No.21 1994.10.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

水稲新種品「空育139号」と側条施肥

各品種の精米  「空育139号」は「きらら397」と「空育125号」を交配して、「きらら397」の早生化を図った品種です。
 「おいしい・安い米」として全国的な評価を得ている「きらら397」は、耐冷性が「ゆきひかり」より弱く、熟期も遅いため道北部などでは栽培が難しい品種です。このような「きらら397」の弱点を補う目的で育成されたのが「空育139号」です。
 平成5年に優良品種に登録され、平成6年から一般栽培されています。熟期は「きらら397」より1週間ほど早く、耐冷性も強く、食味は「きらら397」に優るとも劣らない良食味品種です。「空育125号」などに代えて普及される予定です。
 しかし、「空育139号」は短稈でやや低収という欠点があります。そこで、側条施肥により初期生育を促進させ、幼穂形成期の茎数を増加させると収量が向上することを明らかにしました。
 「空育139号」はこれらの対策を立てれば気象条件の厳しい地帯の基幹品種となります。また、道央部では冷害回避策としての熟期配分の面で重要な役割を担う品種として大きな期待が寄せられています。

(中央農試 稲作部)

研究の展望

道立農試における病害虫研究について

 北海道農業の歴史は度重なる冷書や病害虫、雑草との戦いであったと云っても過言でない。道立農試の病害虫関係職員は一丸となって、それぞれの時代の要請に応じて病害虫防除の技術開発に邁進してきたところである。とくに、戦後急速に発達してきた農薬の研究開発と相まって、かつて大被害を与えていた病害虫、例えば水稲のいもち病、馬鹿苗病、ドロオイムシ、ヒメトビウンカ、カメムシなど、畑作物では小麦の雪腐病やさび病、てん菜の褐斑病やナストビハムシ、馬鈴しょの疫病、豆類の菌核病、かさ枯病など、それらの防除法は飛躍的な進歩を遂げ、北海道農業の生産性の安定、向上に大きく貢献してきた。
 今日では、難防除病害虫といわれる馬鈴しょのそうか病やジャガイモシストセンチュウなどの土壌病害虫のほか、細菌性病害、あるいは薬剤抵抗性病害虫などを除く、病害虫の多くは化学的防除法や耕種的防除法を適切に組合せることによって、被害はある程度回避できるまでになってきた。しかしながら、1977年以降水田利用再編対策が強力に推進され、水田地帯に転換畑が急増した。以来、水田地帯に畑作物や野菜類が広く栽培されるようになった。また施設ハウスや農業用ビニール資材などの普及により、果菜類や花き類の栽培面積も拡大の一途を辿っている。一方、畑作地帯でも各種野菜が栽培されるようになり、水田及び畑作地帯の圃場環境は大きく変わりつつある。この現象は病害虫の発生相にも影響が及んでいる。農業改良普及所および民間団体などから依頼される病害虫の診断件数が最近著しく増えており、年平均約1,000件にも達している。その内訳をみると、野菜類が全体の50%(492件)を占め、次いで畑作物22%(2l6件)、花木l4%(134件)の順に多く、野菜、花き類での増加が著しい。また、最近5か年(1989~93年)間で新たに発生確認された病害虫が78種類(病害40種、害虫38種)に及び、従来発生していなかったか、あるいは発生しても被害が少なく注目されていなかった病害虫が環境の変化により新たに問題になってきたものも少なくない。
 道立農試の病害虫研究部門で取り上げている試験研究課題も激動する農業情勢と無縁ではない。農業生産現場から求められている多くの問題を解決するため、試験研究に日夜精励努力致しているところである。
 当部門は現在中央農試(稲作部含む)のほか、道南、上川、十勝、北見の各農試と病害虫防除所にそれぞれ優秀な研究職員(総勢34名)を配置、各場所を拠点に場間の連携を図り、広く道内における主要な病害虫の問題に対応できる研究体制を取っている。
 最近の主要な研究成果を記すと、
(1)難防除土壌病害虫の防除技術として、①野菜(根菜類)の線虫密度を低下さぜるのにエンバク(へイオーツ)が対抗植物として有効であることと、根菜類の栽培の可否を新たに設定した被害許容線虫密度から事前に判定が可能となった。②施設栽培で問題となっているサツマイモネコブセンチュウの防除対策としてステビアが対抗植物として極めて有効であること、③いちごの、難防除土壌病害である萎黄病と萎ちょう病の防除技術を確立するとともに、抵抗性の実生系統を選抜して、両病害に抵抗性の品種育成に新たな道を開いた。
(2)クリーン農業技術関連では、①馬鈴しょ疫病の発生予察システムを確立して、第1回目の予防散布を的確、かつ効率的に実施することを可能にした。②ヒメトビウンカの発生時期・発生量を予測するシミュレーションを開発し、防除要否や時期の判定を可能にした。③キュウリ、ハクサイの細菌病防除に人畜無害の酸性水溶液散布の画期的な新防除法を開発し、④キャベツの食葉性害虫の防除適期決定のための要防除水準を設定した。
(3)生物防除関連では、難防除とされてきたてん菜そう根病に対して弱毒ウィルスの作出・利用に成功し、生物防除の可能性を大きく前進させた。これら成果は全て北海道の農業技術として普及に移されているところである。
 最近の社会情勢は、ガット受け入れに伴う農産物の貿易自由化、消費者二ーズの高品質で安全、低コスト農産物指向への高まり、産地間競争の激化、就労者の老齢化等々、国内外を問わず非常に厳しい状況にある。生産現場からは、これら社会情勢を背景に病害虫防除の省力化、発生予察精度の向上、連作障害の原因究明とその対策、環境に優しい安全な生物的防除法の開発など多岐にわたる要望が出されている。
 病虫部門としては、北海道農業の生産力の安定、向上を図る上でこれら要望事項はいずれも重要な課題と認識している。それ故、可能な限り研究課題化に努めているところである。近年、課題化した主なものを示すと、難防除土壌病害の馬鈴しょそうか病の総合防除法の開発(1994年)、薬剤抵抗性病害虫の小麦うどんこ病(1992年)、ホウレンソウべと病(1994年)の防除技術の確立、生物防除を対象とした性フェロモン利用による新防除技術の開発(1993年)、卵寄生蜂を利用したヨトウガの天敵防除の確立(1994年)、発生予察システムの開発を目的とした大豆わい化病の被害予測と防除対策の確立(1993年)などである。なかでも、馬鈴しょのそうか病に関する研究は、道立農試ではかつて例を見ない3農試(十勝・北見・中央)、3部門にまたがる研究体制を組織して研究を開始したところである。病虫部門では、今後とも北海道の基幹作物、地域特産作物を中心とした病害虫防除、とくに、難防除とされている土壌病害虫の発生生態解明と防除対策、薬剤抵抗性病害虫の発現機作解明、要防除水準の設定と発生予測システムの開発、生物的防除技術の開発など、一部研究に着手している課題もあるが、研究内容の一層の充実、強化を図る。また必要に応じ作物育種、土壌肥料など他部門との連携を図るなど、21世紀における北海道農業の発展に貢献できる病害虫防除技術の開発研究に邁進する所存である。

(中央農試 病虫部長)


ハーグレス

海外研修について

 道では、職員の国際的視野を広め、資質の向上を図るとともに、道行政の効率的な運営に資することを目的して外国への派遣研修を行っています。
 これらの制度の中で試験研究機関の研究員が対象となるものは、自治研修所が所管する「北海道職員外国派遣研修(研究職、技術職)(以下、派遣研修と略す)」と企画振興部が所管する「長期海外研究事業・海外技術導入促進事業(長期研究・技術導入)」があります。
 派遣研修は期間が2ヶ月以内で行政制度や試験研究、医療等の分野における専門的な知識、技術等の習得および調査研究を目的としており、長期研究(6ヶ月以上1年以内)・技術導入(二つ以上の研究機関で編成、1ヶ月以内)は、先進的創造的研究能力の開発や導入を行おうとするものです。
 毎年の派遣者数は、農業(畜産)試験場の場合、派遣研修が2~3名、長期研究・技術導入が1~2名で、最近10年(昭和60年度~平成6年度)の派遣実績総数は32名となっています。
 派遣者の決定は、各々の実施要領によりますが、農業(畜産)試験場内では推薦方法についての内規によって候補者を選定し、中央農試場長が農政部長へ推薦するという手順をとっています。なお、この内規は、これら海外研修を含め種々の事業で農畜試職員が海外へ派遣される機会の公平化と調整を図る目的で平成3年度場長会議において決定(その後一部修正)されたものです。特にこの内規では派遣先での研修の円滑化と効率化を期するため候補者は、実用英語検定資格2級以上を有することを必須としており、積極的に資格を取得することが望まれます。
 農業分野でもバイオテクノロジー等の技術進歩は速いことから、最新の技術や情報をいち早く取り入れるためには、研究員は意欲的にこうした機会を生かして専門知識や研究能力を向上させるとともに、道立農畜試としても諸外国の研究者、研究機関との連携を強めるように努めることが重要と思われます。

(中央農試 企画情報室調整課)

ハイテクNow

味度メーター

味度メーターによる食味測定  北海道産米は「きらら397」、「ゆきひかり」に代表される良食味米品種が開発され、多くの消費者からご理解をいただくようになりました。しかし、ガット農業合意による国際化や、産地間競争の激化などに対応するため、さらなる食味向上が強く求められております。そこで、これまで進めてきたアミロースや蛋白による成分育種から、ご飯の「なめらかさ」、「艶」に重点を置いた「照りと輝き」の強い新品種を作出するべく、「味度メーター」を導入いたしました。この機器はご飯の表面における微妙な凹凸面と艶をきめる「保水膜」の量と性質を測定し、マイクロコンピュータで人が感ずる食味評価値として表示します。これまで実現できなかった「炊飯→計測→演算→表示」をハイテク活用によって実現しております。分析には白米33g、一日で約150点もの分析が可能です。
 導入に当たっては品種改良に有効であるかどうかを検討しており、それによると食味選抜にきわめて効果的であり良食味のスクリーニングが期待きれます。本年度から、これを活用した良食味品種の育種が展開されようとしております。

(上川農試・中央農試稲作部)


研究の成果

良食味維持のための米貯蔵・輸送法

雪氷室型貯蔵庫への雪の入庫作業  ”安くておいしい米”という評価を得つつある北海道米を、消費者に良食味を維持しつつ安定供給することは大変重要な課題です。
 従来より、米の貯蔵は常温あるいは低温倉庫(庫内を15℃以下に制御)で行われていましたが、良食味維持にとって、0~5℃での貯蔵の方がそれらより勝っていることが明らかとなりました。
 又、0~5℃の庫内温度を保つ貯蔵庫として、氷雪を利用した「雪氷室型貯蔵庫」、「人工永久凍土低温貯蔵庫」が利用可能であり、貯蔵米の食味も低温貯蔵庫より良い傾向を示しました。

(中央農試 農産化学部)




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