【普及奨励事項】
1.課題の分類  草・飼 奨励品種候補
2.場所名  北海道立十勝農業試験場
3.新品候補系統名  サイレージ用トウモロコシ「道交S4号」

4.来  歴
 十勝農試において,昭和47年にTo9×To15を種子親とし,W79A×RB262を花粉親として育成されたフリント種×デント種の複交配一代雑種である。
 昭和48年より育成地で生産力検定を開始し,昭和50年から「十交131」の系統名を付し,育成地,現地選抜圃,道内試験機関で検討した。昭和52年からは「道交S4号」の配布系統名で道内の各試験機関および現地試験に供試した。
 昭和52年から岩手県農試においてすす紋病抵抗性検定試験,昭和54年から山形畜試においてごま葉枯病抵抗性検定試験に供試した。また昭和57年には草地試験場において飼料成分の分析を行った。

5.特性の概要
 「ワセホマレ」と「C535」の中間熟期の早生品種で,初期生育の旺盛な多収系統である。
 1)発芽および初期生育:既存品種中最も良好な「ワセホマレ」に匹敵し,「C535」を上廻る。
 2)収量性:乾物総重,TDN収量は「ワセホマレ」より明らかに高い。「C535」に対しては乾物総重はほぼ同等であるが,乾雌穂重歩合が高いのでTDN収量は勝っている。また乾物中TDN割合は「ワセホマレ」並に高く,サイレージ用原料としてもすぐれている。
 3)耐倒伏性と茎葉の特性:早生品種中比較的耐倒伏性の「C535」に比較して,同等以上の抵抗性を示し,「ワセホマレ」に匹敵する。稈長は「ワセホマレ」より高く,「C535」よりやや高いが,着雌穂高は中位である。稈径は中位で,早生品種の中では太目である。
 4)熟期と収穫時の熟度:絹糸抽出期は「ワセホマレ」より1〜2日遅く,「C535」と同等か1日早い。登熟の進度は良好で,刈取時の乾物率も「ワセホマレ」についで高い。
 5)耐病性:すす紋病に対しては「ワセホマレ」,「C535」よりもやや弱く,同一熟期の輸入品種並である。ごま葉枯病に対しては「ワセホマレ」と同等で「C535」よりやや弱い。
 6)採種性:同時播種が可能である。種子親:花粉親の畦比は4:1で良く,採種量は500kg/10a程度が見込まれる。また種子親はフリント種であり,雌穂の乾燥も容易である。

6.試験成績(昭52〜57年平均)
形質 試験場所
/品種名
道内試験機関 現地試験
(札
幌)






(浜

別)
(天
塩)

鹿












(月・日)
道交
S4号
5/28 5/30 5/25 6/2 6/8 6/7 6/4 6/5 5/24 6/2 6/4 6/6 6/5 6/3 6/8 6/7
ワセ
ホマレ
28 29 24 2 4 6 4 5 23 1 2 6 5 2 9 6
C535 29 30 25 3 9 7 4 5 25 2 5 7 6 3 9 8




(1良

5否)
道交
S4号
2.3 1.5 1.0 1.6 1.3 1.7 1 1.5 1.2 1.0 1.0 1.0 1.6 1.0 1.3 1.0
ワセ
ホマレ
2.2 1.7 1.2 1.5 1.2 1 2 1.5 1.5 1.0 1.2 1.5 1.8 1.8 1.5 2.5
C535 2.7 3.2 2.2 3.3 3.2 2.3 2.7 2.8 2.8 3.2 3.3 2.5 2.6 2.0 2.8 2.5
1)




道交
S4号
Y1
〜2
R Y3 Y3 Y1
〜2
D1
〜2
Y2
〜3
Y2
〜3
Y2
〜3
Y3 D2
〜3
Y
〜R
Y2
〜3
Y2
〜3
D3
〜Y1
Y3
ワセ
ホマレ
Y2 Y2
〜3
D2
〜3
Y
〜R
R Y
〜R
Y1 Y3 Y1 R
C535 Y1
〜2
Y1
〜2
Y1 D1
〜2
Y2 Y1 Y2 Y2
〜3
D2 Y1
〜2
Y1
〜2
Y1
〜2
D3 Y〜R


(%)
(折損
を含む)
道交
S4号
14.9 9.4 17.2 5.2 23.6 9.8 17.2 4.7 13.2 5.6 0 10.3 4.8 1.0 18.1 8.0
ワセ
ホマレ
17.6 15.2 7.5 6.6 24.9 14.4 19.0 10.2 21.8 7.1 2.7 9.8 8.0 0.6 22.6 12.8
C535 14.8 17.5 14.2 4.1 27.7 9.4 12.7 4.5 18.2 8.4 0.8 13 8.6 2.3 26.8 17.9







(%)


道交
S4号
110 113 102 110 108 109 106 108 108 106 110 114 113 106 111 108
C535 111 118 104 106 107 108 112 105 116 102 100 114 106 108 113 104
T
D
N

道交
S4号
110 113 104 111 107 109 106 107 107 105 109 113 114 107 110 108
C535 109 118 104 104 105 106 111 104 114 100 98 113 105 107 110 104



(%)
道交
S4号
28.3 32.7 27.7 27.5 24.2 21.6 28.3 25.6 27.7 25.7 22 25.3 27.5 25.8 21.7 25.7
ワセ
ホマレ
28.3 34.1 29.7 27.9 25.4 20.9 29.8 26.5 32.1 26.5 21.9 25.8 29.2 27.1 22.3 26.7
C535 27.0 29.8 26 25.1 22.9 19.8 27.4 23.4 26.7 23.7 19.8 23.2 25.6 24.9 21.4 24.7

病害抵抗性 試験機関 道交4号 ワセホマレ C5352)
すす紋病 岩手県農試 中〜強 (弱〜中)
ごま葉枯病 山形県畜試 (中)
注1)D13:糊初〜後
   Y13:黄初〜後
   R   :完熟
注2)56年を除く5年平均

7.配布し得る種子量
 自殖系統:2.4〜50kg,単交配:7〜34kg,道交S4号:180kg。

8.採用予定県:北海道

9.栽培適地及ぴ普及見込面積:道東・道北部と道央北部のサイレージ用として栽培する。ただし不安定地帯を除き,「C535」の栽培可能な地域および一部「ワセホマレ」と配合して栽培する。普及見込面積:16.000ha。

10.栽培上の注意:
 低温発芽性が良好なので早播きの有利性がある。その他については一般栽培品種に準じて良い。ただし過度の密植は雌穂重,乾物率の低下を招き,必ずしも栄養収量の増加につながらないので6500本/10a内外の栽植本数を守る。また,「ワセホマレ」よりすす紋病抵抗性が弱いので,適期播種と適正な肥培管理につとめ,健全な生育をはかることが大切である。施肥法では,加里および窒素の欠乏は本病の発生を助長するので,推厩肥を十分に施用し,窒素は分施をするなど,肥料切れを起きないようにする。また,連作はできるだけ避け,圃場の清潔をはかることが大切である。