【普及奨励事項】
(分類番号) (整理番号)
1.課題の分類 畑 作 Ⅰ-a 131-3-1 2.場所名 北海道立根釧農業試験場 3.新品種候補系統名 ばれいしょ根育19号 |
4.来歴
昭和46年,北海道農業試験場において「トヨシロ」を母,「WB66201-10」を父として交配して得た種子を翌年3月分譲をうけ,同年実生を養成した。以後選抜を加え,昭和49年「71014-586」,昭和52年「根系54号」,昭和54年「根育19号」と命名し,でん粉原料用としての生産力,適応性などの検討を加えてきた系統である。
「エニワ」,「北海43号」はS.demissum,「W584454-1」はS.chacoense,
「WB60094-2」はS.phurjaおよびS.chacoenseにそれぞれ由来している。
5.特性
茎長は「紅丸」,「農林1号」並ないしやや高い。茎数,分枝は中位である。茎色は緑で茎よくは直である。花色は極淡い赤紫色で,花弁の先が白い。花数,自然結果が多い。
塊茎の形は偏球である。皮色は淡黄褐色であり,目に極淡い紅色の着色がある。目の深さは浅く,数は多い。尻の深さは中位である。肉色は白く,肉質は固い。
萌芽は「紅丸」よりやや遅い。開花始は「紅丸」とほほ同時にみられる。茎葉黄変期は「紅丸」並であるが,疫病に抵抗性があるため,枯凋期では数日遅れることの多い晩生種である。
いも数は「紅丸」と同程度であるが,上いも平均一個重はやや小さい。このため,収量は9割程度である。でん粉価は「紅丸」に比べ約5%高く,23%程度である。従って,でん粉収量では,「紅丸」,「農林1号」に比べ1,2割増収する。
でん粉を糊化したときの最高粘度は「紅丸」より高い。
疫病抵抗性遺伝子R1R3を保有している。
葉巻病の発生率,病徴の発現程度は「農林1号」並である。
Yウイルス病には非常に感染しにくい。
青枯病には弱く,「男爵いも」,「紅丸」程度である。粉状そうか病には強く,そうか病には一般品種並に罹病する。軟腐病にはやや強い。
ジャガイモシストセンチュウには抵抗性がない。
塊茎の中心空洞はなく,褐色心腐は年によってはわずか発生する。二次生長は年によって発生する。強い打撲によるき裂の発生は他品種より少なく,皮下黒斑やくほみが発生しやすい。
食用に適さない。
休眠はやや長い。
6.試験成績 道内試験研究機関における成績
項目 | 系統名 /場所名 |
根釧 51〜55年 |
北農試 53〜55年 |
北見 52〜55年 |
十勝 52〜55年 |
上川 54,55年 |
平均 |
茎長 (㎝) |
根育19号 | 80 | 73 | 89 | 83(87) | 64 | 79 |
紅丸 | 81 | 66 | 92 | (86) | 81 | ||
農林1号 | 79 | 62 | 86 | 71(74) | 52 | 71 | |
枯凋期 (月・日) |
根育19号 | 10.7 | 9.30 | 10.4 | 9.29(9.30) | 9.21 | 9.3 |
紅丸 | 9.30 | 10.1 | 10.5 | (9.26) | 10.1 | ||
農林1号 | 10.2 | 9.29 | 10.4 | 9.21(9.24) | 9.18 | 9.27 | |
上いも 収量 (%) |
根育19号 | 103 | 97 | 98 | 85(89) | 93 | 96 |
紅丸 | 103 | 117 | 111 | (116) | 112 | ||
農林1号 | 100 | 100 | 100 | 100(100) | 100 | 100 | |
一個重 (g) |
根育19号 | 108 | 114 | 116 | 80(75) | 93 | 101 |
紅丸 | 112 | 109 | 124 | (90) | 109 | ||
農林1号 | 128 | 134 | 142 | 105(97) | 101 | 120 | |
でん粉価 (%) |
根育19号 | 22.5 | 24.1 | 21.7 | 22.2(21.7) | 25.6 | 23.1 |
紅丸 | 16.4 | 19.0 | 16.7 | (15.9) | 17.0 | ||
農林1号 | 16.7 | 19.0 | 17.0 | 17.1(16.3) | 19.7 | 17.7 | |
でん粉 収量 (%) |
根育19号 | 136 | 125 | 127 | 111(121) | 123 | 126 |
紅丸 | 101 | 117 | 109 | (113) | 110 | ||
農林1号 | 100 | 100 | 100 | 100(100) | 100 | 100 |
注.十勝の( )は52.53年の平均
7.保有種いも量:
8.奨励品種採用予定県:北海道 500kg
9.栽培適地及び普及見込面積:北海道のでん粉原料用ばれいしょ地帯 10,000ha
10.栽培上の注意
1)茎長などの地上部繁茂量は「紅丸」や「農林1号」とほほ同様であるので,栽培管理はこれらに準じて行うこと。
2)疫病抵抗性遺伝子R1R3を保有しているので,疫病防除回数を若干減ずることができるが,発病をみたばあいは通常の防除が必要である。
3)ジャガイモシストセンチュウに対する抵抗性はないので,その発生地帯では「紅丸」と同様の扱いをすること。
4)でん粉価が高いため,強い打撲にあうと,塊茎の表面にくほみや黒変を生じることがあるが,その後腐敗することはほとんどない。しかし,採種栽培では,これらの傷害の発生を防ぐため,収穫機の扱いなどに注意すること。