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林産試だより2005年8月号 Q&A 先月の技術相談から カラマツのインサイジング処理について
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Q&A 先月の技術相談から

Q:カラマツにインサイジング処理をして防腐処理を行った場合の防腐効果および強度低下に関する基準などについて教えて下さい。


A:カラマツ(心材)は薬剤が入りにくい,いわゆる難注入性の樹種ですが,インサイジングを行うことによって薬剤の浸透性が改善されます。すなわち薬剤が浸透している部分が増加するため,防腐効果も向上します。強度低下については,使用する木材の断面の大きさなどによって異なります。JISやJASなどでは,土台などの構造用建築部材においては,曲げ強さおよび曲げヤング係数の低下がおおむね10%を超えない範囲内とすることが規定されています。以下に,林産試験場で取り組んだ研究成果などを具体例として説明します。

 インサイジングとは?1)

 インサイジングとは,木材保存処理を行う前に薬剤の浸透性を良くするための方法の一つで,木材表面に多数の傷をつけて,そこから薬剤を浸透させるものです。汎用的なのは刃物によって傷をつける方法ですが,刃物の代わりに炭酸ガスレーザーやウォータージェット(高圧噴射法)を利用した方法も研究されています。
 一般的な刃物の形状は,幅10~15mm,高さ10mm,厚さ2~4mm(ホコ型)で,ローラーに固定した複数の刃物により連続的に傷をつけます(写真1)。この他,林産試験場では釘を刃物として用いる連続針式インサイジング装置を開発し,従来は困難であった円柱加工材へのインサイジングを可能としました(写真2)。

写真1 ホコ型インサイジング(一例)

写真2 針(釘)式インサイジング(一例)

 角材へのインサイジング2-3)

 カラマツおよびトドマツの角材(10.5cm角,心材)に対し,ホコ型の刃物(幅10mm,高さ10mm,厚さ3mm)を用いて密度8,300個/m2のインサイジングを行った結果,強度低下(曲げ強さ低下率)は10%以下であったため,強度上の支障はないと判断されました。また,木口面(年輪が見える面)以外の材面(板目面および柾目面)表層から薬剤がどの程度入っているのかを示す割合(浸潤度)を評価しました。その結果,薬剤が入りにくいカラマツ心材では,インサイジングを行わなければ浸潤度はごくわずかでしたが,インサイジングを行うと,約20%程度まで向上しました。一方,トドマツ心材では,インサイジングを行うことにより90%以上の浸潤度を確保することができました。
 現在,住宅性能表示制度などの規格では,北海道および青森県においては心材の浸潤度が20%以上であれば,性能の高い住宅用の保存処理木材として認められています。カラマツ心材の浸潤度を向上させる研究はいろいろと行われていて,浸潤度が80%以上になるような処理方法も開発されつつあります。

 丸太材へのインサイジング4)

 林産試験場で開発した円柱材用針式インサイジング装置を用いて,カラマツ円柱材(直径100~200mm)にインサイジングを行いました。刃物(針)として安価なコンクリート釘を使用し,刺し込み深さ15mm,直径2.8mm,刺傷密度は約8,000個/m2でインサイジングを行いました。その結果,インサイジングによる強度低下(曲げ強さ低下率)は平均で10数%でしたが,浸潤度については約90%に向上させることができました。

 カラマツ辺材の注入性

 カラマツ心材は薬剤が入りにくいのですが,カラマツ辺材は薬剤が比較的よく入ります。カラマツに十分な量の薬剤を注入させたい場合,特に野外で用いる円柱材などは,外周に1cm以上の辺材を持つような材料を選択して木材保存処理を行う方法もあります。

 参考資料

1)“木材保存学入門 改訂版”,木材保存協会発行  (2001).
2)布村昭夫,斉藤光雄,葛西章:林産試月報,No.371,  12-14(1982).
3)布村昭夫,斉藤光雄:林産試月報,No.378,12-16 (1983).
4)八鍬明弘,横幕辰美,高橋尚志:林産試験場報,  13(3),6-12(1999).
(性能部 耐朽性能科 森 満範)
 
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