【普及奨励事項】

1.課題の分類:
2.場所名:北海道立十勝農業試験場・豆類第1科
3.新品種候補系統名:だいず十育205号

4.来歴:
 「だいず十育205号」(以下「十育205号」と略す)は,北海道の基幹品種であり白目中〜大粒でダイズシストセンチュウ抵抗性強の「トヨスズ」より早熟な品種の育成を目標とし昭和50年に北海道立十勝農業試験場において「樺太1号」を母,「トヨスズ」を父として人工交配し、以後選抜、固定をはかってきた系統である。昭和57年には「十系669号」の系統番号を付し生産力検定予備試験Aに供し,昭和58年から「十育205号」の系統名で生産力検定試験・道内関係機関の奨励品種決定基本調査および特性検定試験等に供し,さらに昭和59年から道内各地の奨励品種決定現地調査に供してきた系統で,昭和62年にはF13代である。

5.特性:
 胚軸の色および花色は紫,小葉は円葉で,毛茸は色が白,直毛,その多少は中程度である。
主茎長は「トヨスズ」と同様の短茎,主茎節数は少,分枝数は「トヨスズ」の少に対して「トヨムスメ」と同様に中である。伸育型は有限であり,熟莢色は淡褐を呈する。粒の形は「トヨムスメ」、「キタコマチ」と同じく扁球,粒の大小は中の大に分類される。ただし,百粒重は30・4gで,「トヨスズ」の31.0gには及ばないが「キタコマチ」の28.1gより重い。粒の子葉色および光沢は各々黄および弱であり,種皮および臍の色は各々黄白および黄である。外観上の品質は、「キタコマチ」より優り、「トヨスズ」と同じく上である。低温障害による臍周辺の着色粒の発生は「トヨスズ」、「トヨムスメ」および「キタコマチ」より少ない。
 開花期は「トヨスズ」並みの中の早であるが、成熟期は同品種より早く「キタコマチ」並みの中あの中の早である。生態型は夏大豆型に属す。子実収量は,「トヨムスメ」,「ヒメユタカ」より劣り、「キタコマチ」と同水準である。子実成分は,「トヨスズ」,「トヨムスメ」と同じく。粗蛋白含有率が中,粗脂肪含有率が低と分類される。食品用としての加工適性は「トヨスズ」および「トヨムスメ」と同程度と認められる。ダイズシストセンチュウに対する抵抗性は、「キタコマチ」の弱に対して、「トヨスズ」と同じく強である。低温(障害型)および黒根病に対する抵抗性は各々やや強および弱である。裂莢の難易は易、倒伏抵抗性は強である。

6.試験成績:
 1)育成地における試験成績
系統名
および
品種名
開花期
(月日)
成熟期
(月日)
主茎長
(㎝)
主茎
節数
分皮数
(本/株)
倒伏
程度
稔実莢数
(莢/株)
子実重 百粒重
(g)
品 質 試験年次
(昭和)
㎏/a 標準対比(%)
十育205号 7.25 9.29 52 10.9 4.5 50.6 25.9 97 30.4 上(2下) 58〜62
トヨスズ(標準) 7.25 10.8 49 10.6 3.9 50.1 26.6 100 31.0 上(3下) 58〜62
トヨムスメ 7.25 10.5 51 10.4 4.5 54.4 27.4 103 31.9 上(3中) 58〜62
キタコマチ 7.24 9.29 52 10.9 3.9 52.6 25.8 97 28.1 中上(4下) 58〜62
注1)標準播による。 2)品質欄の括弧内は検査等級に準じた昭和62年の評価である。

 2)普及見込地帯における試験成績
地域
区分
試 験
場 所
系統名
および
品種名
開花期
(月日)
成熟期
(月日)
主茎長
(㎝)
分枝数
(本/株)
倒伏
程度
稔実莢数
(莢/株)
子実重 百粒重
(g)
品 質 試験年次
(昭和)
㎏/a 標準
対比(%)
上 川 上川農試 十育205号 7.19 9.22 64 4.6 51 26.9 100 31.6 中上(1) 58〜60.62
キタコマチ(標準) 7.18 9.24 65 5 56 27 100 29 中(3) 58〜60.62
網 走 北見農試 十育205号 7.28 9.28 46 4.4 57 24.8 92 28.3 中上(2下) 58〜62
ヒメユタカ(標準) 8.2 10.8 65 4.7 62 26.9 100 31.9 上(2下) 58〜62
キタコマチ 7.28 9.27 48 4.6 61 24.8 92 26 中(外) 58〜62
注1)標準播による。 2)品質欄の括弧内は検査等級に準じた昭和62年の評価である。

7.配布しうる種子量:原原種30kg,原種430kg,その他30kg。

8.採用予定県:北海道

9.適地および普及見込面積:  北海道の道央中・北部、十勝、網走内陸、沿海部およびこれに準ずる地帯、3,900ha。

10.栽培上の注意: (1)種子消毒は従来の品種同様に行う。
(2)ダイズわい化病ダイズ茎疫病およびマメシンクイガなどの防除は,従来の品種と同様に行う。
(3)ダイズシストセンチュウに対して「トヨスズ」,「トヨムスメ」並みの抵抗性をもっているが,連作あるいは短期の輪作はさける。
(4)その他の肥培管理は,従来の品種に準じて行う。