【普及奨励事項】
1.課題の分類:
2.場 所 名:北海道立十勝農業試験場・豆類第1科
3.薪品種候補系統名:だいず十育191号

4.来   歴:
 「だいず十育191号」(以下「十育191号」と略す)は,北海道の基幹品種である白目中〜大粒でダイズシストセンチュウ抵抗性強の「トヨスズ」より早熟で多収な品種の育成を目標とし,昭和46年に北海道立十勝農業試験場において「だいず十系463号」を母,「トヨスズ」を父として人工交配し,以後選抜,固定を図ってきた系統である。昭和53年から「十系600号」の系統番号を付し生産力検定予備試験(A)および系統適応性検定試験に供し,昭和55年から「十育191号」の系統名で生産力検定試験,道内関係機関の奨励品種決定基本調査および特性検定試験等に供し,さらに昭和56年から道内各地の奨励品種決定現地調査に供してきた系統で,昭和59年にはF13代である。

5.特  性:
 胚軸の色および花色は紫,小葉は円葉で,毛茸色は白である、主茎長は「トヨスズ」と同様の短茎,分枝数は「トヨスズ」より多く“中”である。伸育型は有限で,熟莢色は淡褐を呈する。
 粒の形,大小,子葉色および光沢は,いずれも「トヨスズ」と同じで,各々扁球,大の小,黄および弱である。また,種皮および臍の色も「トヨスズ」と同じく各々黄白および黄である。外観上の品質は「トヨスズ」よりやや優る。
 成熟期は,「トヨスズ」よりやや早く,同品種が“中の晩”に分類されるのに対し,「キタムスメ」並の中生種である。生態型は夏大豆型に属す。子実収量は「トヨスズ」を上回る。子実成分は,粗蛋白含有率が「トヨスズ」よりやや低いが“中”,粗脂肪含有率が「トヨスズ」並で“低”と分類される。食品用としての加工適性は「トヨスズ」と同程度と認められる。マメシンクイガ,ダイズシストセンチュウおよび低温に対する抵抗性は,いずれも「トヨスズ」と同じで,各々“弱”,“強”および“中”である。ダイズ茎疫病抵抗性は,道内から収集されたレースPm・1に対し“中”Pm・21,Pm・25およびPm・29に対しいずれも“強”であるが,山形県から収集されたレースPm・55に対しては“弱”である。一方,ダイズ黒根病に対する抵抗性は“強”であり,抵抗性弱の「トヨスズ」との区別は容易である。裂莢の難易は「トヨスズ」同様“易”であり,倒伏抵抗性は同品種と同じく“強”である。

6.試験成績
 1)育成地における試験成績
系統名
および
品種名
開花期
(月日)
成熟期
(月日)
生茎長
(㎝)
分枝数
(本/株)
倒伏
程度
稔実
莢数
(莢/株)
子実重 百粒重
(g)
品質 試作年
(昭和)
kg/a 標準
対比
(%)
十育191号 7.23 10.2 51 4.6 52.6 27.5 102 32.5 上下 55〜59
トヨスズ(標準) 7.23 10.7 48 3.8 48.2 26.9 100 31.5 中上 55〜59
ヒメユタカ(比較) 7.27 10.6 66 4.7 50.0 28.0 104 34.6 中上 55〜59
注)標準播による。

2)普及見込地帯における試験成績



系統名
または
品種名
開花期
(月日)
成熟期
(月日)
主茎長
(cm)
分枝数
(本/株)
倒伏
程度
稔実
莢数
(莢/株)
子実重 百粒重
(g)
品質 試作年
(昭和)
kg/a 標準対
比(%)



十育191号 7.28 9.28 61 4.0 57.9 26.1 106 30.9 上下 57〜59
トヨスズ
(標準)
7.28 10.3 54 3.9 53.3 24.6 100 30.7 中上 57〜59
ヒメユタカ
(比較)
7.31 10.3 84 3.3 64.3 25.2 102 32.3 上下 57〜59



十育191号 7.31 10.4 54 3.8 49.7 21.3 107 30.7 中上 56〜59
トヨスズ
(標準)
7.31 10.9 51 3.7 44.3 19.9 100 29.5 中上 56〜59
ヒメユタカ
(比較)
8.1 10.8 69 3.5 50.2 20.7 104 32.8 上下 56〜59


沿
十育191号 8.3 10.5 49 3.8 49.9 21.6 103 30.5 中上 56〜59
トヨスズ
(標準)
8.3 10.11 42 3.4 47.9 20.9 100 30.3 中上 56〜59
ヒメユタカ
(比較)
8.5 10.11 63 3.4 48.0 19.3 92 32.4 上下 56〜59
注1)標準播による。
 2)十勝中部は本別町,幕別町,十勝山麓は新得町,鹿追町,上士幌町,十勝沿海は豊頃町,大樹町に
  おける現地試験の平均である。

7.配布しうる種子量:原原種53㎏,原種720kg,その他40㎏

8.採用予定県:北海道

9.適地および普及見込面積:
  北海道十勝地方およびこれに類似の地帯。4,000ha(昭和64年)。

10.栽培上の注意:
 ① 種子消毒は従来の品種同様に行う。
 ② ダイズわい化病およびマメシンクイガなどの防除は,従来の品種と同様に行う。
 ③ ダイズシストセンチュウに対して「トヨスズ」並の抵抗性をもっているが、連作あるいは短期の輪作はさける。
 ④ ダイズ茎疫病に対する反応は,レースにより異なるので注意が必要である。
 ⑤ その他の肥培管理は,従来の品種に準じて行う。
注)標準播による。