【普及奨励事項】
Ⅰ 摘 録
1.空育111号の特性概要
| 系統名 | 空育111号 | 組合せ | (北海230号×巴まさり)×空育99号 | ||
| 特性 | 長所 1良質、良食味 2早熟性 |
短所 1いもち耐病性が「イシカリ」に劣る 2収量が「ともゆたか」より少ない |
|||
| 採用県および 普及見込面積 |
北海道 20,000ha | ||||
| 品種名 /形質 |
空育111号 | 対 象 イシカリ |
対 象 ともゆたか |
比 較 キタヒカリ |
比 較 はやこがね |
| 早晩生 | 早の晩 | 中の早 | 中の早 | 中の中 | 早の早 |
| 草型 | 偏穂数型 | 偏穂数型 | 穂数型 | 偏穂数型 | 穂数型 |
| 出穂期 | 8月6日 | 8月8日 | 8月7日 | 8月11日 | 8月5日 |
| 成熟期 | 9月29日 | 10月4日 | 10月3日 | 10月5日 | 9月30日 |
| 結実日数 | 54日 | 57日 | 57日 | 5日 | 56日 |
| 稈長 | 60㎝ | 63㎝ | 61㎝ | 64㎝ | 62㎝ |
| 穂長 | 17.7㎝ | 18.1㎝ | 17.3㎝ | 16.6㎝ | 15.3㎝ |
| 穂数 | 20.4本 | 19.4本 | 24.1本 | 22.9本 | 26.6本 |
| 芒性 | 無 | 無 | 稀短 | 無 | 稀短 |
| ふ先色 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 |
| 脱粒性 | 難 | 難 | 難 | 難 | 難 |
| 耐倒伏性 | や強 | 強 | や強 | や強 | 中 |
| 耐冷性(障害) | や強 | や強 | や強 | 中〜や強 | 強 |
| 葉いもち耐病性 | 中 | や強 | 中 | や弱 | 中 |
| 穂いもち耐病性 | 中 | や強 | 中〜や強 | や弱 | 中 |
| 玄米重(a当) | 48.6kg | 50.7kg | 53.8kg | 47.7kg | 47.6kg |
| 玄米千粒重 | 21.5g | 23.1g | 23.3g | 21.9g | 21.0g |
| 玄米品質 | 上中下 | 上下上 | 上中下 | 上中下 | 上下中 |
| 玄米等級 | 2上 | 3上 | 3上 | 2下 | 2下 |
| 食味 | 上下 | 中上 | 中上 | 上下 | 中中 |
| 食味特性(1) | 97 | 106 | 106 | 100 | 98 |
| 〃 (2) | 435B.u. | 326B.u | 362B.u. | 398B.u. | 358B.u. |
| 調査地 | 北海道立中央農業試験場稲作部(岩見沢市) | ||||
| 調査年次 | 1980〜1982年の3か年(中苗、標肥) | ||||
| 品種候補名 | |||||
2.空育111号の特記すべき特徴
早生、良質である。すなわち、出穂期・成熟期は、「イシカリ」、「ともゆたか」より2〜3日早く、玄米品質ならびに食味は、「キタヒカリ」並である。耐倒伏性と耐冷性は、「ともゆたか」と同じであり、いもち耐病性は「イシカリ」に劣るが、「キタヒカリ」を多少上回る。
3.本系統を奨励品種として採用する理由
現在、道央地帯における水稲の基幹品種は「イシカリ」、「ともゆたか」ならびに「キタヒカリ」で、これら3品種は道央地帯で約90%を占める。
このうち、「イシカリ」「ともゆたか」は、共に安定、多収性品種であるが、これらの品種は1等米の出荷率がひくくて、食味も不十分である。一方、「キタヒカリ」は、1等米の出荷率が高く、かつ良食味である。しかし、「キタヒカリ」は収量がひく、、耐冷性・いもち耐病性が他の基幹品種に比べて弱く、かつ、出穂期が「イシカリ」「ともゆたか」より3〜4日おそいことから過大な作付は危険である。特に、「キタヒカリ」は出穂期がおくれ易い地帯には不向きである。
「空育111号」は、熟期が「イシカリ」「ともゆたか」より早く、早生の晩に属し、玄米品質と食味は、「キタヒカリ」と同等であり、収量は「キタとカリ」並かこれを多少上回る。したがって、「空育111号」を道央地帯1),2)において「イシカリ」と「ともゆたか」の一部におきかえて作付し、良質米の生産に資する。

1)栽培適地 空知、石狩、後志、胆振、
上川、留萌。
2)これらの地帯には「イシカリ」
(約33,000ha)、「ともゆたか」
(約30,000ha)が63,000haあり、この
うち約30%を「空育111号」でおきかえる。