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そば殻を用いたきのこ栽培 -実用化例の紹介-
きのこ部 品種開発科 中谷 誠


 はじめに

 道内におけるシイタケ等各種きのこの生産量は堅調に推移していますが,市場価格は低迷しています。そのため収益性を高める方法の一つとして原材料費の低減あるいは生産効率を高める栽培技術が求められています。

 一方,農業および食品加工業からは大量に副産物が排出されており,その処理に多額の費用を要しています。そこで,当科では平成11年度から15年度までの5年間,これらの副産物をきのこ生産に利用するための栽培条件等に関する研究を行いました。その結果,これらの副産物を用いることにより,きのこの生産コストの低減および生産効率の向上が明らかになりました。また,きのこ栽培に利用可能になったことにより,副産物の処理コストの低減にもつながりました。

 ここでは,林産試験場の成果を導入して(株)北海道きのこ総合研究所(札幌市)において行われている,そば殻を使用した各種きのこの栽培状況を,実例として紹介します。


 事例紹介

 (株)北海道きのこ総合研究所では,シイタケ,エリンギ,エノキタケの栽培に,そば生産量全国一の幌加内町から副産物として排出されているそば殻を使用しています(写真1)。
 きのこ栽培にそば殻を使用することによる利点を以下に説明します。

・メリット1:原材料費の低減
 (株)北海道きのこ総合研究所では,使用するおが粉(エノキタケでは混合培地)重量の5~10%をそば殻に置き換えて培地を調製しています(写真2)。培地中のそば殻の状態を写真3に示します。
 培地を調整する段階で,一部をそば殻に置き換えることによって,おが粉あるいは混合培地の原材料費が低減されます。

・メリット2:ランニングコストの低減
 たとえば,通常のエノキタケ栽培では菌糸を培養ビン全体にまん延させるためには22~23日間必要ですが,そば殻を用いることによって3日間程度短縮することができます。また,シイタケの栽培では菌糸の一次まん延の段階で約1週間短縮されます。さらに,最終的に培養袋を除去する段階までは通常120日程必要とされていたものがおよそ100~105日となり,2~3週間程度短縮することができます。

 このように各種きのこの栽培において培養期間が短縮されることによって,培養にかかわる部分でのランニングコストが低減されます。さらに,培養期間が短縮されることで,施設の回転率が向上し,同一施設における年間生産量が増加することから,生産効率も向上します。

・メリット3:子実体(きのこ)の収穫量の増加
 そば殻を使用することによる3つ目のメリットとして,シイタケ栽培における1回目の子実体収穫量の増加が挙げられ,通常より20%程度多い約250gの子実体が得られます(写真4)。

 さらに,一般に1回目の発生の収穫量が多い場合,発生した子実体は小型化の傾向を示しますが,そば殻を用いることにより,従来のそば殻を用いない栽培方法と比較して大型で形状のよい子実体が得られています。
写真1 きのこ栽培に用いるそば殻
写真1 きのこ栽培に用いるそば殻
写真2 そば殻を加えた培地
写真2 そば殻を加えた培地
写真3 培地中のそば殻
写真3 培地中のそば殻
写真4 シイタケの子実体
写真4 シイタケの子実体

 おわりに

 今回,品種開発科の研究成果の一つである“そば殻を用いたきのこ栽培技術”に関して,(株)北海道きのこ総合研究所で実用化されている内容を紹介しました。そば殻を培地に使用することにより,実際の栽培現場においても,原材料費のコストダウンのみならず,生産効率の向上および子実体収量の増加効果が得られています。また,同社ではきのこ栽培後の廃培地を堆肥にしていることから,これをそば畑の肥料として用いることにより,一つの循環型社会の構築へとつながるものと考えられます。

 北海道においては寒冷地作物としてのそばの作付けが広く行われていることから,今後さらにこの技術を普及して行きたいと考えています。

 最後に,そば殻を用いたきのこ栽培の状況についての情報を,快く提供して下さった(株)北海道きのこ総合研究所の三浦社長にこの場をお借りしてお礼申し上げます。

 
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