【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号 1-a  整理番号 111-1-2
2.場 所 名  北海道立中央農業試験場  作物名 大豆 年次 昭和56年
3.新品種候補系統名  だいず「中育9号」

4.来 歴
 本系統は昭和43年北海道立中央農業試験場において、白目、大粒、多収品種の育成を目的として、白目、多岐、中粒種の「オシマシロメ」を母とし、白目、大粒系統の「十交3612」(F7)を父として人工交配を行い、以来選抜固定を図ったものである。
 昭和48年より「中系27号」(F5)の系統名で生産力検定予備試験を行い、系統適応性検定試験に供試した。昭和50年より「中育9号」(F7)の系統名で生産力検定試験を行うと同時に関係機関に配布し、奨励品種決定基本調査ならびに現地調査に供試し、適応性の検定を行った。昭和56年度においてF13である。

5.特 性
 形態的特性:胚軸色は紫、小葉の形は円葉、花色は紫、毛茸色は白、莢色は淡褐である。主茎長は「ユウヅル」より短かく、主茎節数は少ない。分枝数、稔実莢数は「ユウヅル」より多い。1爽内粒数は約20粒で「ユウヅル」より多い。子実の大きさは100粒重でおおよそ37gであり、「ユウヅル」より小さいが大の中に属する。子実の粒揃いは「ユウヅル」なみに良好で、子実のしわ粒、裂皮粒の発生は「ユウヅル」なみかやや少なく、外見的品質は良好である。
 生態的特性:出芽は「ユウヅル」に比し整一で、開花期は「ユウヅル」より3〜5日早いが、成熟期は「ユウヅル」なみかややおそく、結実日数が「ユウヅル」より4〜6日長い晩生種である。収量性は「ユウヅル」より高く、6個年平均で育成地では12%、奨励対象地域では11過〜23%多収を示した。増肥効果は比較的小さいが、栽植密度に対する反応は顕著で密植栽培による増収効果は大きい。耐倒伏性は「ユウヅル」よりやや強い。
 マメシンクイガの被害は「ユウヅル」なみに多い。ダイズわい化病に対しては「ユウヅル」同様に感受性であり、ダイズウイルス病にも感受性である。ダイズシストセンチュウに対しては観察上から感受性と思われる。
 子実の粗蛋白質含量は「ユウヅル」とほぽ同程度であり、粗脂肪含量は「ユウヅル」よりやや高い。

6.試験成績
 1)特性調査
系統・品種名 胚軸色 小葉の形 花 色 毛茸色 莢の大きく 粒 形 種皮色 臍 色 子実の大きさ 伸育型
中育9号 淡 褐 扁 球 黄 白 大の中 有 限
ユウヅル 極 大

2)育成地における成績(標準栽培)
系統
または
品種名
開花期
(月・日)
成熟期
(月・日)
主茎長
(㎝)
主茎
節数
(節)
分枝数
(本/株)
稔実
爽数
(莢/株)
1爽内
粒数
(粒)
倒伏
程度
収 量
(㎏/a)
子実重
対標準比
(%)
100
粒重
(g)
屑粒率(%) 品質
全重 子実重
中育9号 7.27 10.16 58 13.2 5.2 60.7 2.00 0.9 67.1 33.4 112 37.3 2.4 上下
ユウヅル
(標準品種)
7.31 10.16 65 15.1 4.6 57.6 1.75 1.7 60.1 29.9 100 41.7 3.9 上下
 注)1.昭和50〜56年のうち昭和51年を除く6個年平均。
 2.栽植密度は833株/a(60×20㎝)、1株2本立。

3)北海道南部における成績
試験場所 系統
または
品種名
開花

(月・日)
成熟

(月・日)
主茎

(㎝)
分枝

(本/株)
稔実
爽数
(莢/株)
倒伏
収量
収量(kg/a) 子実重
対標準比
(%)
100
粒重
(g)
屑粒率
(%)
品質
全重 子実重
道南農試 中育9号 7.26 10.5 65 6.5 79.3 1.2 80.6 34.3 122 36.3 1.7 中上
ユウヅル 7.29 10.2 70 5.1 61.5 1.6 69.6 28.1 100 39.9 2.5 中上
北檜山町 中育9号 7.31 10.13 68 6.2 54.7 0.6 64.5 28.1 111 37.3 1.8 中上
ユウヅル 7.31 10.13 78 4.7 41.2 0.7 57.1 25.3 100 41.0 3.3 上下
厚沢部町 中育9号 7.28 10.15 57 4.1 49.2 0 59.3 28.2 114 37.2 7.1 中上
ユウヅル 7.28 10.11 60 4.0 43.9 0 49.4 24.8 100 41.5 8.1 中上
木古内町 中育9号 8.2 10.18 48 5.3 48.1 0.5 43.8 20.1 123 34.3 4.9 上下
ユウヅル 8.5 10.15 56 5.8 45.7 1 38.6 16.3 100 38.9 7.2 中上
 注)1.道南農試、北桧山町は6個年平均(昭和50、52〜56年)、厚沢部町は5個年平均
 (昭和50、52〜55年)、木古内町は2個年(昭和55、56年)のデータを示す。
 2.栽植密度は、道南農試、北桧山町が833株/a(60×20㎝)、厚沢部町、木古内町が694株/a(60×24㎝)、いずれも1株2本立。

7.配布しうる種子量  173㎏

8.採用予定県  北海道

9.栽培適地および普及見込面積  北海道南部(渡島、桧山)およびこれに準ずる地帯、1,000ha

10.栽培上の注意
 1)種子消毒を行うとともにダイズわい化病、マメシンクイガなどの防除は他の品種と同様に行うこと。
 2)ダイズシストセンチュウに対しては感受性であるので、ダイズシストセンチュウの発生している圃場の栽培はさけること。また連作はしないこと。
 3)疎植よりは密植によって多収が得られるので、a当り800株程度以上の栽植密度を確保すること。
 4)その他、栽培にあたっての注意事項は「ユウヅル」に準じてよい。