【普及奨励事項】
摘録

1.渡育224号の特性概要
系統名 渡育224号 組合せ 渡育214号/空育110号//空育114号
特性 長所
1.良質、良食味である
2.登熟性が良い
短所
1.初期の分けつ性がやや劣る
2.収量がマツマエより少ない
採用県および
普及見込面積
北海道2,000ha
   系統品種名
形質
渡育224号 対象
マツマエ
対象
巴まさり
比較対象
ゆきひかり
出穂期の早晩性 晩生の中 晩生の中 晩生の晩 中生の早
成熟期の早晩性 晩生の早 晩生の中 晩生の晩 中生の中
草型 偏穂数型 偏穂数型 穂数型 偏穗数型
出穂期(月.日) 8.10 8.10 8.11 8.12 8.14 8.16 8.5 8.6
成熟期(月.日) 9.27 9.28 9.30 10.2 10.5 10.8 9.21 9.22
登熟日数(日) 48 49 50 51 52 53 47 47
稈長(㎝) 71 73 67 66 76 80 69 72
穂長(㎝) 16.7 16.9 16.1 16.9 17.6 17.7 17.5 17.8
穂数(本/㎡) 457 474 461 494 537 589 528 561
芒性 稀短 ゴ稀ゴ短 稀短 中短
ふ先色 黄白 淡褐 赤褐 黄白
脱粒性
耐倒伏性 ヤ強〜強 ヤ弱
障害型耐冷性 ヤ強 ヤ強 中〜ヤ強
葉いもち病耐病性 中〜ヤ強 中〜ヤ強 ヤ弱〜中
穂いもち病耐病性 中〜ヤ強 中〜ヤ強
a当玄米重(kg) 51.1 52.0 52.4 54.3 49.5 47.2 49.4 50.5
収量標準対比(%) 98 96 (100) (100) 94 87 94 93
玄米千粒重(g) 22.1 21.8 23.4 23.4 20.9 20.8 21.3 20.9
玄米等級 1下 1下 2上 2中 3上 3中 2上 2中
玄米品質 上中下 上下 中中下 上下中
食味 上中上 中中 上中 上中
食味特性(1) 19.5(8.0) 22.7(7.6) 22.2(7.6) 21.0(7.7)
食味特性(2) 518 413 429 491
調査地 道立道南農業試験場(大野町)
調査年次 昭和62年〜平成元年の3ヵ年(中苗:標肥、多肥)
品種候補名  
注1)食味特性(1):アミロース含量%(蛋白含量%)、(2):アミログラム最高粘度B.U.
 2)渡育214号:「しまひかり」、空育110号:「みちこがね」、空育114号:「ゆきひかり」
 3)品種、系統の左欄:標肥区、右欄:多肥区

2.渡育224号の特記すべき特徴
晩生の早、良質、良食味系統である。初期の分けつ性がやや劣る。

3.北海道で奨励品種として採用する理由
道内唯一の2類銘柄米「巴まさり」は、その食味に対する消費者の評価は良好であるが、玄米は腹白が多く、また、耐倒伏性と耐病性が劣り、地帯によっては晩生に過ぎるため、品質と収量が不安定で、最近の作付率はやや低下の傾向を見せ始めている。「ゆきひかり」は、昭和61年の地域拡大により、道南南部での作付率が急増した。しかし、耐倒伏性が劣ることに加えて、過剰作付により収穫作業が長期化し、品質・収量の低下を招いている。「上育394号」は多収、良食味であるが、登熟が遅れやすいこと、腹白が多いために流通上の評価が必ずしも高くないなどの理由により、作付面積のこれ以上の拡大はそれほど期待できない。
「渡育224号」の出穂期はほぼ「マツマエ」並であるが、登熟性が良好のため、成熟期が早まり、「しまひかり」並となる。耐倒伏性、品質は「巴まさり」「ゆきひかり」より優り、収量性は「マツマエ」よりやや劣るが、「巴まさり」「ゆきひかり」よりやや多収である。食味は「巴まさり」「ゆきひかり」より優り、「しまひかり」「きらら397」並である。
従って、「渡育224号」を「マツマエ」の全部、「巴まさり」「ゆきひかり」の一部にかえて栽培することによって、北海道南部の産米の品質と、食味水準の向上に役立つ。

4.普及見込み地帯およびその面積
(1)栽培地帯:渡島南部、桧山南部およびこれに準ずる良地帯
(2)対象品種:「マツマエ」の全部。「巴まさり」「ゆきひかり」の一部。
(3)普及見込み面積:2,000ha


注)縦線は普及見込地帯を示す。