No.18 1993.11.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

NAPASSを活用した競合産地分析システム

NAPASSによる北海道産と青森産ダイコンの出荷状況分析  新しい野菜の導入やこれまで作付している品目の拡大を計画している産地では、生産された野菜をどこに出荷し、いかに有利に販売するかが課題となっています。作付拡大を計画している「品目」の出荷を進める上で、道内市場だけではおのずと限界があり、府県移出を考慮した出荷対応が必要です。
 このような状況の中で、移出先の市場ではどの時期にどこの産地から入荷されているか、その時の価格はいくらか。また、北海道が出荷する時期と競合する産地はどこで、その産地の価格はいくらか等、対象品目における市場側の入荷状況の把握、つまり市況情報の収集が移出を進める上で大きな意味をもってきます。
 ここで紹介する「競合産地分析システム」は、全国68卸売市場で取り引きされている野菜53品目、果実65品目・品種の入荷量と価格を原データとして構築されたデータベース(NAPASS一全国農産物市況分析支援システム一農業研究センター)を活用して行う市場動向分析です。これを利用することによって以下のようなことができます。

  1. 全国の市場を対象とした市場分析が可能となります。
  2. 北海道の出荷時期と競合する府県産地の特定化や、産地別の出荷量、価格が明らかとなります。
  3. データベースの機能を利用して日別変動や、週、旬、月、年別の時系列分析が可能です。
 NAPASSの利用はHARIS(北海道立農業試験場試験研究情報システム)のユーザを対象としています。HARISのネットワークを利用すると最寄りの試験場とつなぐだけでその利用が可能です。

(中央農試・経営部)

研究の展望

大地に根ざした逞しい畑作農業をめざして

道立農試の畑作研究

 北海道の耕地120万haの中約40万haが畑地として利用され、その面積は全国の約35%を占めています。小麦、豆類、馬鈴しょ、てん菜の生産量はいずれも全国の50%を越え、北海道畑作は我が国にとって極めて重要です。一方、畑作物の生産環境は、輸入農産物との競合や価格の抑制など厳しい状況にあり、加えて農家戸数の減少が統くことから経営規模の拡大が見込まれ、畑作経営はより一層の省力・省人化が迫られています。
 このため、各作物とも・収量性の向上と省力低コスト生産、・加工適正の向上など高品質化、・安定生産による安定供給、・多様化する消費ニーズへの対応、・環境調和と農産物の安全性への配慮が強く求められています。これらの要望に応えるため道立農試では、優良品種の開発と高品質安定省力生産技術の開発に取り組んでいます。
 小麦では、めん用として良質なチホクコムギやタイセツコムギを育成し、実需者から好評を得ています。さらに改良を進め、評価の高いオーストラリア産ASW並めん適性品種の開発を目指します。同時に、耐穂発芽性、耐雪性、病害虫抵抗性を強化し、生産の安定化を図らなければなりません。春播小麦では、ハルユタカや北見春53号を育成しました。さらに良質なカナダ産1CW並のパン適正を有する短稈・多収品種の開発を目指しています。栽培技術では、窒素追肥技術の検討を進め、土壌・栄養診断による収量及び品質コントロール技術の確立を図ります。品質チェックシステムと合わせ、高品質小麦の安定供給が可能になるでしょう。北見、中央、十勝、上川農試が協力して「高品質小麦の緊急開発」と「道産小麦の品質向上」のプロジェクト研究を進めており、成果が着実に上がっています。
 大豆では、センチュウ抵抗性のトヨムスメやトヨコマチ、わい化病抵抗性のツルムスメ等を育成し、白目大粒種の耐病性の改良が進んでいます。さらに耐冷性とわい化病抵抗性を強化して生産性の向上を図ることが必要です。遅れていたコンバイン収穫体系は、カリユタカの誕生で実用段階に入りました。良質品の安定生産のために、カリユタカへの耐病性の付与が緊急課題です。また、豆類、納豆、煮豆など用途別品種の開発を進めます。条播密植や狭畦幅栽培などコンバイン収穫向けの省力多収栽培法、栽植密度と後期窒素施肥を組み合わせ多収穫栽培法も検討しています。
 小豆では、耐冷性、耐病性、品質の向上を目標に品種開発を進め、良質多収のエリモショウズ、落葉病と茎疫病抵抗性のアケノワセなどを育成しました。さらに耐病性の良質品種、早生の安定品種、極大粒良質品種の開発を図ります。栽培技術では、濃色粒の発生要因の解明と対策、施肥改善による品質向上対策などの取り組みを進めています。さらに省力化に向けた機械収穫は、評価の高い道産小豆安定供給の視点で取り組みたい。菜豆では、耐病性、品質向上を重点に品種開発を進め、炭そ病抵抗性の新品種十育A52号などを育成し、普及が期待されています。大福、虎豆の品種開発では、早生、大粒、耐病性を目標に進めます。栽培技術では金時類の色流れ対策を確立し、生産の安定化を目指します。
 馬鈴しょは、ニ一ズの多様化・高度化への対応と病虫害抵抗性の向上が大きな課題です。食用では、良食味で剥皮黒変のない多様な調理適性をもった品種、加工用ではフレンチフライ用にムサマルを育成したが、より極大粒・多収品種を目指しています。チップス用には、低温下での難糖化性を備えトヨシロを上回る良質品種を育成します。また、紅丸を上回るでん粉特性と高でん粉収量の品種開発を進め、合わせてセンチュウ抵抗性を付与します。加工用小粒品種や高ビタミン品種など特殊用途向け品種の開発もターゲットとなるでしょう。また、栽培管理では、品種別のきめ細かな栽培技術を検討しています。そうか病については、抵抗性品種の開発を急ぐとともに、被害防止技術の確立を図らなけれぱなりません。
 てん莱については、高糖性品種の選定、高糖分栽培技術の開発が進んでいます。さらに高糖・高品質・多収品種の開発、土壌診断による合理的な施肥技術による収量・糖分の安定化を目指します。また、そう根病など被害軽減対策も重要です。なお、簡易育苗技術による省力化と苗の軽量化、直播栽培による省力低コスト生産技術の開発など省力化についても検討します。
 その他、二条大麦については麦芽品質・高発酵性・耐病性を目標に品種開発を進め、新品種りょうふうを育成しました。加工用スィートコーンは、共同研究により耐倒伏性、高加工適正の品種が開発されています。道産品の評価の高いそば、健康油、景観作物として特産化が期待されているなたね、ひまわりについても品種の選定、栽培法の確立を進めてきました。今後も新規導入作物、特産作物について検討し、豊かな北海道農業発展に寄与したいと思います。また、各作物について新資材や輪作体系の試験も実施します。
 品種開発は、遺伝資源や生物工学技術など基礎的研究、抵抗性検定や品質評価など環境部門と一体となった地道な努力が必要です。それは長期的な展望の下に進めなけれぱなりません。そして、栽培技術の体系化があって真に役立つ技術は完成します。道立農試では、各作物の育種センターを中心に各場の畑作研究者が緊密なネットワークの下、生産者と消費者の声に耳を傾けながら品種開発から栽培技術の開発まで、たゆまず努力を統けています。大地に根ざした進しい北海道農業を目指して、道立農試の畑作研究は時代を先駆けする研究でありたいと願っています。

(中央農試 畑作部長)


ハーグレス

指定試験事業について

 指定試験事業は、本来、国が行う必要がある試験研究のうち、国の試験研究機関の置かれている立地条件から対応出来ないものについて、立地条件が適当であり、かつ研究員、施設等の整っている都道府県の試験研究機関に委託実施されているものです。北海道でも指定試験事業で数多くの優良品種を育成するとともに、指定試験で培った育種技術を活用して、独自に水稲、菜豆等について多くの品種開発を行っています。また土壌肥料試験も指定試験事業で開発した基礎的技術を応用した各種研究成果が現地の技術として活用され、北海道農業の発展に大きく貢献して来ています。
 指定試験事業は農林水産技術会議事務局振興課の指定試験係が窓口となっており、道立農試では、育種、特性検定、系統適応性検定、土壌肥科の各試験が行われています。育種試験は水稲(上川)、小麦(北見)、大豆(中央・十勝)、小豆(十勝)、とうもろこし(十勝)、馬鈴しょ(根釧)、牧草(北見)、てん菜現地選抜ほ(十勝・北見)の8作物、10単位が5場で実施され、特性検定は7作物12単位が8場、系統適応性検定は10作物21単位が8場、土壌肥料(鉱質草地・火山灰草地)では2単位2場(天北・根釧)で実施されています。運営は全て国費で賄われ、平成4年度では人件費が約1億3千万円(補助対象者34人)、事業費は試験研究費が約7千2百万円、備品整備費が約1千万円で合計約2億1千万円となっています。
 最近の成果では、水稲でハヤカゼ(元年)、彩(2年)、秋播小麦ではタイセツコムギ(元年)、大豆ではツルムスメ(元年)、カリユタ力(2年)、小豆ではアケノワセ(3年)、馬鈴しょではムサマル(3年)、牧草ではアツケシ(3年)、キリタップ(3年)となっており、土壌肥料では「草地におけるリンの効率的な施肥時期」(3年)等の成果を出しています。

(企画情報室情報課)


ハイテクNow

高速液体クロマトグラフ(HPLC)

高速液体クロマトグラフ(HPLC)  消費者が野菜に求める品質は従来の外観品質ばかりでなく、栄養・美味しさ・安全性といった内部品質にも目が向けられるようになり、その向上が強く求められてきております。内部品質に関係する糖・有機酸・アミノ酸・ビタミン等の有機成分の分析に高速液体クロマトグラフ(高速液クロ)を使うのが現在最も有効な手段となっています。
 高速液クロは、高圧をかけた液体移動相と固定相および試料成分の相互関係により各種成分を分離し、目的成分別にいろいろな検出器で測定する装置で、オートサンプラーを装着すると、1日で約100点もの分析が可能です。  現在、とまと、ほうれんそう、レタス等の内部品質を向上させる栽培管理法を研究中で、糖・修酸・硝酸・ビタミンCを中心に使用していますが、将来的には味および健康の維持・増進に関与するアミノ酸等機能性成分の分析にも有効な手段となるものと期待されています。

(道南農試 土壌肥料科)


研究の成果

だいこんハーベスタ

だいこんハーベスタ  圃場作業労働の軽減化と洗浄・調製施設までの運搬作業の省力化を図るために、だいこんを抜き取り、葉の仕上げ切断を施して、大型コンテナに詰め込むまでを一連の工程で行うトラクタ半直装型のハーベスタを開発しました。
 ビニールマルチや高畦栽培に適応する構造で、道内の主要品種について場内とだいこん生産地3筒所で収穫試験を実施した結果、損傷が少なく、作業能率は3人組作業で1時間あたり2.8aの処理が可能です。10a当たりの投下労働時間は慣行の手取り収穫作業と比較して35%減となることが確認されており、作業強度はホー除草並で継続作業も可能であることが分かりました。適応トラクタ馬力は40~50psです。

(十勝農試 農業機械科)




Leter HAGRES一覧へ戻る
農業技術情報の広場へ戻る