トップ>木に関する情報>林産試だより> | |||||
|
|||||
あなたにもできる?きのこの菌床栽培-家庭で,おが粉を使ったきのこ栽培にチャレンジ!- |
|||||
きのこ部 生産技術科 宜寿次 盛生 |
|||||
はじめにみなさんはきのこ栽培というと,どんなイメージを持つでしょうか?原木(いわゆる丸太)を使った栽培(原木栽培)を想像する方が多いと思います。しかし,現在売られている食用きのこの大半は,おが粉と米ぬかを混ぜた「培地(ばいち)」を使った「菌床栽培(きんしょうさいばい)」で作られています。原木栽培に比べ,菌床栽培はいろいろ難しい点もありますが,短期間で栽培できます。ここでは,著者の家族が実際に家庭でやってみた例を交えて,家庭で楽しみながらできる菌床栽培の方法を紹介します。きのこの種類は,栽培が比較的簡単なヒラタケを使いました。 家庭でできる菌床栽培1)材料の準備菌床栽培に必要な原材料,道具類を表1と写真1に示します。例えば500mlのビンで栽培する場合,ビン1本につきおが粉約400ml,米ぬか約130ml,種菌約20mlが必要となります。圧力鍋の大きさに合わせてビンや原材料を用意します。 |
|||||
![]() |
|||||
![]() ![]() 写真1 原材料と道具 |
|||||
|
|||||
![]() 写真2 培地づくり |
![]() 写真3 培地を詰めたビン |
2)培地の調製とビン詰め(写真2,3) おが粉と米ぬかをカップで量って3:1の割合でボールに入れ,水を少しずつ加えながらよく混ぜて培地を作ります。水の量は,培地を手で強く握った時に指の間からわずかにしみ出る程度とします。できた培地は,ガラスビンの底を床に軽くたたきつけながらビン口いっぱいまで詰め,上面を押し込み平らにします。箸などで種菌を入れるための孔をビン底まで開けて,ビン口はきれいに拭き取って栓をします。ビンに付属のキャップを使う場合は,殺菌後キャップが開けやすいように少しゆるめに閉めます。紙栓の場合は,クラフト紙を適当な大きさに切り,2枚重ねて輪ゴムで留めます。 |
|||
|
|||||
![]() 写真4 栓をしたビンと圧力鍋 |
![]() 写真5 殺菌後の状態 |
3)殺菌と冷却(写真4,5) 圧力鍋の使用法は,取扱説明書に従ってください。鍋に中敷きと水を入れ,培地の入ったビンを入れます。空だきにならないように注意しながら,圧力がかかった状態で30分以上加熱します。火を止め,素手で触れることができる温度になったら,ビンを鍋から取り出して涼しい場所に翌日まで置き,培地を20℃位に冷まします。 |
|||
|
|||||
![]() 写真6 アルコール消毒 |
![]() 写真7 接種1 |
4)種菌の植え付け(接種) 接種(せっしゅ)は本来無菌的に行うものです。家庭で接種を行う場合,ガスコンロ近くで作業を行い,火による上昇気流を利用して,培地の入ったビン内に空気中の菌が落ちるのを防ぎます。雑菌が入らないように手早く行うことが重要です。 ガスコンロ周辺,手,スプーン,種菌ビンをアルコールで拭いて消毒します(写真6)。アルコールは引火しやすいので,取り扱いに注意しましょう。ガスコンロを点火して,スプーンや種菌ビンの口を軽く焼いて,さらに滅菌します。種菌の入っているビンの口が上を向かないように斜めに持って,種菌の上部を3cm 程度の深さまで削り取って捨てます。次にスプーンで種菌を細かく砕いて培地に開けた孔に落とした後,表面にもまいて,素早く栓をします(写真7~9)。写真では,コンロの火から少し離れすぎていましたが,培地への雑菌の混入は全くありませんでした。作業を行ったのが冬で,雑菌が少なかったからだと思いますが,我が家が意外と清潔だということでしょうか? |
|||
![]() 写真8 接種2 |
![]() 写真9 素早く栓をする |
||||
|
|||||
![]() 写真10 培養40日目 左:菌糸が白く蔓延 右:茶色い部分がまだ蔓延していない |
5)培養 直射日光の当たらない20℃前後の清潔な場所で,白い菌糸が培地全体に蔓延するまで置いておきます。我が家では,40日間培養しましたが,写真10のように蔓延しない菌床もありました。これは,温度が保たれるようにストーブの近くに置いて培養したため,乾燥してしまったためだと思います。次の“発生処理”で行うように,湿度が保たれるようにするべきでした。 |
||||
|
|||||
![]() |
![]() |
6)発生処理(菌かき,注水) 菌糸が蔓延したら,菌床表面を清潔なスプーンで,数mm掻き取ります(写真11)。我が家の菌床は,表面が乾燥していていたため,もう少し深く掻き取って湿った面を出しました。その上に,水道水を張って,30分ほど菌床に吸水させた後,余分な水を捨てます(写真12,13)。水を張った容器にこのビンを並べ,湿らせた新聞紙で覆って湿度を保ちます(写真14)。少し低めの温度(15℃位)に置いて,きのこの発生を待ちます。我が家では,湿度を高く保つことができ,温度も低い,浴室を利用しました。そして,浴室に置いてから約1か月後に,きのこを収穫(摘み取り)しました(写真15)。写真撮影後,おいしくいただきました。 |
|||
写真11 菌かき | 写真12 水道水を注ぎ,30分ほど置いて菌床に水を吸わせる | ||||
![]() |
![]() |
||||
写真13 余分な水を捨てる | 写真14 水を張った容器にビンを並べて湿らせた新聞紙で覆う | ||||
![]() |
![]() |
||||
写真15 収穫 | |||||
おわりに(経費はいくら位かかるのだろう?) ところで,いくら楽しみでやるとはいえ,使える予算というものが各家庭,各個人にあると思います。そこで,実際に掛かった金額も表1に載せておきました。魚釣りや家庭菜園もそうでしょうが,利益が出ることは期待できません(もちろん「買った方が安い。」ということは分かっているのですが・・・)。 参考資料1)“図解・よくわかるきのこ栽培”,(財)日本きのこセンター編,家の光協会,1-262(1985).2)“家庭で楽しむきのこ栽培”,日本特用林産振興会,1-21(2003). http://www.nittokusin.jp (種菌メーカーの情報も掲載されています。) |
|||||
前のページへ | 次のページへ | ||||
|
|||||
トップ>木に関する情報>林産試だより> |