平成19年度道立十勝農業試験場公開デー

 十勝農試を、農業者・農業関係者と一般市民の方により身近に知っていただこうと、7月18日(水:午後1時~5時)に十勝農試公開デーを開催いたしました。初めての試みでしたが、200名を越える方々のご参加をいただき本当にありがとうございました。今年の経験をいかして、来年度はより充実した内容にしたいと考えております。来年度もよろしくお願いいたします。

 

〔バイオ燃料に関するシンポジウム〕

 菊地場長が、公開デー開催に当たってご挨拶申し上げるとともに、十勝農試における研究内容と環境保全型農業への取り組みを紹介致しました。

 

 

 初の公開デーの開催に当たり、シンポジウムの場を借りて宮西芽室町長からご挨拶をいただきました。

 

 

講演1 「てんぷら油でエコプロジェクト-てんぷら油が地球を救う!-」

     十勝エネルギーネットワーク 為広正彦氏。

 

 

〔要約〕

1)2000年頃に排水処理会社から依頼があり、3年の準備期間を経て2004年に小型プラントでバイオディーゼル燃料(BDF)製造に取り組み、2005年には実施プラントでのBDF製造と、廃食用油の本格回収を開始した。2005年には、十勝でのBDF事業の可能性調査やBDFに関する普及啓発などを目的とする「十勝エネルギーネットワーク検討会議」を立ち上げた。2007年には、検討会議を母体として十勝地域における新エネルギーの生産・利用システムの構築を目指すNPO法人「十勝エネルギーネットワーク」を設立した。また、BDFの生産・利用を事業として継続的に実施するための組織「(株)エコERC」を設立した。

2)廃てんぷら油からBDFを製造するには、廃てんぷら油にアルコールを加えて化学反応させる。この際、副産物として産出される粗グリセリンの処理、製造途中の排水処理、消防法等の届け出等が必要である。なお、粗グリセリンは肥料の原料としても利用できる。

3)廃てんぷら油を利用するメリットとして、①廃棄されるてんぷら油のリサイクル、②CO2の削減、③自動車排ガスのクリーン化、④生きた環境教育、⑤地域コミュニティーの活性化があげられる。課題は、廃てんぷら油の安定的な回収であり、排出量が少ない家庭(年間約4L)では町内会や地域として回収拠点を設け、排出量の多い事業体ではそれぞれに回収容器を設置するといった取り組みが必要。現在「十勝エネルギーネットワーク」では、更別村の保育所、芽室町役場、帯広市のS企業などに回収容器を設置し、廃てんぷら油を1リットル当たり5円で回収(購入)している。<芽室町の具体的な例を紹介>

4)BDFの生産・利用については国内でも多くの企業や自治体が取り組んでおり、京都市の取り組みは有名である。十勝では、2006年に帯広市で開催された国際農業機械展のシャトルバスでBDFを使用した。

5)BDFを事業として展開するためには、廃てんぷら油のリサイクルだけでは十分ではないため、てんぷら油の原料となるなたねの生産から取り組む必要がある。十勝におけるなたねの栽培については「十勝搾油作物推進協議会」が中心となって栽培試験を行っている。栽培方法にめどがつけば、エコERCは、なたねの栽培、なたね油の製造販売、廃食用油からのBDF製造・販売、これらをもとにした環境教育・産業観光という総合的な事業展開が可能になる。

 

講演2 「バイオ燃料の利用促進-十勝におけるBDFの利用-」

      帯広畜産大学(特任教授) 西崎邦夫氏。

 

 

〔要約〕

1)バイオ燃料が社会的・世界的な問題として取り上げられるようになった背景は、環境-食料-エネルギーのトリレンマ構造にある。すなわち、①穀物のエネルギー向け使用量が急増して食料価格 の上昇(十勝のパン屋さんでも砂糖2割高など、)や、食糧不足による政情不安が懸念されること、②原油が産出国の国家戦略の手段となりつつあり(資源ナショナリズム)、原油価格の高止まりが予想されること、③化石燃料の燃焼によるCO2排出に起因する地球温暖化が深刻な問題となっていること、などの現象が現れている。
 IPCCの第4次報告(2007年2月)では、温暖化の原因は人為的なものである確率が90%を超え、さらに予測上限を超えて海面上昇が観測されるなど、温暖化対策が緊急を要すると指摘している。

2)具体的な温暖化対策としては、エネルギー効率の改善(特に自動車)、火力発電所からのCO2回収、バイオ燃料の利用拡大が期待されている。
 バイオ燃料としては、サトウキビなどをアルコール発酵させて作るバイオエタノール、ふん尿等を嫌気性発酵させて作るバイオガス(畜大でも試験中)、菜種油等にアルコールを加え化学反応させて作るBDFがある。これらのうち、現時点で技術的に普及可能なのはバイオエタノール(ガソリンに直接混合)、ETBE(バイオエタノールとイソブテンを合成し、ガソリンに混合)、及びBDFである。温暖化対策の1つとして位置づけられることから、バイオ燃料に対する需要は急増している。

3)BDFについては、廃食用油の安定的回収、代替利用を前提とした場合の耐寒性確保、法律上の品質確保と実際上の悪影響の回避等の技術的課題がある。十勝で製造したBDFの性能を把握するため、トルク、PTO出力、排気煙濃度、粘度温度特性について試験した結果、通常の軽油に比べほとんど遜色なかった。なお、軽油については、バスや乗用車など道路を使用する場合は軽油引取税(32.1円/L)がかかるが、道路を使用しない船舶や農業機械などには課税されない。

4)バイオエタノールについては、何を原料とするか(ビート、小麦、とうもろこしなど)、食料とのバランスをどう取るか、輸入と国産のバランス、E3(バイオエタノール3%混合)かETBEか、混合率を高めた場合の寒冷地対応、流通インフラの整備、といった課題がある。北海道の小麦とビートの全生産量を原料とすると、小麦から約26万kL、ビートから約37万kL、合計約60万kLのバイオエタノールを生産することが可能である。バイオエタノールの普及を目指して、諸外国では税制上の優遇措置がとられている。具体的には、「直接混合」に対してはブラジル、アメリカ、スウェーデン、「ETBE」に対してはスペイン、ドイツ、フランスで減免措置がとられている。これに対して、現在の日本では「直接混合」、「ETBE」のいずれに対しても優遇措置はない。

5)将来に向けてバイオ燃料を普及させるためには、税制の解決、政府と民間の役割分担、既得権益の打開、エネルギー・食料・環境問題の調和が必要である。同時に、各家庭での省エネ(気遣い、省エネ製品購入、断熱構造)、各個人の省エネライフスタイル(エネルギー、水、浪費、交通)が重要である。

 

〔BDFによるトラクタ運転実演とBDFサンプル展示〕

 BDF燃料のサンプルの説明を受け、手に取ってみる来場者。持っているのはBDFの原料となる廃食用油です。

 

 

 トラクタの排気ガスの臭いが普通の軽油と違うことを確認した来場者もいました。

 

 

〔実験室・温室見学ツアー〕

 豆類低温育種実験室での試験内容の説明を熱心に聞き入っています。

 

 

 菜豆の交配体験は好評でした。

 

 

〔ほ場見学〕

 ほ場見学のバスを待ちながら談笑する来場者の方々です。

 

 

 いざ、ほ場見学へ。

 

 

〔農業技術相談コーナー〕

 農業技術相談コーナーで担当者から説明を熱心に聞く来場者です。

 

 

 顕微鏡で見たことのない世界を覗くことは、子供にとってとても楽しいことのようでした。

 

 

〔試食コーナー〕

 試食品の餡に満足げな来場者です。試食コーナーは好評でした。

 

 

 試食品の原料について熱心に説明を聞く来場者です。

 

 

 試食コーナーに設けたお米と砂糖の消費拡大キャンペーンで、十勝支庁の担当者が来場者に説明しています。

 

 

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