No.20 1994.6.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

道立上川農業試験場の移転整備

上川農試新庁舎全景  平成元年9月に移転地を比布町栄進地区に決定して以来、4年4カ月の歳月をかけて進めてきた上川農業試験場の移転整備事業が平成5年度末をもってほぽ終了しました。これで士別市に離れていた畑作科と園芸科と同じ屋根の下で試験研究ができることになりました。
 新しい試験場は総面横28.68haで、水田区域14.20ha、畑区域9.65ha、庁舎・施設用地に4.83haを当てています。施設の設計は旧庁含の機能を改築整備する基本方針で行われましたが、その整備水準は目を見張るものがあります。例えぱ、温室は2棟平方メートルであったものがバイオテクノロジー棟を付属させて9棟2,147平方メートルに、庁舎は1,339平方メートルが2,803平方メートルと2倍強になっています。また、開かれた試験場を象徴する施設として開放実験室が新設されています。
 作業室関係では、これまでは小規模の施設が散在していましたが、比布では1棟約900平方メートルの作業棟4棟に集約して機能の充実と美観にも配慮しています。圃場関係の整備として、水田ではパイプラインと自動給水栓の導入、車輌の走行が可能な畦畔、冷水田13筆1.17ha、電力ボスト3基、畑では畑地かんがい用給水栓24基、水分制御が可能な精密枠試験圃、電力ボスト2基、圃場内休憩室2室等の設置を行っています。

(上川農試)

研究の展望

北海道の米と世界の食糧はどこかでつながっている!?

   米をめぐる情勢と北海道の稲作
 現在、北海道には24万haの水田面積、18万ha近くの水稲作付面積、約80万t/年の収穫量によって、都道府県別では全国一の米産地が形成されています。
 平成5年冷害による米不足によって、今まさに230万tという戦後最大の米輸入作戦が展開中であります。一方では、北海道で約3万ha、全国で約80万haの復田事業も府県では順調ではないようですが進行中であります。さらに、ウルグァイラウンドの農業合意に基づき、農産物輸入自由化の一環として、ミニマムアクセスによる外国産米の日本への輸入が1年後に始まろうとしております。
 貿易自由化の進展により、近ごろは自動車輸出入の逆転攻勢で日本車もやや苦戦を強いられているようです。農産物の白由化品目も年々増加して、お米についても中国、オーストラリア、タイ、USAなどの水田に良質のジャボニカ品種をどれくらい栽培できるか、それをいかにして日本に売り込むことができるか、といったことが現実に取り沙汰されている様でありますし、7年後にはその圧力がさらに一層強まろうとしております。
 国内においては、「あきたこまち」、「ひとめぽれ」、「ユメヒカリ」、「どまんなか」、「ふ系159号」など、新品種の開発が急速に進み、全国的な米の食味品質の水準は著しく向上しております。その結果、北海道を除く鹿児島から青森までの各県においては、極良食味のAランク品種の栽培が可能となってきております。そのような産地においては品質面から外国産米に対処する方策を一応備えることが出来たと言えるでしょう。
 このような内外の激しい産地間競争の大きな流れの中で将来を展望するとき、本道の稲作は「きらら397」の安定生産、安定供給を柱としながらも、Bランクに甘んじている北海道産米の食味水準を心配される向きも出始めております。さらに、高齢化と後継者不足、農村の過疎化と労働力不足など、生産構造の難問題も抱えております。また北海道と東北地方を突然眠りをさますように襲った平成5年の大冷害は記憶に新しいところでありますが、米産地を自負する寒冷地農業の不安定さは、100年あるいは、50年に一度とはいえ食生活を直撃することを実感させられる機会となりました。
 しかしながら、環境保全の面から水田機能の活用がクローズアップされ、水田自体についての農地保全、環境保全の効果も再認識されるようになり、化学肥科、農薬、除草剤の適正な位置づけによって低農薬栽培を柱とした環境保全型稲作が長期的に展望され自然と動植物や我々人類の食生活と生活環境の維持、保全の役割も明らかにされつつあります。

   技術開発の現状と展望
 最近の稲作新技術の開発はめざましいものがあります。機械化一貫稲作作業体系と除草体系が確立され、稲作農家は田植、稲刈り、除草作業などの重労働から解放されました。直播用品種「きたいぶき」の育成と湛水直播栽培基準の設定により直播栽培の普及も年々進んでおります。病害虫防除法が確立され、いもち病や害虫による被害は激減しております。合理的な水管理、土壌管理、施肥管理も確立され、生産力の向上と安定化と産米の良質化はめざましく進んでおります。現在、米の単収は府県並みの500kg/10a水準に到達しております。とくに、”量”から”質”への時代転換に対応して、食味の理化学的特性による選抜や葯培養などの新育種法に支えられた多くの良質、良食味、耐冷性品種の劇的な開発によって、「ゆきひかり」「きらら397」「空育139号」などの「おいしい米」が次々と育成され、生産・流通の一体となった稲作振興策にも支えられ、「安さ」も兼ね備えた北海道のブランド米を府県の広範囲の消費地に安心して提供できるようになっております。
 今後の本道の稲作技術の改善については、これらの成果を土台として「ササニシキ」「コシヒカリ」級を目標にした「極良食味米品種の早期開発」をはじめ、「北海道米の食味向上技術の開発」、嗜好の多様化と用途の拡大に対応するもち米、酒米、加工米などの「米の高度利用技術開発」、さらには加工利用特性を備えた「超多収品種の開発」加えて重点課題である「直播用品種の早期開発」並びに「直播栽培法と不耕起移植栽培法の確立」など超省力化をめざした「低コスト米生産総合技術開発特別事業」などを推進するとともに、平成5年冷害のような大凶作克服の展望を持ち、「耐冷性品種開発と「不稔発生軽減技術開発」を柱とした「耐冷性向上生産技術早期開発」にも取り組み、日本の食糧基地をめざした生産安定、コスト低減、生態系保全などを合わせ持った総合的な技術体系の構築が不可欠となっております。
 これらの研究課題は時代の要請からすると、いずれも緊急、重要な課題であり、稲作に関連する多くの支持、支援部門の協力によるプロジェクト研究として展開され、2l世紀の食糧基地、北海道の稲作を支える新技術体系の展望を切り開き、日本の食糧のみならず地球上の食糧生産にも寄与し、自然環境の破壊をくい止め、農産物を含めた貿易の自由化の流れに対しても、必ずや効果的な回答を堤供してくれるものと期待しておりす。上川農試の移転、整備も一つの契機とし、今後とも皆様方のご支援をよろしくお願いいたします。

(中央農試稲作部長)


ハーグレス

海外遺伝資源収集について

 道立農試が行っている海外での遺伝資源の探索・導入は、植物遺伝資源開発研究の一環として、昭和60年に開始されました。その目的は、バイオテクノロジーなど先端技術の進歩により、利用の拡大が期待される遺伝資源を確保しておくことにあります。
 収集対象作物は北海道で栽培されている水稲、畑作物、園芸作物、牧草などが中心ですが、国のジーンバンク事業との連携から広く北方圏の植物も対象となっています。収集派遣は、年次計画に基づき各年度2~3隊で、収集対象作物の在来種や近縁種などが分布していると思われる世界各地です。
 昭和60年~平成5年の9年間で、道単・豆基等を含めて23隊が派遣され、約90作物2,800点の遺伝資源が収集されています。こうして収集された遺伝資源は、体系的に同じ開発研究として、各作物の育成場や植物遺伝資源センターで特性調査・増殖が行われ、種子は主に同センターの低温貯蔵庫に、また栄養体は圃場や温室で保存され、必要に応じて品種育成に利用されています。
 近年、世界的に栽培されてきた農作物の品種が育成種に置き代わったり、環境の変化などにより在来種等が急速に消失していることから遺伝資源を速やかに収集、保存することが重要で、日本も加盟している国際的な専門機関である国際植物遺伝資源委員会(IBPGR)の活躍の一端を担うものと言えます。

(企画情報室調整課)

ハイテクNow

ガスクロマトグラフ質量分析計

ガスクロマトグラフ質量分析計  作物の病害虫防除および除草に使用される登録農薬は400種類に及び、北海道でも大半の農薬が、農作物病害虫防除基準・除草剤使用基準に基づき使用されています。したがって、農薬取締法・環境基本法・食品衛生法に則り、土壌・作物の残留農薬や農業用排水・雨水など環境中農薬を分析する場合、同時に多数の成分を測定することが必要となります。
 農薬はその成分ごとに、特有の質量スペクトルを持っています。質量スペクトルは成分(有機化合物)の分子量と化学構造の特徴を示す化学的指標で、おおよそ1ng(10億分の1g)でその化合物が何であるかを判定することができます。
 ガスクロマトグラフ質量分析計は、この質量スペクトルを測定する質量分析計に、試科中に含まれる多数の成分を分離するガスクロマトグラフが接続した装置です。様々な物質が存在する試科から農薬だけを標的にすることで、非常に高精度で高感度の分析が可能となっています。この装置は農薬分析のほか、昆虫フェロモンの測定・解析に利用されていますが、今後は農産物の品質やアレロパシー等の研究にも利用されていくと思われます

(中央農試環境化学部)


研究の成果

イチゴ萎黄病・萎凋病防除対策試験

クロルピクリン錠剤によるイチゴ萎黄病防除試験  イチゴ萎黄病・萎凋病の菌同定、発生実態、発病推移を明らかにし、防除対策を確立しました。防除対策として、大陽熱利用に当たっての有効日照時問を、薬剤利用ではダゾメット剤、クロルピクリン剤の効果が高く、特にクロルピクリン剤の安定的効果を発揮させる簡便、経済的な処理法を明らかにしました。
 また、萎黄病・萎凋病に抵抗性のいちご品種を明らかにするとともに、宝交早生の実生から(両病害に)強抵抗性の系統を選抜しました。これらの成果によって、産地での高品質いちごの安定生産が図られるほか、抵抗性のいちご新品種の育成が期待されます

(道南農試)




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