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林産試だより2005年8月号 森林散策路におけるバリアフリー木道
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森林散策路におけるバリアフリー木道
企画指導部 デザイン科 川等 恒治


 北海道渡島支庁の取り組み

 渡島支庁では,自然に親しむ機会の少ない高齢者や障害を持つ方などが,多様な森の楽しみ方を直接体験できるように配慮した森林利用環境づくりを進める必要があると考え,「森林(もり)のバリアフリーモデル事業」を平成14~16年度の3年間行いました。この事業では,福祉や教育関係者に加え,森づくりセンターや林業試験場,林産試験場などから集まった委員によって,渡島森林空間バリアフリーゾーン協議会を構成し,同管内の森林にバリアフリー散策路(写真1)を試験施工して,車いすでの実走試験や自然観察会を行いました。


写真1 森林バリアフリー散策路(函館市)

 バリアフリー木道を設置する際の留意点

 森林散策路に,なぜ木道が必要なのでしょうか?
 自然そのままの森林は,草や木が生えていたり,地面に凹凸があったり,あるいは土が軟らかすぎたりして,歩行が困難な場所があります。そこで歩きやすくする手段が必要となりますが,その一つが木道です。さらにバリアフリー化を図るためには,歩きやすさだけではなく,車いすや杖などを使用されている方など,より多くの方の使いやすさを考えた設計をしなければなりません。そこで,ここではバリアフリー木道の設置に向けた留意点を紹介したいと思います。

1)設置場所の選定
 森林散策路は,そこにある自然を楽しむということが目的の一つであり,さらにコストの面を考慮すると,その場所の地形をそのまま利用することが基本的な考え方となります。しかし一口に森林と言っても様々な地形をしており,バリアフリー木道をそのすべての地形に対応させることは非常に難しいことです。そこで,バリアフリー木道の設置が可能な地形であるかどうかを検討する作業は欠かすことができません。

 木道に最も影響を与える要素の一つが地形の勾配です。勾配が急な場所では,木道の勾配を抑えることが大変難しいため,ある程度緩やかな勾配で森林を散策できるような地形がバリアフリー木道の設置場所として望ましいと考えられます。

 また,森林散策路を訪れる際に,最もアクセスしやすい手段として自動車が考えられます。特に車いす使用者にとっては他の手段によるアクセスが困難な場合もあることから,入り口にできるだけ近い位置に駐車スペースを確保する必要があります。さらに,森林散策路を快適に利用してもらうためには,車いす使用者が利用可能なトイレも必要です。しかしこれらの設備を新たに設けることは大きな負担となるため,こうした設備が整っている公園等を利用できるような場所に森林散策路を設置するなど,場所の選定は施工性やコストなども含めた検討をすべきだと思います。

2)勾配
 勾配には,進行方向に沿った勾配(縦断勾配)と,それと直角をなす方向の勾配(横断勾配)との2種類があります。縦断勾配については5%以下にすることが望ましいと言えます。やむを得ない場合でも,車いす使用者の中でも上肢に力のある方や介助者を伴った方が利用できるように,8%以下に抑えるよう検討する必要があります。横断勾配については可能な限り水平にするのが基本的な考え方です。

 散策路の利用者の中には,緩い勾配でなければ利用できない方もいれば,やや急な勾配にチャレンジしたいと思う方もいます。車いす使用者に限っても,その走行能力は様々であり,また介助者が伴った場合などは少し急な勾配でも利用可能となります。こうした様々な目的や能力に対応するために,いくつかのコースを設けることは非常に有効であると言えます。例えば車いす使用者が一人で上っていけるような緩やかなコース,勾配がやや急なコース,そして階段なども伴ったコースなどを設け,利用者が自分に合ったコースを選択できるようにすることで,より多くの方々の満足につながるものと思われます。

3)幅員
 幅員は,車いす使用者同士がすれ違う状況を考慮して,1.8m以上確保することが望ましいです。もしそれが確保できない場合でも,幅員は1.2m以上とし,車いす使用者同士ですれ違える幅員1.8m以上の箇所を適宜設ける必要があります。このとき片方の車いす使用者が他方を待ってすれ違うという状況が考えられるので,すれ違いを想定した箇所は水平にしておく必要があります。

4)水平部分
 上述のように,1.8m以上の幅員を持つ木道の水平部分は,車いす使用者同士がすれ違う場所として重要な役割を果たします。また,車いす使用者が傾斜路で長い時間止まっていることは困難であり,休憩する場所としても必要です。同様に足の不自由な方や高齢者等においても,傾斜路は足への負担が大きいことから,水平部分は欠かせません。すべての人が散策路を快適に活用できるように,水平部分の配置や間隔を十分検討する必要があります。

5)段差やすき間
 床板は,大きなすき間や段差をできるだけ作らないように注意しなければなりません。こうしたすき間や段差に足をとられ,転倒する危険や,杖の先端や車いすの車輪がすき間に入り込むなどして,事故につながる可能性があるからです。

6)案内表示
 利用者にその木道がどのようなものであるかの情報を提供するためには,案内表示が重要な役割を持ちます。特にバリアフリー木道については,多様な人々の身体条件や体力に応じて,それぞれが利用可能か否かの判断ができるような内容を表示しなければなりません。

 入り口には木道の全体図やトイレ,休憩所などの配置をわかりやすく表示し,またそこに勾配や距離,見所なども併せて表示します。また,それぞれのコースの分岐点や始終点には,そのコースの勾配や幅員,距離,休憩場所の間隔など,利用者が選択する上で必要な詳しい情報を提供する案内表示を設け,利用者が自分に合ったコース等を検討できるようにします。


 道内の森づくりセンターでは,障害を持つ方や高齢者などすべての道民が,安全で自由に森林と触れ合う機会を得られるように,バリアフリー散策路の整備に取り組んでいます。現在,計9箇所で整備されました(表1)。また,このほかにも国有林内にバリアフリー散策路が設置されるなど,誰もが森林と身近に付き合える環境作りが進んでいます。
 みなさんも一度,こうした森林散策路を利用して,心と体をリフレッシュさせてみませんか?
表1 道内におけるバリアフリー散策路の一例
 
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