【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号  整理番号
2.場所名:北海道立中央農業試験場 作物名:大豆 年次:昭和62年
3.新品種候補系統名:だいず「中育19号」

4.来歴
 だいず「中育19号」は、道央地方に適する納豆用小粒種の育成を目標として昭和50年に北海道立中央農業試験場において「十育153号」を母、「納豆小粒」を父として人工交配し、以降選抜、固定を図ってきた系統である。
 昭和58年に「中系108号」として系統適応性検定試験に供試した結果、良い成績が得られた。昭和59年に「中育19号」の地方名を付して、生産力検定試験およぴ関係農試の奨励品種決定基本調査、特性検定試験および納豆加工適性試験に供試し、昭和60年から奨励品種決定現地調査に供試した。昭和62年にはF12代である。

5.特性
(1)形態的特性:胚軸色は紫、小葉の形は長葉、花色は紫、毛茸の色は白、直毛、その多少 は中程度である。主茎長は「スズヒメ」よりやや長く、主茎節数はやや多く、分枝数も多い。伸育型は有限で、熟莢色は淡褐である。粒形は「スズヒメ」のやや扁球に比べ球である。粒の大きさは、「スズヒメ」よりやや大きいが、小粒種に属する。種皮およぴ瞬の色は「スズヒメ」と同じく、それぞれ黄である。外観上の品質は「スズヒメ」より優る。

(2)生態的特性:開花期は「キタムスメ」より4日、「スズヒメ」より2日それぞれ遅い。成熟期は「スズヒメ」より4日遅く「キタムスメ」より4日早い中生種である。生態型は夏大豆に属する。子実重は、育成地では4箇年平均で「スズヒメ」より21%多収であるが、「キタムスメ」より5%劣った。また、多肥およぴ密植適応性検定試験から子実重に対する密植効果は大きかった。耐倒伏性は「スズヒメ」なみに強い。
 裂莢性の難易は「スズヒメ」同様に中程度である。ダイズわい化病には「ユウヅル」よりかかりにくいが、抵抗性は弱である。ダイズシストセンチュウの抵抗性は弱である。湛水耐性は弱である。
 子実の粗蛋白質含有率は「スズヒメ」よりやや高く、粗脂肪含有率は「スズヒメ」並である。
 納豆の加工適性は「スズヒメ」と同程度と認められる。

6.試験成級
1)待性調査成績
系統名
または
品種名
胚軸色 小葉の形 花色 毛茸の色 伸育型 熟莢色 粒形 粒の大小 種皮色 胴色
中育19号 長葉 有限 淡褐
スズヒメ 長葉 有限 淡褐 やや扁球
キタムスメ 円葉 有限 中の大 黄白 暗褐
ユウヒメ 円葉 有限 淡褐 極大 黄白
トヨスズ 円葉 有限 淡褐 扁球 大の小 黄白

2)育成地における試験(標準栽培)
系統名
または
品種名
開花期
(月日)
成熟期
(月日)
主茎長
(㎝)
主茎節数
(節)
分枝数
(本/株)
稔実莢数
(莢/株)
一莢内粒数
(粒)
倒伏程度 収量(㎏/a) 子実重対
標準比(%)
100粒重
(g)
屑粒率
(%)
品 質
全 重 子実重
中育19号 7.3 9.3 56 13.9 8.9 126 2.68 59 30.9 95 13.4 1.5 上下
スズヒメ 7.28 9.26 51 13.4 6.6 114.5 2.59 47.5 25.6 79 13 1.6 中上
キタムスメ 7.26 10.4 70 13.5 5.3 87 2.08 65.2 32.5 100 27.9 2.2 中上
ユウヒメ 7.28 10.6 60 13.5 6 63.2 1.97 61.5 31 95 41.1 1.9 上下
トヨスズ 7.22 10.5 43 10.3 4.7 66.9 2.06 58.7 31.1 96 32.4 1.1 中上
注1)昭和59〜62年の4箇年平均である。
 2)栽植密度は833株/a(60×20㎝)、1株2本立てとした。

3)納豆官能評価試験(青森市十和田市、T食品)
系統名
または
品種名
外 観 香 り 食 感 硬 さ 総合評価
中育19号 0.77 0.32 0.22 -0.13 O.15 0.11
スズヒメ -0.49 -0.01 -1.21 -0.77 -0.54. -1.01
中国産小粒 -0.43 -0.03 0.17 0.17 -0.25 -0.06
注1)昭和61〜62年の2箇年平均である。
 2)評価は5段階(-2、-1、0、1、2)で数字の大きい方が評価が高い。
 審査員は7〜10人。

7.配布しうる種子量
原々種:16kg(植物遣伝資源センター産)
原種:480kg(中央農試産)
その他:40㎏(中央農試産)

8.採用予定県 北海道

9.栽培適地およぴ普及見込み面積
道央中・南部、羊蹄山丘地域およぴこれに準ずる地域、500ha

10.栽培上の注意
 1)種子消毒は従来の品種同様に行う。
 2)ダイズわい化病およぴマメシンクイガなどの防除は従来の品種同様に行う。
 3)ダイズシストセンチュウに対する抵抗性は弱なので発生ほ場への作付けはさけ、輪作を行う。
 4)湛水耐性は弱なので俳水不良地への作付けはさける。
 5)従来の品種よりやや密植で多収が期待できろので、a当り833株程度を確保する。ただし、肥沃地では倒伏しないように注意する。
 6)刈取り後の乾燥は、急激な人工乾燥をさけ、自然乾燥を行い、納豆加工適性をもたせる。 8)均一な品質の納豆用だいずを安定して供給するために、集団栽培をすることが望ましい。
 7)その他の肥培管理は、従来の品質に準じて行う。