No.25 1996.3.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

ごぼう収穫機の開発

ごぼう収穫機による収穫作業  北海道の良質ごぼうは、市場からも高い評価を得ています。しかし、収穫作業はもっぱら人手で行われており、高齢化と労働力不足が進み、栽培面積の維持拡大が困難となっています。そこで、軽労働化と省力化のため「ごぼう収穫機」を開発しました。抜き上げからコンテナに収納するまでの作業を機械化したものです。
 収穫機を使う前に、あらかじめ、ごぼうリフタやごぼうプラウでごぼうの項部を地上に露出させておきます。収穫機はトラクタ直装型で、まずごぼうの上部を左右からベルトで挟んで抜き上げます。次いで、後方に送られたごぼうを作業台に乗った補助者が、積載している大型コンテナヘ収納します。
 作業速度は0.20~0.25m/sで、抜き残し損失は3%程度です。作業能率は、前作業によって異なり、ごぼうリフタ作業後が5.3a/h、ごぼうプラウ作業後が3.8a/hです。茎葉処埋作業以降の10a当り収穫労働時間で見ますと、従来の人力収穫作業の20~23人・時110aに対して収穫機利用が6.3~10.3人・時110aと1/3~1/2程度に減らすことができました。収穫機に乗った作業者の心拍数増加率は18%程度であり、手収穫作業の1/4で、軽作業レベル(増加率25%)以下です。きつい作業から解放され長時間就労も可能となります。

(十勝農試)

研究の展望

中央農試の苦悩

「道立中央農試は何の試験研究をしているのですか、またどのような業務を担っているのですか」。この1年ほどの間に何度か受けた質問であるが、これまで流暢に答えられたことがない。12の研究分野、25の研究科、企画情報室、専技室に、総務部を加えて、総職員数165人、臨時職員も70(冬期)~120(夏期)人と、中央農試は巨大な試験場である。道央5支庁の地域対応、分野によっては全道対応、さらに生物工学部に代表される基礎研究も大きなウェィトを占めており、守備範囲は分野でも地域でも非常に広く、研究科の分担や特色が曖昧なところもないわけではない。研究部長はそれぞれの分野の全道調整という重責を担って常に多忙である。当然のことながら難問、難題も多い。だから、中央農試には顔色の良い研究部長は少ない。部長だけが苦悩していて、主研、科長、研究員が優雅な心境で研究に没頭できているかというとそうではない。全道から集まる試験会議は専門部長が主査であり、その準備、運営に振り回される。研究科は事務局を務め、また在札幌の関係機関、会社等との連絡や協議の窓口ともなり、雑務が多く不平不満も言いたくなってくる。中央農試で大変残念なことの一つに、試験圃場(畑)が、試験精度の点からも、また管理効率の面からも大変悪いということがある。30年の歴史の間に何度も改良を試みたが決定打にはなっていない。研究基本計画検討の折、私は畑作部の岩見沢市上幌向(稲作部内)への移転を主張したが実現しなかった。若い研究員が、あり方については研究基本計画でも検討され、花・野菜センターおよび畜産研究再編の検討の中でも取り上げられた。まだ具体的な方向は示されていないが、10場の中でのあり方、関係機関とのあり方も含めて、現行のシステムでは困難になってきている。農試全職員が英知を出し合うとともに広く意見を求め、21世紀に向けて再構築したいものである。
 花・野菜枝術センターの4月開設に向けて、備品、消耗品の購入手続き、維持費、委託料、賃金の精算等平成7年度の総務課も毎日夜遅くまで大忙しであった。いやまだ進行形である。少し雨が降ると畑全体がぬかるみになってしまう試験圃場を相手にして管理科も苦労している。このような中央農試の今年の仕事始めのあいさつで、私は次のようなことをお願いした。中央農試の苦悩が少しでも和らげられることと、この職場で働くことへの情熱がいくばくなりとも高まることを期待して、また、それをここに書くことによって中央農試に対し、諸々の思いを抱いている方々の理解を少しでも深めるために。

  • 中央農試がどうあるべきか、改善すべき点は何かをみんなで議論しよう。
  • ポスト基本計画に向けて、自分達のあるべき姿を厳しい視点で考えよう。
  • 地域への気配りを大切にし、技術支援に積極的に対応しよう。
  • 農試内の気配りを大切にし、研究科、総務課、管理科、臨職がそれぞれの立場をよく理解し、良い職場環境と良い人間関係をつくろう。
  • 道職員不正問題については農試は完壁、非の打ち所がないようにしよう。
  • 花・野菜技術センター開設、畜産研究再編検討、成績会議準備への協力、健康管理、事故防止。
等の項目について述べ、さらに若手研究員への期待として次のような考えを述べた。
  1. 新しい未知の課題、分野、研究機器等に積極的に挑戦してもらいたい。国内、国外の研修にも積極的に参加してもらいたいし、上司にはそのような環境づくりに配慮して欲しい。
  2. 広い試験圃場、多数の供試材料や標本は大学にない農試の武器である。圃場、作物の観察を時間の推移を含めて重要視し、新しい発見、正しい判断をしてもらいたい。
  3. 書くことに刀を入れてもらいたい。学会誌へ論文を投稿するような場合ばかりでなく成績をまとめる時や、雑誌等への原稿を書くことは自分自身がふだん言葉で表現していたり、考えていたことの妥当性や問題点等を明白にすることができ、次の発展に役立つ。
  4. 上司や固僚との会話は知識を得るための最も効率的な情報交換の手段であり、科内の十分な会話と意思の疎通はチームワークの重要な条件である。
  5. 科長は必ずしも若い人とはいい難いが、道立農試研究体制の中で、試験研究遂行の面で科長は最も重要な立場にあり、成果が上るか否かのカギは科長が握っているといっても過言ではない。また新人研究員が成長するか否かは最初に出会った科長で決まるとも言える。会話、議論を徹底的に行い、納得し、最大限の情熱を傾けて研究に取り組めるような環境をつくってもらいたい。

 良き会話をし、いい課題に取り組み、チームワーク良く若手研究員が生き生きとした顔で仕事をしている姿をみることができれば、周囲の人々の苦悩も半減するであろうと期待する次第である。

(中央農業試験場場長)


ハーグレス

中央農業技術情報センター

 平成4年6月に中央農業技術情報センターは設置されました。それまでは道立農業試験場と農業改良普及組織は、それぞれ個別の情報システムを構築して運営していました。しかし、高度な営農技術情報を迅速かつ正確に生産現場に提供するとともに、生産現場における問題点や研究二一ズをいち早く知る体制が求められていたことから、2つを統合化して総合的な農業技術情報システムとすることとし、その管理運営を中央農業技術情報センターが担うことになりました。
 ただし、この情報センターは定められた人員が配置される組織規則上の組織ではなく、企画情報室情報課と中央専門技術員室の情報担当専門技術員がそれぞれの立場から業務を分担して機能する組織となっています。運営管理の責任者は副場長があたり、情報課が研究情報を、専門技術員が普及情報に関わる部分を担当し、センターの事務局は情報課に置かれています。
 中央農試、農業改良課、防除所および石狩・空知の2普及センターの代表者をメンパーとする運営委員会およひ運営協議会で情報センターの整備、運営、事業計画に関する事項を協議・決定しています。
 現在、情報センターでは北海道農業試験研究情報システム(HARlS)と北海道農業技術通信(ACEnet)の二つの情報ネットワークを管理運営して、研究活動や普及活動の支援と生産現場との情報交換に役立てています。
 本道農業が競争力のある安定した農業生産を進めていくために、情報分野からのいっそうの支援が期待されています。

(企画情報室情報課)


ハイテクNow

電気泳動装置

電気泳動装置  中央農試では、平成4年度より春播小麦の品種改良を始めました。北海道の春播小麦は、子実のタンパク特性から、パン用としては国産麦の中で上位に位置しています。しかし輸入麦と比べるとタンパクの量、質ともさらに改良しなければなりません。
 「電気泳動」はタンパクなどを分子の大きさや荷電で分離する方法の一つです。小麦粉にはいくつかの異なった性質のタンパクが含まれており、これらが水と一緒にこねられることにより、小麦特有の「グルテン」といわれる構造をつくります。電気泳動による小麦のタンパク組成の分析は、この15年ほどで大きく進歩し、グルテンを形作るタンパクの中からパンの体積やパン生地の性質に影響を与えるものが少しずつ解ってきました。
 今回導入した「電気泳動装置」は、煩雑であった操作を大幅に簡略化・高速化したもので、この装置の利用により良質といわれるタンパクをもつ系統を簡易に選抜することができ、春播小麦の高品質育種に大きなカとなるものです。

(中央農試)


研究の成果

道央地域における芝草の用途別利用技術

草種選定試験圃場  芝生は身近な緑の資源として、庭園や家庭等の鑑賞芝、公園・キャンプ場・競技場等の利用芝、河川敷や道路のり面等の保護芝、そしてゴルフ場まで人間生活に深く結びつきつつ広い用途があります。ところが、芝草の利用実態をしらべるにつれ、にぎやかな話題に事欠かないこの分野が実は意外なほど少ない技術情報に頼っていることがわかりました。そこで、滝川畜試では道央地城91カ所の芝生を調査し、利用状況と利用上の問題点を明らかにしました。そのうえで、12草種、118品種の寒地型芝草の道央地域における適応性を調査し、各草種の長所、短所およぴ品種選定のポイントを示し、ケンタッキープルーグラスとベントグラスあるいはペレニアルライグラスの混播組み合わせが、スタンドの確立が早く、永続性が高くて鑑賞芝や利用芝に適していることを明らかにしました。

(滝川畜試)




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