【普及奨励事項】
1 課題の分類 分類番号 整理番号 2 場 所 名 北海道立北見農業試験場 作物名 えん豆 年次 昭和59年 3 薪品種候補系統名 えん豆「北育43号」 |
4 来 歴
えん豆「北育43号」は昭和47年(1972年)に北海道立北見農業試験場において短茎、良質多収を主要育種目標として、「北育36号」を母に「改良青手無」を父として人工交配し、翌年F1を養成、F2〜F3は集団養成、F4で個体選抜を行い、F5以降、系統の養成と選抜を続け、固定をはかってきたものである。
昭和53年(1978年)からは「3001」の系統名で生産力検定予備試験に供し、昭和55年(1980年)からは「北育43号」の系統名で生産力検定試験に繰り入れ、同時に特性検定試験(細菌病等)、地域適応性検定試験にも供試し、各種特性ならびに地方適否を確かめてきたものである。
なお昭和59年度における世代はF12である
5 特 性
形態的特性:草丈は「改良青手無」よりも低く「大緑」と同じかやや低い。この為、草姿は「大緑」同様わい性に属する。節間長は「改良青手無」より短く「大緑」並である。 分枝数は「改良青手無」程度で「大緑」よりも多い。分枝は「大緑」と同じく下位節より発生し、「改良青手無」のように上位の節から発生する事はない。
葉色は「改良青手無」より濃く「大緑」と同じ色をおびる。茎は「改良青手無」より細く「大禄」程度である。色素(アントシアン)は発生しない。
花の色は白く「改良青手無」、「大緑」同様であるが、花の大きさは「改良青手無」よりは小さく「大禄」並である。
さやの長さは「改良青手無」、「大緑」よりも短く、幅は「大禄」並で「改良青手無」より狭い。さやの先端の形状は「改良青手無」、「大緑」のような先つまり型ではなく若干とがる傾向にある。
種子は「改良青手無」、「大緑」同様に大粒種に属するが「大緑」ほどの大きさ、百粒種はなく、「改良青手無」よりやや大きい。この他の特性は「改良青手無」、「大禄」と同じである。
生態的特性:成熟期は「改良青手無」、「大緑」同様に晩生種で、耐病性(細菌病)は「大緑」よりは強く、「改良青手無」と同程度である。
収量性は「改良青手無」、「大緑」よりも高い。
加工適性:用途は子実用で、その加工適性は「改良青手無」と同等であり、「改良青手無」と同様に利用できる。
6 試験成績
1)育成地における成績(標準栽培)
品種名 または 系統名 |
開花 始 (月日) |
成熟 期 (月日) |
倒伏 程度 |
成熟期における | 総重 (kg/a) |
子実 重 (kg/a) |
同左 比 (%) |
百粒 重 (g) |
屑豆 歩合 (%) |
品質 | ||||
草丈 (cm) |
主茎 節数 |
分枝 数 |
着莢 数 |
一莢 粒数 |
||||||||||
北育43号 | 7.5 | 8.18 | ヤヤ多 | 86 | 21.9 | 2.9 | 35 | 3.52 | 63.3 | 32.6 | 135 | 35 | 11.2 | 3上 |
改良青手無 | 7.3 | 8.15 | ヤヤ多 | 103 | 23.4 | 3.2 | 38.3 | 2.82 | 57.7 | 24.1 | 100 | 33.4 | 7.1 | 2下 |
大緑 | 7.5 | 8.18 | ヤヤ多 | 90 | 23.4 | 2.4 | 27.3 | 3.64 | 60.7 | 27.3 | 113 | 40.5 | 14.4 | 3上 |
2)地域適応性試験
試験場所 | 系統名 または 品種名 |
子実重 (kg/a) |
同左 比 (%) |
百粒 重 (g) |
品質 |
上川農試 | 北育43号 | 30.4 | 135 | 32.1 | 2下 |
改良青手無 | 22.5 | 100 | 31.3 | 2下 | |
大緑 | 23.1 | 103 | 35.6 | 2下 | |
十勝農試 | 北育43号 | 19.2 | 122 | 32.5 | 3中 |
改良青手無 | 15.7 | 100 | 32 | 3中 | |
大緑 | 16.3 | 104 | 36.4 | 3上 |
3)現地試験
試験場所 | 系統名 または 品種名 |
子実重 (kg/a) |
同左 比 (%) |
百粒 重 (g) |
品質 |
女満別町 | 北育43号 | 31.2 | 123 | 32 | 3上 |
改良青手無 | 25.3 | 100 | 29.8 | 3上 | |
大緑 | 24.4 | 96 | 35.8 | 3上 | |
中札内村 | 北育43号 | 11.2 | 127 | 30.4 | 3下 |
改良青手無 | 8.8 | 100 | 28.3 | 3下 | |
大緑 | 4.8 | 55 | 32.6 | 3下 | |
美瑛町 | 北育43号 | 28.8 | 116 | 33.5 | 3上 |
改良青手無 | 24.9 | 100 | 32.7 | 3上 | |
大緑 | 25.8 | 104 | 37.4 | 3上 |
4)細菌病に関する試験
品種名 または 系統名 |
試験年次(昭和) | 平均 | |||
55 | 56 | 57 | 59 | ||
北育43号 | 11.3* | 13.8** | 0.8** | 7.1* | 8.3** |
改良青手無 | 5.6** | 11.9** | 1.2** | 7.5* | 6.6** |
大緑 | 20.9 | 23.5 | 5.6 | 16.3 | 16.6 |
7 配付しうる種子量 69.5kg
8 栽培適地及び普及見込面積 北海道全域のえん豆栽培地 300ha
9 栽培上の注意
慣行の栽培法に準ずるが、従来の青えん豆と同様の長期輪作を要する。