品種「ホクシュウ」が育成され、広く利用されています。
 これらの熟期別品種を組合わせた草地では、収穫連期が約3週間に延長され、従来の早生品種だけの栽培に比較し、栄養価値の高い粗飼料生産が可能となりました。最近はこの栽培体系をより進めるために、中生品種の育成を中心としてきました。
 現在は、斑点病幼苗検定と消化率等の選抜から育成した中生系統の地域適応性試験を実施しています。現在の普及品種は、再生力、倒伏性、競合力及び多回刈りで永続性等の向上が必要とされており、これらの点を改良すべく選抜を開始しています。
 再生力と耐倒伏性については、優良系統が育成されています。スムーズブロムグラスでは、アイカップが育成され、耐乾性に優れた特性から、アルファルファとの混播で乾燥地帯の生産性向上が期待されています。
 現在は、普及面積の拡大をめざして、永続性及び耐病性(褐斑病、立枯病)を中心に個体選抜をしています。

(常呂郡訓子府町)


ハーグレス

天北農業試験場

ペレニアルライグラス草地の放牧試験  天北農業試験場はオホーツク海とコハクチョウが飛来するクッチャロ湖を眼下に眺望できる風光明媚な、わが国最北端の農業試験場です。
 天北地方は根釧地方と並ぶ一大酪農地帯を形成し、ともに草地型酪農を展開しています。複雑な地形に加え、重粘土と泥炭土の特殊土が広く分布し、気象条件も厳しい自然環境にあります。
 このような農業基盤を背景に酪農経営の安定的な発展を目指し、牧草・飼料作物の優良品種の育成と選定、栄養収量を主眼とした安定多収技術と放牧利用技術の確立を目的とした試験に取組んでいます。
 現在、農業の国際化に対応した畜産物の低コスト生産が緊急な課題となっていることから、重粘土ならびに泥炭土草地の合理的維持管理、高栄養牧草であるアルファルファの栽培技術、ペレニアルライグラスを主体とした放牧利用管理技術などが中心課題となっています。

(枝幸郡浜頓別町)





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