【普及奨励事項】
1.課題の分類:
2.場 所 名:北海道立北見農業試験場、北海道立天北農業試験場、
       北海道立根釧農業試験場、北海道立新得畜産試験場、北海道立滝川畜産試験場
3.薪品種候補系統名:二条大麦「北育18号」
4.来   歴
 「北育18号」は、昭和48年に北海道立北見農業試験場において、多岐の「ほしまさり」を母とし短強稈・多収の「栃系28」を父とする交配による雑種後代から育成された。F1及びF2養成を同年度内に冬期間温室で行った。翌年、F3養成を圃場で行ったのちF4を冬期間鹿児島県で栽培し、昭和50年圃場にて個体選抜を行った。
 昭和51年には系統選抜を行い、昭和52年以降は「北系5259」として系統の固定をはかるとともに、生産力検定予備試験を実施した。その結果、有望と認められたので、昭和54年3月、 「北育18号」の地方番号を付して関係機関に配付し、同時に、生産力検定試験及び特性検定試験を実施し、昭和55年より現地試験に編入し、地方適否を検討してきた。昭和55年からは北海道立天北農業試験場において、さらに、昭和59年からは関係試験機関並びに現地において、飼料用としての適否を検討してきた。昭和61年度における世代はF16である。

5.特   性
 形態的持性:株は閉じており稈長は「ほしまさり」より短く、葉色はやや濃い。穂長は「ほしまさり」よりやや長いが、穂数はやや少なく、一穂粒数はやや多い。穂型は矢羽根型で、穂の抽出度は「ほしまさり」より少なく、中程度である。穂には長芒があり、ふの色は淡黄である。粒型は中で、粒は大粒であり、千粒重は大きく、リットル重は「ほしまさり」とほぽ同等のやや大で、原麦粒の見かけの品質は中の上である。
 生態的特性:出穂期は「ほしまさり」とほぽ同じで、成熟期は「ほしまさり」より1日程度 遅く中生に属する。耐倒伏性は「ほしまさり」より強い。大麦雲形病抵抗性及び大麦網斑病抵抗性は「ほしまさり」よりやや弱い。成熟期における総重、子実重は「ほしまさり」よりやや多く、子実重歩合はrほしまさり」より高い。
 飼料・成分特性:糊熟期におけるホールクロップの乾物収量は「ほしまさり」とほぼ同等で、穂重歩合は「ほしまさり」より高い。乾物注の粗蛋白質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、およびNFE含有率、乾物消化率は「ほしまさり」とほぼ同等である。

6.試験成績
1)育成地における成績(標準栽培)
系統名
又は
品種名
出穂期
(月・日)
成熟期
(月・日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/㎡)
倒伏
程度
総重
(kg/a)
同左

(%)
子実重
(kg/a)
同左

(%)
千粒重
(g)
北育18号 7.7 8.9 97 6.6 477 109.0 105 40.9 110 46.9
ほしまさり 7.7 8.8 102 6.0 510 103.5 100 37.1 100 43.3
注)昭和54年〜61年中、昭和58年を除く7か年の平均値

2)飼料用栽培による成績(飼料用麦類系統選定試験)(糊熟期)
試験
場所
系統名
又は
品種名
出穂期
(月・日)
糊熟期
(月・日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/㎡)
倒伏
程度
生草
収量
(kg/a)
乾物
収量
(kg/a)
対標
準比
(%)
穂重
歩合
(%)
天北
農試
北育18号 7.14 8.8 92 6.4 508 239 83.1 98 46.2
ほしまさり 7.15 8.8 100 5.9 546 258 84.8 100 40.8
根釧
農試
北育18号 7.15 8.8 101 6.8 486 257 84.3 100 38.9
ほしまさり 7.15 8.8 109 6.3 567 258 84.5 100 37.5
新得
畜試
北育18号 7.8 7.30 98 6.8 403 338 84.7 102 32.0
ほしまさり 7.8 7.30 101 6.7 419 328 83.4 100 30.0
滝川
畜試
北育18号 6.26 7.18 71 6.8 408 202 74.8 99 48.5
ほしまさり 6.26 7.18 82 6.1 468 198 75.7 100 51.1
注)天北農試は昭和56〜61年の平均、他は昭和59〜61年の平均。穂長は成熟期の調査。

3)糊熟期におけるホールクロップの飼料成分含有率(%)
系統名
品種名
水分 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 粗灰分 NFE 乾物
消化率
北育18号 64.6 8.8 1.9 24.3 6.1 58.9 64.7
ほしまさり 66.2 8.4 2.1 24.8 6.3 58.4 66.2
注)昭和59〜61年の平均。水分は現物中、他成分は乾物中の値。

7.配付しうる種子量  原原種:35kg 原種2,000kg

8.栽培適地及び普及見込み面積
   全道一円。普及見込み面積 2,300ha

9.栽培上の注意事項
1)耕種法は当面各試験地の標準的な耕種法を準用する。
2)従来の春播大麦同様、早期播種を励行する。
3)大麦網斑病にやや弱いので、種子消毒を徹底し、連作を避ける。