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連載「道産木材データベース」


 林産試験場では,樹木の生態・形態,木材の性質・用途および関連の文献情報等を樹種ごとに取りまとめたデータベースを制作中ですが,ホームページへの公開を前に,記事部分を順次本誌で紹介しています。

(担当:企画指導部普及課)



ナナカマド類(バラ科ナナカマド属)


ナナカマド樹形,アズキナシ樹形

ナナカマド
名称  和名:ナナカマド
     アイヌ語名:イワキキンニ iwa-kikinni (山地のエゾノウワミズザク
    ラ)など
     漢字表記:七竈
     英名:Japanese Rowan
学名  Sorbus commixta Hedlund
分布  北海道,本州,四国,九州,朝鮮半島,サハリン,南千島

アズキナシ
名称  和名:アズキナシ
     別名:カタスギ(堅杉)
     アイヌ語名:チカプセタンニ chikap-setan-ni (鳥のエゾノコリンゴ
    の実がなる木)
     漢字表記:小豆梨
学名  Sorbus alnifolia (Sieb. et Zucc.)C.Koch
分布  北海道,本州,四国,九州,朝鮮半島,中国北・中部,ウスリー

生態・形態
 ナナカマドは山地に普通な落葉小高木で,高さ10m,太さ30cmになる。樹皮は灰色で,大きな皮目がある。葉は奇数羽状複葉で長さは12~24cm。小葉は5~7対で先が鋭くとがり,鋭重鋸歯がある。6~7月,枝先に大きな花序を付け,花弁は5枚,白色で直径が6~10mm。実は球形で5~6mm,秋に赤く熟してよく目立つ。越冬して早春にキレンジャク等の餌となる。

 アズキナシは山地に生える落葉高木。樹皮は紫黒色で若いうちは白い皮目が目立つが,その後不明瞭となる。葉は長さ5~9cm,互生し,広卵形から楕円形,先がとがり重鋸歯縁,側脈は直線状で8~12対あり表面が凹み裏面に凸出す。5~6月に枝先や上方の葉腋に花弁が5枚,白色で直径1.5cmの花をまばらに付ける。実は小豆形で6~10mm,円い皮目を散生し,秋に赤く熟し,先にがく筒の頂部が落ちたあとが円くきわだつ。

写真 ナナカマドとアズキナシの樹皮

その他のナナカマド属
ウラジロナナカマド(裏白七竈) Sorbus Matsumurana (Makino)Koehne
 北海道,本州(中北部)の高山帯に生える落葉低木。高さ1~2m。葉は奇数羽状複葉で長さは10~19cm。小葉は4~6対で先は丸く,中程から先にのみ鋸歯がある。6~8月,枝先に花序を付け,花弁は5枚,白色で直径が10~15mm,平らに開く。実は球形かやや細長く8mm,秋に赤く熟し,がくの跡が実に食い込むように凹む。

写真 ウラジロナナカマドの葉

タカネナナカマド(高嶺七竈) Sorbus sambucifokia (Cham. et Schltdl.)Roemer
 北海道,本州(中北部),千島,サハリン,沿海州,カムチャッカに分布し,高山に生える落葉低木。高さ1~2m。葉は奇数羽状複葉で長さは9~20cm。小葉は4~5対で先はとがり,鋭い鋸歯があり,表面に光沢がある。6~7月に前種より小さな花序を付け,花弁は5枚,白色で少し紅色を帯びる。直径は10~12mm。実は楕円形で10~12mm,秋に赤く熟し,先にがく裂片が直立して残る。

 このほかに道内には滝上町で発見されたアズキナシとナナカマドの雑種と思われるカワシロナナカマド S.×kawashiroi Ko. Ito があり,葉は中程から元側のみ羽状に裂け,裂片は2~4対。名前から樹皮が白い木を想像するが予想に反して黒っぽい。「カワシロ」は採集者名「川代」にちなんでのもの。

写真 ナナカマド,ウラジロナナカマド,タカネナナカマド,アズキナシそれぞれの葉,花,実

木材の性質
 ナナカマドは散孔材で辺心材の境界はほぼ明瞭。辺材は黄白色から淡黄褐色,心材はくすんだ褐色。年輪はほぼ明瞭で肌目は緻密で割裂しにくい。ピスフレックが現れる。アズキナシは散孔材で辺心材の境界は不明瞭,淡紅褐色,年輪はほぼ明瞭で肌目は緻密で割裂しにくい。ときに繊維が波状に乱れて杢(もく)を現すものがあり,ピスフレックがしばしば現れる。

写真 ナナカマド,アズキナシの木材の三断面,表 木材の性質

※上記の数値は「木材利用の多様性を促進するための技術開発:材質科 林産試験場報第9巻第4号 1995」からの引用です。
 木材の性質それぞれの意味については,連載1回目の2007年12月号で説明しています。

主な用途
 ナナカマド,アズキナシの用途はほぼ同じで重硬・強靱なので道具の柄,槌,鉋台などの器具材やパルプなど。
 ナナカマドは成長が早く,実がきれいなことなどから代表的な公園・街路樹として植栽される。林産試験場がある旭川市などで市町村の木に指定されている。アズキナシも公園樹とされる。
 ウラジロナナカマド,タカネナナカマドは低木小径であるため木材としての利用はない。

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・日本の野生植物 木本I:佐竹義輔ら 平凡社 1989
・図説樹木学-落葉広葉樹編-:矢頭献一・岩田利治 朝倉書店 1966
・木の事典第2集第9巻:平井信二 かなえ書房 1981
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976
・新版北海道樹木図鑑[増補版]:佐藤孝夫 亜璃西社 2006

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