No.27 1996.11.29

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

花・野菜技術センター誕生

1圃場および施設群  1996年4月、花と野菜に関する総合的な研究機関として北海道立花・野菜技術センターがオープンしました。 本センターは花き、野菜、土壌肥料および病虫セクションからなる研究部門、専門技術員による普及部門、さらに改良普及員や市町村、農協などの指導者、生産者等を対象とした研修事業部門の3つの柱からなっています。このように一体化された組織は道立農試としては初めてのものです。  本センターは北海道のほぼ真ん中に位置する滝川市にあり、道立滝川畜産試験場に隣接した、自然に囲まれた閑静な環境下にありますが、研究庁舎や施設群はモダンで最新鋭の設備を有しております。  敷地総面積は36.3haで、試験・展示・研修圃場26.7ha、ハウス・枠圃場4.3ha、建物敷地3.7ha、道路1.6haとなっています。圃場は基盤整備と客土によって栽培しやすい土壌に改善されており、1筆60a の圃場にはそれぞれ灌水施設が導入されています。  施設は調査棟、保鮮実験棟、温室のほかに、細密な栽培実験を行う環境制御温室、人工気象室やミスト室などがあります。また、研究庁舎に付随して展示温室があり、訪れた人々の眼を楽しませるべく、1年を通して花・野菜を栽培します。研修関係では、研修生が実習する圃場や温室が設置されており、宿泊施設としてミニ体育館が付属した、30の個室を持つ研修寮が準備されています。また、消費者の理解が深まるよう、市民を対象にしたフラワースクールなどの実施も予定しています。  8月30日開設記念式、9月6日公開デーといった公式行事を無事終え、見学者の受け入れを行っていますが、予想を上回る多くの方々が訪れており、当センターにたいする期待の大きさを感じています。  研究、普及、研修という柱のいずれかがかけても本センターの機能が失われるものであり、相互に補完し合いながら効率的な運営を行い、北海道の花、野菜技術の情報発信地を目指します。




道立農試における農業土木研究について

~自然環境と調和した農業基盤づくりを目指して~

  1. 最近の農業を取り巻く情勢
     今日の日本農業は、外的にはガット・ウルグァイ・ラウンド後の農畜産物輸入枠の拡大に伴う生産物価格の低迷、内的には深刻化する担い手不足・高齢化・過疎化が大きな社会的問題となっています。  一方、1992年に策定された新農政プランにも示されているように、これからの農業・農村の役割も従来のような作物生産一辺倒から脱却し、環境保全・自然生態系の維持に配慮しながら人々の潤いと安らぎに満ちた憩いの場としても見直されなければなりません。  このような背景から、新しい時代に求められる農業基盤づくりには、従来にも増した高度な低コスト・高品質化可能な各種生産技術の開発は勿論のこと、21世紀の我国の食料生産を担う若者が将来の夢をもって積極的に参画できる魅力ある農業生産構造の再構築が必要となっています。
  2. 農業土木部設立の経過と試験研究の概要
     当部は、1986年4月に本道農業の将来に即した生産基盤の改善や整備技術等に関する試験研究を実施する目的で「農業土木研究室」として設置されました。さらに、1992年には新に農村環境の改善及び景観整備に関する試験研究が必要になり、7名・2科体制(生産基盤科、農村環境科)の「農業土木部」に組織再編されました。試験研究課題の設定に当たっては、21世紀に向けた農業生産目標並びに農業・農村の環境整備に向けた課題を優先して設定しています。具体的には、生産基盤の面では大区画水田における稲作生産の省力・低コスト化、花き導入のための高水準生産基盤の短期造成法の基準策定、クリ-ン農業実現のための生物機能強化を図った生産基盤造成技術の開発、また環境保全面では家畜糞尿処理についても他部門と連携して試験を行なっております。さらに、農村環境に関しては美しい景観の形成と潤いと安らぎに満ちた農村空間を創出するため、生態系に配慮した排水路の整備手法の開発等身近な問題から取り組んでいます。
  3. 試験研究及び研究成果の内容紹介
     [水田関係]:  低コスト・省力水稲栽培の一環として、浅耕無代かき移植・表層砕土同時移植・不耕起移植各栽培法に対応した適地土壌条件の目安を策定しました。また、大区画水田関係では、省力的用水管理システムの開発並びに機械科作業体系に対応した適切な区画規模を検討するとともに、栽培上の問題点・経済効果等についても他部門と共同で検討しています。  [水田転換畑関係]:  グライ土及び褐色低地土転換畑において、土壌型別の花き導入のための高水準生産基盤の短期造成法について、暗渠・有材心土改良耕・客土混層耕など土壌物理的環境の改善を中心に試験しています。さらに、現地実態調査結果を整理して花き栽培圃場の土壌物理性診断基準についても併せて検討しています。  [畑地関係]:  露地野菜畑のかんがい技術の確立について全道的な試験を行なっています。また、試験場・専門技術員・道農政部の関係者で畑地かんがい技術検討部会を設置し、地域別の土壌・気象条件をマップ化するなど過去に行なわれた試験成果等も整理して各作物ごとのかん水マニュアルを今年度中に作成し、農業試験会議に提出することにしています。  [クリーン農業関係]:  圃場の透排水性改善のため、カラマツチップ材の暗渠疎水材への適応性について検討し、カラマツチップは籾殻に比べて粗大間隙が多く、透水性・圧縮性・耐久性の面でも勝れており、今後暗渠疎水材として十分適用可能な資材であることが明らかにされました。この工法は、すでに現地で普及に移されされており、排水効果の高いことが各地で実証されています。さらに、家畜糞尿(スラリ-)の圃場表面散布及びスラリ-サブソイラ-を用いた下層施用についても環境保全・作物生育に及ぼす影響の両面から検討しています。  [農村環境関係]:  自然生態系と調和した環境整備手法の開発の中では、生物や環境にやさしい生態系に配慮した排水路の整備計画手法について検討しています。また、水質浄化手法についても植生・礫間浄化機能を用いての定量化等の予備調査を計画しており、将来的には農村地域内における環境負荷軽減に向けた農業土木的な役割についての具体的な指針を策定する予定です。
  4. 試験研究の現状と将来に向けて
     農業土木部における試験研究の究極的な目標は、「恵まれた北海道の自然立地条件と共存しながら、環境と人と作物にやさしい農業生産基盤や農村景観を創出し、豊かで美しく潤いと安らぎに満ちた農業・農村環境を次世代に引き渡すこと」です。現在行なっている試験の中から主要な研究課題を整理して以下に示しました。 1)大区画水田における稲作生産の省力・低コスト化  1大区画水田における機械化営農体系の指針策定  2良質安定化のための省力水管理システムの確立  3寒地大区画水田における水稲省力・安定生産の確立 2)クリ-ン農業実現のための生産基盤造成技術の開発  1持続的高生産基盤整備技術確立調査  2低コスト糞尿処理技術の開発  3クリ-ン農業導入のための持続的高生産基盤造成手法の開発 3)畑地かんがい技術の確立と高度化  1露地野菜畑におけるかんがい技術の確立 4)用排水組織管理システムの開発  1花き導入のための高水準転換畑の短期造成法並びに基準策定 5)新土地改良技術の開発  1土層リフレッシュ技術の確立  2北海道における高度排水改良法の開発と基準策定 6)自然生態系と調和した環境整備技術の開発  1生態系に配慮した排水路の整備計画手法の開発  2農村地帯における河畔環境の再生に関する研究

    (農業土木部長 前田 要)



地域農業技術センター連絡会議

NATEC(Network of Agricultural TEchnology Center)

 現在、市町村や農協等が設置する地域農業技術センターは、全道で100カ所以上を数え、作物の栽培試験、資材の実証試験、土壌の分析診断、優良種苗の供給、営農情報の提供、各種研修の実施等、地域における技術拠点としての役割を担っていますが、新しい技術や情報の収集、人材の確保や資質向上等の問題を抱えています。  一方、道立農試も、地域からの多様な研究ニーズに応えるため、きめ細かい研究ニーズ調査に基づき、効率的かつ効果的な試験研究の推進に努めていますが、研究予算や組織体制等の面から限界があります。このため、平成6年に地域農業技術センターネットワーク構想の検討を行い、平成7年3月に、主要なセンターの賛同を得て、「地域農業技術センター連絡会議」を設立しました。現在、センター61カ所、道立農試11場、併せて72機関が構成メンバーとなっています。  また、道南、上川、十勝農試管内ではブロック会議が設立され、北見農試管内でも本年中の設立をめざしているなど、ブロック段階での活動も活発化しています。  当面、連絡会議では、センターと道立農試との研究情報の交換が中心となっており、夏冬年2回の研究交流会を開催しています。これからは、情報誌の発刊、共同・連携試験の実施、センター職員を対象とした各種研修の実施等、事業内容の充実が課題となっています。  今後、国内外との産地間競争がますます厳しさを増す中で、地域農業では、生産物の特産化、ブランド化、差別化が大きな課題となっており、地域からの研究ニーズもより多様化、高度化しつつあります。道立農試としても、これまで以上に地域を重視した試験研究に取り組むとともに、連絡会議の活動を通じてセンターの技術力アップを強力に支援していく必要があります。

(調整課)



大豆のアイソザイム分析による遺伝資源評価

北海道で保有している大豆遺伝資源は4,200点以上あり、植物遺伝資源センターではこれら遺伝資源の農業特性を計画的に調査しています。しかし、特性の多くが複合形質で環境変異を伴うため、体系的な分類・区分の難しいことがあります。そこで、農業特性以外による分類、評価法としてアイソザイムに着目しました。アイソザイムとは、同一の機能を持つものの、分子量や電気的性質が異なる酵素群のことで、この性質を利用して電気泳動パターン(ザイモグラム)によって分類するわけです。  発芽2日目の子葉から粗酵素液を抽出し、7種のアイソザイムについて検討しました。その結果、ザイモグラムによる分類は、種子の可視的形質(種皮色、臍色、粒大)による分類と同程度に、実用性をもつと判断されました。ザイモグラム型と種子形質の変異とを組み合わせることよって、さらに細かな分類ができたうえ、かなりの遺伝資源で、栽培して特性調査をしないでも、既知の品種との関連性が推定できました。  道内育成の純系選抜品種親子間におけるザイモグラム型の相同性は酵素によってはやや低いこともありましたが、交配育成品種親子間では比較的高いことが示されました。また、いくつかの酵素でザイモグラム頻度が、北海道産及び道内育成系統と他の地域産、特に外国産との間で異なりました。このことは、分子レベルからも、北海道適応性に関する遺伝変異・分化を示唆しています。有用形質とザイモグラムの関連は有用形質の特性データの蓄積を待って検討したいと考えています。

(植物遺伝資源センター 資源貯蔵科)



コムギ眼紋病の生態解明と防除対策

作物の病害を防除するためには、病原菌の生態(生活の仕方)や被害状況を正しく理解する必要があります。コムギ眼紋病の場合は、二つの大きな特徴があることがわかりました。  一つ目の特徴は、本病が発生していても多発しなければ被害をおよぼさないことです。このため、本病の防除は薬剤に頼らなくとも、3年以上の輪作(発生量によっては交互作も有効)、田畑輪換、夏期10日間以上の湛水処理などの耕種的防除対策と適正な栽培管理を守れば、発病を軽減させ実質的な被害を防ぐことができます。  二つ目の特徴は、ほ場にわずかな病原菌がいるだけで、小麦を栽培すると急激に発病が蔓延することです。上記の方法で発病を軽減させても、春まき小麦を含め小麦を連作すると再び発病が激化しますから、連作を避けることが本病に対する最も基本的な対策となります。また、作業機械を通じて病原菌が簡単に移動するので、複数のほ場を共通の機械で作業する際は、できるだけ多発ほ場の作業を後にするよう計画することも大切なことです。

(中央農試土壌微生物科)



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