ヒラタキクイムシ類による被害の実態
(林産試験場に寄せられた相談・問い合わせから)

性能部 主任研究員 森 満範


はじめに


 ヒラタキクイムシ類は,合板,フローリング,家具などの比較的乾燥した木材を食害することで知られています(写真1)。
 日本では7種が確認されていて1),その生態や防除に関する知見は多いのですが2),被害の発生数や被害内容等の実態については把握されていないのが現状です。
 そこで,林産試験場に寄せられた技術相談や問い合わせの内容から,ヒラタキクイムシ類による被害の傾向を集約しました。

写真1

ヒラタキクイムシ類に関する相談・問い合わせ数の推移


 1999年から2006年までの8年間の技術相談・問い合わせ数の推移を図1に示しました。
 林産試験場では,民間企業,団体,自治体,一般の方から,毎年467件(1999年)~1,173件(2005年)の技術相談に対応していますが,木材保存に関する相談は12~20%程度を占めます。その中で,ヒラタキクイムシ類に関する相談は5~12件/年で,年によって変動はありますが,全体としてやや増加の傾向にあります(図2)。

図1    図2

被害樹種の傾向


 図3はヒラタキクイムシ類の被害を受けた木質材料のうち,樹種が特定されているものの内訳を示したものです。最も多かったのはナラで約38%,次いでラワンが約17%でした。タモおよびホワイトアッシュといったトネリコ属の被害も比較的多くみられました。
 その他ニレ,カバ,ハリギリ,クルミ,キリ,ブナなど,ヒラタキクイムシ類による被害樹種として知られているものが占めていました。

被害材の用途および材料形態


 図4はヒラタキクイムシ類による用途別の被害数を示したものです。用途が特定されているものの中で過半数を占めたのは,タンス,テーブル,椅子などの家具製品で,フローリングを含めた内装材の被害は約35%を占めていました。
 どのような材料形態でヒラタキクイムシ類による被害が発生したのかを示したのが図5です(特定できるものについてのみ)。
 板材・単板が約半数を占め,合板が38%,集成材が13%という割合でした。いずれも家具や内装材として利用される材料形態ですが,その発生割合は部材の使用割合に応じた結果であると推測されます。

図4    図5

ヒラタキクイムシ類による被害の認識段階


 ヒラタキクイムシ類による被害がどの段階で認識されたのかを示したのが図6です(特定できるものについてのみ)。末端ユーザーのもとで,製品として使用あるいは設置された段階で被害が認識されたものが大半を占めていました。
 ヒラタキクイムシ類の産卵がどの段階で行われたのかを判断するためには,被害部材の経路をさかのぼりながら,それぞれの経路における虫害の有無を精査しなければならず,特定するのが困難な場合も少なくありません。
 家具や内装材として利用される部材は人工乾燥がなされたり,合板のように製造過程で加熱されたりする場合が多いと考えられます。このことと,図6の結果およびヒラタキクイムシ類のライフサイクルを考慮すると,被害が認識された箇所(末端ユーザー)あるいはそれ以前の部材や半製品の加工後(保管時等)に産卵されたと考えるのが適当といえます。ただし,部材に熱が加わる工程を経たとしても,ヒラタキクイムシ類を死滅させる温度までに至らなかった可能性もあることから,加工前の材料の段階で侵入したとする考えも捨てきれないところです。

図6

おわりに


 北海道を中心としたヒラタキクイムシ類による被害実態を把握するために,林産試験場に寄せられた技術相談等をもとに,その被害傾向をとりまとめました。
 ヒラタキクイムシ類による被害を予防するためには,製品の製造段階でヒラタキクイムシ類が食害する広葉樹の辺材以外の使用(材料の選択),食害因子となるデンプンやタンパク質の除去あるいは薬剤処理などが挙げられますが,いったん被害を受けた後に駆除するのは困難になります。
 ヒラタキクイムシ類による被害を最小限に抑えて被害の拡散を防ぐためには,製品あるいは保管・設置場所に成虫がいないかどうか,木材表面に虫穴があいていないかどうか,あるいは成虫が木材内部から出てくる時に発生する木屑(フラス)が落ちていないかどうか等を点検するなどして,早期に被害を発見することが重要です。

※本内容は,京都大学生存圏研究所DOL(居住圏劣化生物飼育棟)全国共同利用研究で得られた結果の一部で,(社)日本木材保存協会第24回年次大会(2008年6月,東京)において本内容に関連した発表を行いました。

参考資料

1)岩田隆太郎:“木材保存学入門改訂2版”,(社)日本木材保存協会,東京,2005,pp.52-55.
2)例えば,布村昭夫:林産試験場月報,202,1-4(1968).


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