No.17 1993.7.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

ギョウジャニンニクの特性と栽培法

ギョウジャニンニクの草姿  ギョウジャニンニクはユリ科の植物で、北国特産の山菜です。新芽は独特の強いにおいと甘味があり、美味しいだけでなく、抗血栓物質などを含み、機能性食品としても注目されています。現在は山採りがほとんどで、資源保護が望まれるばかりでなく、生産者から特産品として栽培化が望まれていました。
 十勝農試では昭和63年からギョウジャニンニクの試験に取り組んで来ました。まずそのライフサイクルを調べてみると、春先の萌芽伸長から始まり、開花までに1カ月半を要し、夏から秋にかけて結実し、茎葉が黄変、枯死して鱗茎は休眠状態となり越冬して1年を終わることが確認されました。  また道内各地から収集した個体群間に生育の早晩や草姿に違いがあることが分かりました。しかし、ギョウジャニンニクは生育が遅い植物で、は種から収獲まで5年以上かかることも分かりました。そこで実生法を検討した結果、採種後時間を経過したものは休眠状態となり発芽しずらくなりますが、採種直後(採りまき)には種すれぱ高い発芽率を示す結果が得られました。
 そこで体系的には種すれぱ、十分計画生産が出来る可能性があることが推察されました。しかし、まだ未検討の部分が多く、現在種子増殖法や施肥法、内部品質等について道立相互(食加研)の共同研究を実施しています。

(十勝農試園芸科)

研究の展望

北海道の農業機械研究について

1.今は機械化による省力化が求められている時代

 農業者の高齢化、雇用労働力の不足に伴い、機械化による省力化が強く求められてきたが、昨年、国が発表した「新農政」によって、この機械化は一層強力に加速されたといっても過言ではありません。
 「新農政」の中で、野菜の将来における安定供給に対する懸念を受けて、具体的な政策として「野菜新政策」が出されたが、この政策の4本柱の一つに省力機械化が据えられています。これは、各分野の中で、野菜作機械化が最も遅れていることを考えると、極く当然のことです。今一番求められているのは野菜の機械化なのです。 機械化は野莱にとどまらず、より一層の省力化を進めるために、ロボット開発などによる無人化や新たなハイレベル機械開発の実用化事業が進められようとしています。以上のような国の政策に呼応して北海道も地域性を踏まえた施策を進めているところであり、農業機械部門も現場実践部隊として、日夜頑張っています。

2.北海道の農業機械緊急開発はたくさんある

 稲作は田植機、自脱型コンバイン、汎用型コンバインの開発、普及で機械化一貫体系はできたといわれるが、そうでしょうか。病害虫防除は依然として畦畔ノズルで重いホースを引きずりながら、水田の中を歩きながら作業しています。これは省力機械とは縁遠い光景の何ものでもありません。
 まず、この防除作業を乗用によるワンマン化を実現しなけれぱなりません。このような機械化との凹凸を改善することが緊急課題です。
 畑作は大型機械化体系が確立されたといわれるが、そうでしょうか。小麦は最も省力化が進み、10a労働時間は2時間程度に過ぎないが、穂発芽など品質面では大きな課題を負っています。機械化からのアプローチが不可欠なのです。馬鈴しょについては、播種は依然として1畦に1人の補助者が必要であり、多畦化ができず、省力化は停滞しています。ポテトハーベスタは機上選別に数人を要し、手選別の速さに制約されて、作業能率は低い。損傷防止対策も今後の課題です。
 てん菜は移植栽培が定着しているが、重い苗を扱う労力は多大であるばかりでなく、苗重量は極めて重いため、施肥と移植を2工程に分離せざるを得ず、作業能率を低下させています。これらを改善するには、是非とも直播技術を導入しなければなりません。
 豆類は他の作物に比べて最も遅れています。大豆は汚粒対策が未解決でコンバイン収獲が未だ実現されていません。莱豆も色流れの問題からニオ積みの多労働を強いられています。小豆については、ピックアップ方式が見直されており、平成6年より品質面に重点をおいた研究に着手します。
 野菜作では移植技術がセル成型苗を中心に機械化が進行中ですが、機械化の最大のネックとなっている収穫機はこれからの緊急課題です。
 酪農は自走式フォレージハーベスタにみるように、個々の機械化はほぼ達成されているが、良品質牧草の収穫技術など利用技術は残されています。糞尿処理も大きな課題です。環境汚染対策として圃場還元技術、堆肥化技術、メタンガス利用技術など緊急課題です。

3.道立農試農業機械部門は今フル操業です。

 以上のように、北海道地域として解決すべき課題は山積みです。これらを改善すべく農業機械部門は全力投球をしているところです。最近3カ年の実績は、北海道農業試験会議を経て、普及に移した課題は22課題であり、この間に出願した特許は9件にのぼります。
 特許は実用化されて始めて実績となりますが、いちごの収穫台車は本年より市販に踏み切りますし、上下2段側条施肥播種機は実用化に向けて改良、実証を重ねています。ニンジンの自動整列、切断装置は本年現地施設で実証し、一挙にニンジンの機械化を達成する意気込みです。キャベツなど葉茎莱類の収穫機は半自動ながら、個別利用の簡易な機械として実用化に向けて試作機の改造に取り組んでいます。
 コンバインに装着できるヒマワリヘッダも実用化しており、今後の油料作物の導入、普及に備えています。ダイコン収穫機は十勝農試が開発し、本年は実用機を製作し、現地に導入する計画です。本機は半自動方式ですが、本年は自動化の開発に着手し、補助作業を要しない全自動ハーベスタの実用化を図っています。
 このように機械は現地に普及して始めて評価されるので、農業機械部門スタッフは実用化に向けて努力しています。

4.21世紀に向けた機械化の取り組み

 水稲防除のブームスプレヤによるワンマン化は、有人ヘリ防除が普及している府県とは異なり、北海道として特有の導入すべき技術です。畑作の機械化は、北海道特産であり地域技術として解決しなければなりません。野菜作も、重量野菜を始め、北海道への依存度が高まっており、広い作付面積を有する畑作的野菜など北海道独自の技術開発は欠かせません。酪農は国際化に対応して規模拡大、フリーストール牛舎の普及などの進展に伴い、地域として解決すべき課題は多い。
 農業機械部門はこのような各分野にわたる技術開発に対応すべく、研究への取り組みを検討しています。現在、農業機械部門は総数11人で、中央が部長を含めて5人、十勝が3人、根釧が3人となっています。
 ここ当面は野菜関係開発の重点化は避けられないことから、中央農試は圃場機械化とポストハーベスト関係の施設機械・環境の自動化を重点に研究します。十勝農試は畑作と並行して畑作的野菜を中央農試と調整分担し、研究開発の効果を高めます。根釧農試は酪農を中心に利用技術・開発研究を行い、中央、十勝との連携を一層密にし、地域対応に取り組みます。
 以上のように、3場間の連携を密にし、研究効率を高めるなど研究への取り組みを見直し、北海道農業の発展のために努力してまいります。

(中央農試農業機械部長)


ハーグレス

「受託試験について」

 道立農試での受託試験は、いわゆる道費以外の試験費で、試験実施依頼者から委託される試験をいい、農業団体、民間会社等を中心に国立研究機関からのも含まれます。受託試験は一般試験と農業資材試験とに大別され、委託者の希望により幅の広いものとなっていますが、試験は公正に行われ、さらに試験点数等にも限度をもうけております。
 新規に受託試験を始める手順は、前年度の6月までに委託試験申込書を堤出し、知事は中央農試場長の検討結果を経て、試験の諾否を決定します(試験契約は単年度とし更進可能です)。この試験に要する試験経費は委託者が負担します。
 一般試験を担当した試験場の場長は、試験の成果等を記載した実績報告書を実施年度の2月末までに堤出し、3月末までに委託者に通知します。この試験の成果は、北海道農業試験会議をへて普及奨励又は指導参考として全道に普及することができます。
 次に、除草剤、農薬、肥科、土壌改良剤およびその他これに準じる資材の実用化のために行う農業資材試験は各地域で効果や適応性を明らかにし、普及指導上の指針を得るために実施するものです。
 新規に農業資材関連試験を委託する手順は、2月中旬までに農業資材試験申込書を堤出し、道庁農政部関係者の選考委員会によって審議のうえ、契約を結びます。試験が終了したときには、遅延なくその成果を取りまとめ、当該年開催の北海道農業試験会議において検討のうえ、委託者に通知します。なお、試験研究受託規程については「道立農試例規・内規集」を参照して下さい。

(中央農試企画情報室調整課)


ハイテクNow

不凍実験室

不凍実験室全景  不凍実験室は、昭和40年12月に落成した、農業機械・施設の全天候型実験棟です。床面積は約893㎡(約270坪)あり、冬季間や天侯が不順なときでも耕耘、移植、施肥など土壌関連農業機械の室内実験がおこなえるよう、建物の床面は土間となっており、当時は他に類を見ない画期的な実験施設でした。
 この不凍実験室も落成してから25年以上の時がたち、建物全体に老朽化が進んできたことから、平成4年に大幅な改修工事を行い、見違えるような大型実験棟に生まれ変わりました。
 不凍実験室内に独立したデータ処理室(94.85㎡)を設け、測定機器の保管やデータの処理、ミーティング等の場を作りました。また、土間であった床は約323㎡を実験用のソイルビンとして、残りをコンクリート床として整備し、土壌を使う実験と室内定置実験を行う場所を区分し、より機能的になりました。
 現在、高齢化・後継者不足が切実な問題となっており、移植、防除作業の高度化、収穫、選別作業の省力化など、人手不足対策を推進する研究をこの施設を利用し進めています。

(中央農試農業機械部機械科)


研究の成果

てん莱そう根病の生物防除

健全なテンサイ  てん菜そう根病は、北海道の畑作地帯に広く分布し、てん菜の根中糖分低下の原因になっています。この病気は、土壌菌(かび)によってうつされるウィルス病で、適切な防除法がありません。
 私達は、遺伝子工学的手法によってウィルスの遺伝子解析を行いました。その結果ウィルスに含まれる3番目の遺伝子(RNA-3)が発病に係わっていることをみつけました。さらにこの遺伝子に欠失を起こさせると弱毒ウィルスになることを発見しました。
 このようにして作成した弱毒ウィルスをてん菜の紙筒育苗中に接種し、発病ほ場に植えたところ、高い防除効果が認められました。

(中央農試生物工学部遺伝子工学科)




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