一般社団法人 日本森林技術協会
第57回森林技術賞を受賞しました。

受賞者 北海道立総合研究機構
林業試験場森林資源部保護G  主査(鳥獣)  明石 信廣
課題名 エゾシカによる森林被害の防除・軽減に向けた研究と普及
研究概要

森林被害軽減のためのエゾシカの生息密度許容水準の提示
北海道では、1990年代にエゾシカによる農林業被害や生態系への影響等が顕在化し、個体数調整を主とする対策が急務となった。野生動物の個体数管理においては、管理目的に応じた生息密度の目標水準の設定が必要となる。そこで、北海道東部の人工林と天然林において調査を行い、エゾシカの生息密度指標(ライトセンサスデータや狩猟者による目撃数(SPUE))と森林被害の関係を解析し、森林被害軽減の観点からの生息密度の許容水準を提示した。さらに、2000年代以降にエゾシカの生息域が北海道の中央部や北部の多雪地域に拡大したことを受けて、多雪地域における被害の特徴と、それを考慮した許容水準を提示した。

人工林被害の把握手法の確立と効果的な防除技術の提案
幼齢人工林(トドマツ、カラマツ、広葉樹など)のエゾシカ被害について、被害形態や発生実態を調査し、被害実態把握のための現地調査手法を確立した。この手法は、北海道水産林務部が平成18年度から5年間実施した道内民有林でのエゾシカ被害調査(毎年3000か所以上)に活用され、広域の被害実態把握に貢献した。また、枝打ちによって角こすり被害を受けやすくなることを明らかにし、枝打ちで発生する枝条を幹に巻き付けることによる被害防除効果を実証して北海道内での普及に貢献した。幼齢林の被害防除のための忌避剤の適用試験を現地の林業関係者らと協力して実施し、造林木の伸長フェノロジーとエゾシカの食害時期の調査結果に基づき、樹種特性に応じた効果的な適用時期を提案した。

天然林への影響の予測とモニタリング手法の提示
天然林の複雑な構造や動態に及ぼすエゾシカの影響をさまざまなシナリオで予測するシミュレーションモデルを構築し、森林生態系保全の観点からのエゾシカ管理水準の基本的な考え方を提示した。このうち、天然林の更新確保にとって重要な稚樹段階については、エゾシカの樹種嗜好性、食害を受けやすい稚樹サイズ、食害に対する稚樹の反応などに関する野外データを蓄積するとともに、エゾシカの増加の徴候をいち早く捉えるためには稚樹の食痕等を指標とすることが効果的であることから、稚樹等の食痕によるエゾシカ影響の把握手法を提示した。この調査手法は、北海道森林管理局が平成21年度から現在まで全道で実施している天然林のエゾシカ影響に関する広域調査において活用されている。

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