【普及奨励事項】
1.課題の分類 作物育種 分類番号 整理番号 畑作まめ類 分類番号 1-a 整理番号 111-2-1 2.場 所 名 北海道立十勝農業試験場 北海道立中央農業試験場 3.新品種候補系統名 だいず「十育171号」 |
4.来歴
本系統は耐冷性、良質、多収品種の育成を目的として、昭和40年十勝農試において「十育114号」を母とし、「カリカチ」を父として人工交配を行ない、以来選抜固定を図った。昭和47年より生産力を検定するとともに系統適応性試験に供試し、昭和48年より「十育171号」の系統名で地方適否を検定するとともに特性検定試験に供試した。道東、道北地帯では晩熟のため試験を中止し、昭和52年以後、中央農試が道央以南で現地調査を継続実施してきた。昭和54年度で雑種第14代である。
5.特性
(1)形態的特性:主茎長は「キタムスメ」より短い。主茎節数、分枝数は「北見白」より少なく、「キタムスメ」並かそれよりやや少ない。葉形は円葉、花色は白、毛茸は褐色、熟莢は褐色を呈する。子実はやや扁球形で、種皮色は黄白、臍色は「キタムスメ」同様暗褐色、100粒重は30〜32gである。子実の外見的品質は「キタムスメ」並で良好である。
(2)生態的特性:初期生育は「キタムスメ」よりやや劣る。開花期は道央では「キタムスメ」並、成熟期は道央では「キタムスメ」より3〜4日、道東では5〜6日おそい中生の晩に属する。耐倒伏性は「キタムスメ」並。マメシンクイガの被害、ダイズシストセンチュウに対する抵抗性、菌核病、ダイズわい化病の発病程度は「キタムスメ」並。ダイズべと病に対しては抵抗性を示す。開花期における耐冷性は「キタムスメ」並。裂莢性は「キタムスメ」よりやや裂莢し難いが「ワセコガネ」より裂莢し易い。
子実収量は「キタムスメ」に比べて道央では約15%多収であり、極めて高い収量性を示す。子実の粗蛋白、粗脂肪含量は「キタムスメ」より前者でやや高く、後者で並である。
6.試験成績
(1)中央農試における成績 (昭和50〜54年5カ年平均)
系統名 または 品種名 |
開花 期 (月日) |
成熟 期 (月日) |
倒伏 程度 |
主茎 長 (㎝) |
主茎 節数 |
分枝 数 (本/株) |
稔実 莢数 |
一莢内 粒数 |
a当り収量(㎏) | 100 粒重 (g) |
品質 | ||
全量 | 子実重 | 比(%) | |||||||||||
十育171号 | 7.20 | 10.2 | 0.9 | 43 | 11.3 | 4.6 | 72.7 | 1.89 | 65.5 | 34.0 | 114 | 30.5 | 中上 |
キタムスメ | 7.20 | 9.29 | 1.1 | 54 | 11.9 | 4.2 | 60.8 | 2.02 | 56.9 | 30.0 | 100 | 28.9 | 中上 |
北見白 | 7.20 | 10.1 | 1.1 | 53 | 13.3 | 5.6 | 73.2 | 2.05 | 60.3 | 31.9 | 108 | 25.1 | 中上 |
(2)育成地および配布先における成績
試験場所 | 系統名 または品種名 |
試験年次 | 成熟期 (月日) |
主茎長 (㎝) |
子実重 (㎏/a) |
比 (%) |
100粒重 (g) |
品質 |
育成地 | 十育171号 | 昭48〜54 | 10.6 | 51 | 32.8 | 111 | 31.7 | 中上 |
キタムスメ | 10.1 | 6 | 29.3 | 100 | 30.5 | 中上 | ||
北見白 | 10.2 | 54 | 27.6 | 94 | 25.2 | 中上 | ||
原々種農場 | 十育171号 | 昭48〜54 | 9.28 | 43 | 33.3 | 114 | 28.4 | 中上 |
キタムスメ | 9.25 | 53 | 29.2 | 100 | 28.1 | 中上 | ||
北見白 | (9.29) | (53) | (31.1) | (102) | (24.8) | (中上) | ||
上川農試 | 十育171号 | 昭48〜52 | 10.2 | 6 | 36.2 | 117 | 30.2 | 中中 |
キタムスメ | 9.28 | 70 | 31.0 | 100 | 29.4 | 中上 | ||
北見白 | (10.2) | (70) | (29.1) | (97) | (26.6) | 中上 | ||
北見農試 | 十育171号 | 昭48〜51 | 10.9 | 64 | 33.0 | 117 | 30.6 | 中上 |
キタムスメ | 10.4 | 70 | 28.8 | 100 | 28.4 | 中上 | ||
北見白 | 10.6 | 70 | 28.0 | 99 | 24.2 | 中上 |
(3)道央地帯における現地試験の「キタムスメ」に対する熟期差と収量比(%)
市町村名 | 試験年次 | 熟期差(日) | 子実重(㎏/a) | 比(%) | |
深川市 | 52〜54 | 4 | 42.1 | 120 | |
滝川市 | 50〜54 | 6 | 36.3 | 110 | |
新 篠 津 村 |
中篠津 | 54 | 4 | 42.4 | 114 |
平安 | 54 | 6 | 33.0 | 114 | |
西高倉 | 54 | - | 35.5 | 102 | |
平取町 | 52〜54 | 7 | 43.6 | 120 | |
厚真町 | 54 | 0 | 35.9 | 125 | |
伊達市 | 54 | 4 | 32.3 | 133 | |
倶知安町 | 52〜54 | 3 | 28.3 | 135 | |
真狩町 | 52〜54 | 3 | 37.5 | 107 | |
京極町 | 52 | 5 | 31.4 | 123 | |
共和町 | 52〜54 | 5 | 35.2 | 127 | |
蘭越町 | 53〜54 | 5 | 33.5 | 113 |
7.配布しうる種子量 466㎏
8.採用県 北海道
9.栽培適地および普及見込面積
本系統は北海道内各地で「キタムスメ」「北見白」より多収を示すが、成熟期が「キタムスメ」より3〜6日おそいため、大豆生育期間の気温が比較的高い道央中部ならびに道央南部に適する。
対象品種:キタムスメ、北見白。
普及見込面積:1,500ha
10.栽培上の注意
(1)ダイズシストセンチュウに対する抵抗性をもたないので、本線虫の被害の恐れのある圃場での栽培はさける。
(2)ダイズわい化病、マメシンクイガなどの防除は従来の品種と同様に行なうこと。
(3)その他、栽培にあたっての注意事項は「キタムスメ」「北見白」に準じてよい。