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林産試だより2007年9月号 元気に育て!林産試験場構内で植樹の集い

 

元気に育て!林産試験場構内で植樹の集い

企画指導部 普及課 石倉 信介



 はじめに


 先の6月24日,苫小牧市において北海道では46年ぶり2回目となる第58回全国植樹祭が開催され,全道のボランティアが地域で育てた苗木など48種類2万本が植えられました。道内外から1万人を超える参加者を迎えてのことで,現場では混乱する場面もあるものと思っていましたが,職場の参加者からは整然とプログラムがこなされていったと聞いています。成功は,関係者の企画力と周到な準備,そして何より大勢のボランティアの協力のたまものと思われます。

 木や森林に深く関わる林産試験場としても,全国植樹祭の開催テーマとして掲げられた「森林の持続」「道民との協働」「資源の循環」という三つの理念を体現しなければ,と全国植樹祭の1か月ほど前,職員による植樹の集いを行いました。研究材料として使われている樹木の展示やみどり景観の向上も狙ってのことです。昨年秋の準備から植栽後の管理まで,作業の経過をお話しします。


 植栽場所は国道沿い,コロポックルのつづきです


 まず,20本ほどをまとめて植えられる場所をさがしました。試験場では広い土地に幅広の道路がめぐり大きな試験棟がゆったりと建てられています。丸太や大型資材の搬出入,保管などのためで,ちょっとした空き地は資材の仮置きや雪捨てのために使われます。前庭や試験棟の間の芝生はていねいに管理され,要所にはすでに様々な樹木が配置されています。

 本数のまとまりを小さくして何か所かに分けて植えるのでは展示上の効果が薄れ,植樹の集いも散漫となってしまいそうです。結局,庁舎・試験棟周りでは適当な場所が見つからず,国道沿いで木育施設コロポックル(ログハウス)のつづきの土地に決まりました。遊具施設の撤去跡地で,シロツメクサが生え,最近では木のグランドフェアのイベント広場などに利用されています。目立つところなので,展示には好都合です。方形に区域がとれ面積は180m2ほど,配植デザインにこだわらなければ相当な本数を植えられます。

 ただ,土地の状態はといえば,表土が薄く,周りより少し掘れていて水はけがよくありません。植樹をするには大量の客土が必要と思われ,賛同者の好意で入手できた工事残土の火山砂を20~30cmの厚さで敷き,その上に畑土を20cmほどかぶせました。


 植栽樹種はグイマツ雑種F1の「グリーム」などです



 植栽本数は全部で49本,すべて造林用サイズの苗木で,樹種ごとに5本ほどをかためて配置しました。樹種は林産研究の主要材料であるトドマツとカラマツ類が主体です。トドマツ,カラマツは,庭木や街路樹にはあまり用いられることはなく,試験場の構内にも植えられていませんでした。北海道の主要な造林木であり林業地はもちろん郊外では当たり前のように植えられていて,関係者には目に焼き付いている存在ですが,これらの前を特に気にとめずに素通りしてきた多くの人たちに,試験場見学の際,製材・加工品と併せて見てもらうことができるようになり,林産研究の効果的な普及ができそうな気がしています。

 カラマツ類は,成長がよく諸被害への抵抗性が高いグイマツ雑種F1を主体としましたが,この中には特に成長が旺盛(おうせい)で幹がこの上なく通直な品種「グリーム」も加えました。林産工業界からの期待が大きく次代のエース的存在であるこのグリームを,林業地に出向かなくても,市街地間近で見ることができるわけです。また,グイマツ雑種F1の横には交配親であるグイマツとカラマツを配置しました。これらの枝ぶりや葉色,黄葉時期,冬芽形成時期の違いなどを比較観察することができます。なおカラマツ類については,品種開発者の道立林業試験場から譲り受けました。植え付け時期が夏になっても大丈夫なよう,苗の大半を昨秋から育苗ポットで管理してもらっていたものです。

 水はけの心配なところには,河原や沼地によく生えるヤチハンノキ,ケヤマハンノキ,シラカンバ,ヤチダモを配置しました。川のまち旭川によくマッチすると思います。


 植栽当日,固く締まった土を念入りにほぐしました



 5月23日,職員四十数名が集いました。植えるのは一人あたり1本ちょっとのことですが,けっこう時間をとられ,たっぷりと汗をかきました。実は,植栽前,現場に搬入し山のままにしておいた畑土を,3日とあけずに降った雨水が乾ききらないうちに重機でならしたため,土は思いのほか固く締まっていたのです。酸欠などの解消のため,植樹というよりも土砕きに力を注がなければなりませんでした(写真1)。持ち寄った剣先スコップは20丁ほど。2人1組で直径1m,深さ30cmほどの土を念入りにほぐし,1本分の植穴としました。これに腐葉土を適量混ぜ込み,ていねいに根を広げて植え付けました(写真2)。



左:写真1 土砕きに時間をかけました     ,     右:写真2 ていねいに植え付け




写真3 標柱は木目のきれいなカラマツ


 記念の標柱は手作りです。乾燥試験に使ったカラマツ10.5cm角を使いました。柱の頭をよつやね風にカットし,木目がきれいなので白ペンキの代わりに茶色系の保護着色剤を重ね塗りして4面に文字を入れています。ほめられた筆づかいではありませんがクレームはまだ聞こえてきません(写真3)。





写真4 記念撮影


 最後に,全国植樹祭の成功を願いつつ,みんなで記念写真に収まりました(写真4)。









 その後も固い土との戦いは続きました



 その後は旭川らしくなく風の強い日が続きました。まとまった雨はほとんどありません。しばらく様子を見ては水やりをしました。それでも土への不安は尽きません。植え付けのとき,植穴部分の土は念入りにほぐしたものの,その周囲は固く締まったままでした。この締まった層には水が浸透しにくいとみえ,まいた水は表面を流れてしまいます。植穴部分は,いっときは水で潤うものの,周りの土からの水供給がほとんどない,植物にとってはあまり好ましくない生育環境にあるものと思われました。放っておいてもいずれは水や土中生物の働きでやわらかな土に戻るのかもしれませんが,早めに手をうって不安を解消したい,みんながそういう思いでいました。

 植栽して半月後のことです。どしゃ降りの雨に恵まれ,固い土にも水がしみ込み幾分スコップを入れやすい状態になりました。よく晴れた翌土曜日と日曜日,日頃の運動不足を解消するボランティアの姿がありました。


 おわりに





写真5 植え付けから3か月

 植栽木の成績はといえば,ポット中ですでに葉を展開させていたカラマツ類が,植栽地の土になじむ前に強い風にさらされたためか,植えてまもなく若干葉色が悪くなりました。このうちの2本は,1~2週間で大部分の葉を落としてしまい,やむなく予備の苗に替えています。そして植えて3か月たった今では,気苦労と世話のかいがあってか,どの木も枝数を増やし生き生きとした葉を茂らせています(写真5)。一部では黄葉も始まっています。おそらくこれで心配ありません。

 このまま順調に育てば,カラマツ類やカンバ・ハンノキ類では,5年で樹高5m,6mにもなります。みどり景観が向上するだけでなく,ミニ林業体験や工作材料の採取などもできるかもしれません。裸の林床がどんな植物で覆われていくかを観察するのも楽しみです。

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