【指導参考事項】
1.課題の分類  草・飼 A4
        作物育種 OA
2.場所名  北海道立北見農業試験場(牧草育種指定試験地)
3.新品種候補系統名  チモシー「北見11号」

4.来歴及ぴ育成経過
 北海道在来種日高系、同じく北見系、米国育成品種クライアの3品種系統4,409個体による基礎集団を昭和47年に養成し、昭和50年に熟期、病害、再生等により37個体を選抜し、この選抜個体間の任意交配により得た後代種子をもとに選抜37個体を母系とし、1母系当り31個体、合計37母系1,147個体を選抜集団として養成した。昭和51年に主に熟期により原17母系211個体を選抜し、選抜個体間の任意交配により得た後代種子に北見11号の系統名を付し、昭和52年から昭和54年までの系統適応性検定試験、特性検定試験等に供試した。なお選抜された211個体は保存され、毎年育種家種子の採種が行なわれた。

5.特性の概要
1)熟期 北見11号の出穂始は北海道では6月12日でセンポクより7日早く、東北では5月30日で8日早い。出穂期は北海道では6月18日でセンポクより8日早く、東北では6月3日で14日早い。北見11号はセンポクに比較すると1週間以上熟期の早い極早生群に属する。
2)収量 北見11号の2年間および3年間合計収量はセンポクに比較すると、ともに104の収量比を示し、おおよそセンポクなみの収量といえる。番草別には、1番草収量を出穂期で比較すると北見11号はセンポクよりやや劣り、2番草と3番草でセンポクに勝る。
3)形態的特性 北見11号の草型は直立型で、出穂期における草丈はセンポクと同程度かやや低く、茎は太く、止葉直下の葉は短かく、穂は太くて短かい。
4)生理・生態的特性 北見11号の黒さび病、斑点病、雪腐病による罹病程度は、おおよそセンポクなみかやや高い値を示した。北見11号は3番草においても出穂が認められ、早生型品種と際立った違いを示す。混播草地における北見11号の密度は早生型品種より良好である。
5)採種特性 北見11号の採種量はセンポクなみか、ややこれより低いと考えられる。採種された北見11号の種子は1,000粒重が377mgでセンポク(同334mg)に比較すると明らかに大きい。発芽率、発芽勢は良好で、とくに問題は認められない。
6)飼料価値 1番草を出穂期に、2番草、3番草を一斉刈で採取した試料についての北見11号とセンポクの飼料成分は、1番草は北見11号がやや良好、2番草、3番草ではややセンポクが良好という結果であった。平均的に北見11号とセンポクの飼料価値に大差ないものと考えられる。

6.試験成績
表-1 1番草の出穂始
場所
ならびに
平均
53年 54年
出穂始(月日) センポク
との差
出穂始(月日) センポク
との差


11






LSD
(5%)


11





11






LSD
(5%)


11



根釧 6.17* 6.22 6.22 1.4 5 0 6.15* 6.22 6.23* 0.6 7 -1
北見 6.11* 6.19 6.20* 0.9 8 -1 6.12* 6.18 6.19* 0.7 6 -1
新得             6.13* 6.20 6.20 1.0 7 0
天北 6.12* 6.20 6.21* 0.8 8 -1 6.14* 6.20 6.20 0.9 6 0
北農試 6.9* 6.18 6.18 1.5 9 0 6.7* 6.15 6.16* 0.6 8 -1
北海道
平均
6.12 6.20 6.20 - 8 0 6.12 6.19 6.20 - 7 -1
青森 5.31* 6.9 6.12* 1.9 9 -3 6.2* 6.10 6.11 1.1 8 -1
山形 5.27* 6.5 6.9* 0.8 9 -4       - -  
東北平均 5.29 6.7 6.11 - 9 -4 (6.2) (6.10) (6.11) - (8) (-1)
全平均 6.8 6.16 6.17 - 8 -1 6.11 6.18 6.18 - 7 0
注:*印はセンポクとの間に有意性があることを示す。

表-2 混播草地のチモシー割合
品種系統 1

2

3


北見11号 58.9 55.7 69.1* 59.5
センポク 50.5 46.5 48.9 48.9
ノサップ 53.6 46.1 51.2 51.2
LSD(5%) 15.81 16.96 12.50 14.84
注:53年、54年平均(%)

表-3 2年間(53+54年)合計乾物収量
品種系統 1番草 2番草 3番草 合計
北海道
平均
東北
平均


北海道
平均
東北
平均


北海道
平均
東北
平均


北海道
平均
東北
平均


北見11号 94 90 93* 115* 125* 118* 131* 140* 134* 104 105 104*
センポク 129.8 175.5 142.8 51.7 54.5 52.5 27.9 40.2 31.4 209.2 270.1 226.6
ノサップ 100 98 100 106 103 105 109* 118 112 103 102 103
注:センポクを100とした指数、センポクは実収量(Kg/a)。

表-4 黒さび病抵抗性

品種系統 抵抗性
(%)
やや
抵抗性
(%)
感受性
(%)
判定
53 北見11号 11.4 22.9 65.7 やや弱
ノサップ 34.8 36.2 29.0
50 センポク 2.8 27.8 69.4 やや弱
注:草地試病理研究室資料。

表-5 採種量と採種量に関連する形質
品種系統 採種量
(kg/a)
一穂当種子重
(mg)
1,000粒重
(mg)
発芽勢
(%)
発芽率
(%)
53年 54年 合計 比率 53年 54年 平均 53年 54年 平均 53年 54年 平均 53年 54年 平均
北見11号 7.07 4.83 11.90 95 109 97 103 359* 395* 377 98 100 99 99 100 100
センポク 7.53 5.02 12.55 100 112 83 98 327 340 334 98 100 99 99 100 100
LSD(5%) ns ns ns - ns 26.5 - 27.0 21.8 - ns ns - ns ns -

7.配布しうる種子量  55年1月現在の育種家種子保有量30kg。

8.栽培適地  北海道全域ならびに青森県とする。

9.栽培上の注意  従来からの早生型品種に準ずる。