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林産試だより2005年4月号 教室用木製机・いす
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教室用木製机・いす 

企画指導部 デザイン科 川等 恒治


 木製机・いす導入への取り組み

 教室用の机・いすと聞いて,みなさんはどのような机やいすをイメージするでしょうか?以前は天板も座も脚も,すべてが木でできている机・いすが当然のように使われていました。穴のあいた天板やぬきの抜けたいすも大事に使っていたものです。その後,1950年代になると,脚にスチールパイプを使った製品が現れ,1966年のJIS規格の改正では金属やプラスチックの材料も認められました。そして今ではそのほとんどがスチールパイプの脚を持つ机・いすになっています。北海道教育庁の調べによると,道内の公立小学校1,432校のうち,総木製の机を導入しているのは14校(1%)しかありません(表1)。

表1 道内おける公立小・中学校の普通教室用机の導入状況

 スチール製の机・いすが急速に普及した理由は,軽くて安いということだと思われます。しかし最近,木製の机・いすが見直され始めています。木の持つ温かさや柔らかさ,あるいは優しさといった感覚的な要素が,学校という場にふさわしいと考えられているのでしょう。さらに物を大切に使う心を育てるという教育的な見地からも評価されているようです。特に,地場の木材を使った机・いすが導入されることは,地域経済の発展にもつながることから,木製の机・いすを推奨する動きが全国で活発になってきています。

 こうした動きは道内でも広がりを見せており,北海道では平成8年度に策定した「公共建築物の木造化・木質化の推進方針」の一つの取り組みとして,道立施設における木製机・いすの導入基準を定めています(表2)。また,帯広市では平成14年度から市内41の小・中学校で道産広葉樹を使用した木製机・いすに順次更新されている(写真1)ほか,札幌市でも机の天板に道産カラマツ材を使用した製品が導入されるなど,いくつかの自治体で取り組みが行われています。

表2 道立施設における木製机・椅子の導入基準(抜粋)

写真1 帯広市で導入されている木製机・いす

 JIS規格の改正は木製机・いすの導入を促すか?

 教室用机・いすに関するJIS規格が,学習形態・教材の多様化に対応するため,また国際規格とのより一層の整合化を図るためなどの理由により,1999年に改正されました(JIS S 1021,表3)。主な改正点は,規格名称が[学校用家具(普通教室用机・いす)]から(学校用家具-教室用机・いす)に改められたこと,12種類あった規格(特号~11号)が7種類(0号~6号)に整理されたことなどです。中でも,大きな改正点の一つは机面寸法です。幅600mm,奥行き400mmという旧規格から,机面の寸法を広げさらに自由度を設けるという趣旨により,幅(1人用)が600,650,700,750mmの4種類,奥行きが450,500mmの2種類となりました。

表3 教室用机・いすの主要な寸法

 財政上の都合や,少子化によりこれまで使用されてきた机・いすが多数余っていることなどから,新JIS対応の机・いすへの更新が行われていない学校もあります。しかし,学習形態の多様化や教材の大型化とともに,児童の体格の向上もあり,600×400mmという机面寸法では「小さすぎる」という現場サイドからの声もあることから,今後少しずつ更新が行われていくものと思われます。
 これを機に,現在,国内各地で新JISに対応した机・いすの開発・製品化が進められ,道内でも道産材を使った天板・座板・背板をスチール製の脚に取り付けるタイプなどが製品化されています。


 なぜ総木製の机・いすが少ないのか

 道内の小学校で使用されている机・いすのほとんどはスチール製の脚を持つもので,すべてが木材というものは非常に少ないのが実情です。それはなぜなのでしょうか?


写真2 過去に林産試験場で開発した机・いす(組立式)

 林産試験場では平成7~10年度にかけて,カラマツの間伐材を主な材料とした木製机・いすの開発を行い,道内の7小学校で試用してもらいました(写真2)。開発した机・いすは,高さ調節ができない「固定式」,高さ調節ができる「可動式」,高さ調節および分解ができる「組立式」の合計9タイプです。この取り組みを通して,なぜ総木製の机・いすが少ないのか,その理由についてまとめてみました。

 まず,理由の一つは価格であることがわかりました。机・いすを導入する際の検討項目の一つに価格が挙げられることは間違いありませんが,そのときに林産試験場で開発した机・いすは,大変高いものになりました。ただし,これは試験的に製作した際の製作費ですので,量産化や製造工程の見直しなどによるコストダウンの可能性はあります。一般に総木製の机・いすの価格は,スチール製と比較して高くなる傾向にあり,現在各県で使われている総木製のものは,何らかの公的な補助制度の下に導入を図ったケースがほとんどです。総木製の机・いすの普及に関しては,この価格の問題が最も大きいと言えるかもしれません。

 もう一つの理由は,その重さでした。試用してもらった学校でアンケート調査を行った結果,「肌触りがよい」「あたたかい」などの木材が持つ特徴が良い点として挙げられた一方で,悪い点として最も多かったのが,「重い」という意見でした。

 林産試験場で開発した机・いすのうち,固定式は重量に関しておおむね良好な評価をもらいましたが,可動式や組立式においては「運びづらい」という意見が多数を占めました。可動式および組立式は,高さなどの調整ができるようにしているため使う材料が多くなり,固定式に比べて重くなってしまいました。その上,固定式はその大きさとともに重さも変わりますが,可動式や組立式はすべての児童が同じ重さのものを使用することになるため,体の小さい児童にはより負担が大きくなってしまいます。

 学校では掃除やグループ学習の際に机・いすを移動させたり,あるいは集会の際にいすを移動させたりと,持ち運ぶ機会が多いため,重量は重要な要素になります。総木製机・いすでは,一定の強度を得るために,設計上ある程度重くなってしまうことが多いので,強度を保って軽量化することが大きな課題と言えます。


 林産試験場の新たな取り組み

 林産試験場では,ローコスト化,軽量化を目指し,平成15年度に新しいコンセプトの学校用机・いすの開発を行いました(写真3)。以下にその主な特徴を挙げます。


写真3 新たに開発した机・いす
(左:6号サイズ,右:4号サイズ)

 まず,いすは固定式にしました。いすを可動式とした場合,JIS規格で定められた各号の寸法に合わせるためには,座面の高さだけでなく座面の奥行きや背もたれの高さなども調節できるようにしなければなりません。これらに対応させることがコストアップや重量増につながると考えました。ただし,毎年各号の必要数が変動するため,固定式の場合,各号数ごとのストックが必要となります。そこで収納スペース等を考えて積み重ね可能な形状としました。

 一方,机は可動式にしました。机は基本的に積み重ねができません。固定式にすると,いす同様多くのストックが必要となりますが,積み重ねができない分,収納スペースがより大きくなってしまいます。また,机は机面の高さのみを調節することで各号の寸法に対応できる上,可動式としても部材数が大きく増加することがなく,いすと比較して大幅なコストアップや重量増にはならないと考えられます。さらに各号数ごとに部材寸法を合わせるという必要がないため,加工手間の軽減が可能となり,コストダウンにつながります。


写真4 いすの座と背もたれ

写真5 いすの脚

写真6 各号数への部材の対応
(円の部分をカットすることで脚の寸法を,四角の部分をカットすることで座および背もたれの寸法を調節する)

 次に使用部材についてですが,いすの座と背もたれには成形合板を使いました(写真4)。成形合板というのは,木材を薄く切削した板(単板)を型にはめて曲面状に形作りながら積層接着した合板のことです。これまでも教室用いすの座板や背板に使用されてきましたが,今回の特徴は,座と背もたれを一体型にしたことです。また,脚にも成形合板を使いました(写真5)。

 これまで教室用木製いすでは,部材の継ぎ目(接合部)の破損が数多く見られましたが,これらの材を使用することで部材の数と接合部の数を大幅に減らすことができました。さらに,座と一体化した背もたれは,力をかけるとわずかに後ろに倒れることで衝撃を吸収してくれるため,座り心地も向上しました。また,これらの材を曲面状に成形する際に使用する型は非常に高価なものですが,脚と座・背もたれをそれぞれ一つの型で対応できるようデザインし,コストダウンを図りました。各号数へはその長さに合わせて端をカットすることで対応できます(写真6)。

 机・いすともに加工手間の軽減を考え,シンプルなデザインとなっています。また,強度性能については,JIS規格に準拠した強度試験により,問題がないことを確認しました。重さについては,アンケート調査などから目標値と設定していた机・いす合わせて15kg以内(いす:4号サイズ)を達成し,特にいすにおいて軽量化することができました。今後は企業への技術指導などを通して,製品化に向けた取り組みを行います。

 これからの教室

 平成14年度から「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進に関するパイロット・モデル事業」(文部科学省・農林水産省・経済産業省)において,「木材利用型」が新設されるなど,学校施設の木造化・木質化を推奨する動きがあります。これにより,木造あるいは内装材に木材を使用した学校施設が増えていく可能性は十分にあります。それとともに,木質の内装との調和を図る意味でも,木製机・いすに対する関心が高まることが考えられます。木に囲まれた教室の中で,多くの児童に木製机・いすを使ってもらえるよう,今後も取り組んでいきたいと考えています。

 
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