1.課題の分類
2.場所名  北海道立中央農業試験場
3.新品種候補系統名  菜豆「中育T26号」


4.来歴
 菜豆「中育T26号」は、昭和51年に北海道立中央農業試験場において早熟・多収の虎豆品種の育成を育種目標にして、熟期の早い在来種である「虎豆(端野系)」を母に、アメリカより導入した晩生種である「虎豆」を父として人工交配した系統である。
 F1代はほ場で養成し、F2〜F3代は集団選抜し、F4代で個体選抜を行った。F5代以降は系統選抜を行い、選抜固定を図ってきた系統である。
 昭和58,59年には「T5803」の系統番号で生産力検定予備試験を行い熟期が早く多収であったので、昭和60〜63年には「中育T26号」の系統名を付し、生産力検定試験を行うと共に特性検定試験・地域適応性検定試験並びに現地試験に供試した。さらに、農林水産省食品総合研究所において加工適性試験等を行った。
 昭和63年における世代はF12である。

5.特性
【形態的特性】
 伸育性と草型は“無限つる性”である。主茎長は「改良虎豆」より短い。胚軸色は“緑”で、花色は“白に微紅色を帯びる”である。莢の硬軟は“やや硬”であり、若莢の地色は“淡緑”であり、斑紋はない。
 子実の形は「改良虎豆」と同じ“短楕円体”である。子実の色は“白”、臍の周囲には“淡肉色地に赤褐色の偏斑紋”がある。粒大は「改良虎豆」よりやや小さいが「改良虎豆」と同じく“中の大”に属する。
【生態的特性】
 開花期は7月中旬〜8月上旬で「改良虎豆」と同じである。成熟期は9月上旬〜9月下旬で「改良虎豆」に比べて10日早く、“晩の早”である。子実重は「改良虎豆」比79%と劣る。
 インゲンモザイク病抵抗性およびインゲン黄斑モザイク病抵抗性は「改良虎豆」と同じく“弱”である。インゲン炭そ病に対する抵抗性はC3菌株に対しては「改良虎豆」と同じ“極強”で、C13菌株に対しては「改良虎豆」と同じ“中”である。
 インゲンかさ枯病に対する抵抗性は「改良虎豆」と同じ“弱”である。
【加工的特性】
 子実の外観品質は「改良虎豆」と差はなく、種皮の厚さは「改良虎豆」より薄く、種皮歩合は「改良虎豆」よりやや低い。煮豆にした場合、煮えむらおよび煮えない豆の量は少なく、製品収量が多かった。煮豆の製品の外観評価は劣ったが、風味の評価は「改良虎豆」より優った。
 以上の加工的諸特性から、「改良虎豆」と同様、煮豆の原料に適する。


6.試験成績

1) 育成地における試験成績(標準栽培)
系統名
または品種名
成熟期
(月日)
主茎長
(cm)
着莢数
(個/株)
全重
(kg/a)
子実重
(kg/a)
子実重
改良虎豆比(%)
百粒重
(g)
品質
(等級)
中育T26号 9.16 237 28.6 35.2 18.5 79 69.7 2
虎豆(端野) 9.24 283 32.6 40.9 21.0 90 71.5 2
改良虎豆 9.26 290 34.8 44.2 23.3 100 71.1 2
注1)試験年次 昭和60〜63年、 乱塊法 4反復
 2)成熟期は、昭和61年の「虎豆(端野)」「改良虎豆」が未成熟のため、昭和60,62,63年の3箇年平均。


2) 普及奨励地帯における試験成績
栽培地域 系統名
または品種名
成熟期
(月日)
子実重
(kg/a)
子実重
対虎豆端野比(%)
百粒重
(g)
北見農試1) 中育T26号 9.19 26.8 106 71.2
虎豆(端野) 9.26 25.2 100 74.9
改良虎豆 9.28 27.5 109 75.0
網走 2) 中育T26号 9.20 32.6 104 78.2
虎豆(端野) 9.28 31.4 100 78.4
胆振 3) 中育T26号 9.18 31.0 103 75.0
虎豆(端野) 9.27 29.8 99 74.6
改良虎豆 9.26 30.1 100 74.6
注1)昭和60〜63年の4箇年平均
 2)現地4箇所、 昭和60〜63年の4箇年平均
 3)現地2箇所、 昭和60〜63年の4箇年平均


3) 煮豆の官能試験(農林水産省 食品総合研究所、昭和63年)
系統名
または品種名
外観 風味 総合
大きさ 粒揃い くずれ 香り かたさ ねばり
中育T26号 3.0 4.1 3.6 2.3 4.4 4.2 3.9 4.5 3.7
改良虎豆 4.6 4.3 4.0 4.2 4.0 4.2 3.5 3.9 3.9
注1)評価は7段階(1,2,3,4,5,6,7)で数字の大きい方が評価がよい。


7.配布しうる種子量
 原原種 10kg (北海道立植物遺伝資源センター)
 その他 40kg (北海道立中央農業試験場)

8.適地および普及見込面積
 全道一円  340ha。

9.栽培上の注意
 1)「改良虎豆」の栽培を準じて良いが、各種病害に弱いので無病種子の使用に努め、病害の防除
  を励行する。
 2)密植で多収が期待できるので、改良虎豆より密植にすることが望ましい。